吉田恒の為替デイリー
未だ見えない「米利上げ=米ドル高」の終わり
10月12日、13日発表のPPI、CPIが予想以上となったことで、インフレ対策の米利上げも未だ終わりの見通しが見えなくなっている。
FFレートが年末にかけて4.5%以上に引き上げられるなら、米ドル/円は150円を超える見通しになり、円安阻止介入との攻防も改めて注目されそう。
吉田恒の為替デイリー
対円で最初に米ドル売り介入となった理由
日本の通貨当局は、主要国の中で最初に米ドル売り介入に動いたが、それは主要通貨の中でも円に対する米ドル高が「突出」していたということがあっただろう。
ユーロ/米ドルが0.9米ドル割れに向かうなど円以外の通貨に対する米ドル高が一段と進むようなら、G7内で「米ドル高問題」が利害の一致に向かう可能性はありそうだ。
吉田恒の為替デイリー
暴落の記憶が強い10月、2022年は?
10月は「暴落の印象が強い月」といった側面があった。必ずしも下がることの多い月ではなかったものの、強烈に下がった記憶のあるタイミングは10月だった。
金融市場において全体的にストレスが溜まっている中で、「不吉な10月」を迎えているということは、少し気になるところではないだろうか。
吉田恒の為替ウイークリー
CPI、介入など波乱要因目白押しの為替
24年ぶりの米ドル売り介入後、米ドル/円は膠着気味の展開が続いた。ただ今週はCPIの発表が予定されている。このところCPI発表後に一気に一方向へ約3円も動くなどボラティリティが急騰する展開が続いているため、膠着相場も分岐点を迎えそうだ。
改めて介入との攻防劇となる可能性もあることを踏まえ、今週の予想レンジは143~148円を想定。
吉田恒の為替デイリー
1998年の円安との類似と相違
米ドル高・円安は、1998年以来の展開となっている。
1998年の円安と今回では、為替相場の水準は似ているものの、米ドル高・円安の背景などにはかなり違いがある。
吉田恒の為替デイリー
CPIが目標となった40年前のインフレ退治
40年前の米インフレ局面では、結果的にCPI前年比上昇率がピークの15%程度から10%割れとなってFRBは利上げを終了した。インフレ是正の目標にCPI等の物価上昇率が具体的に意識されていた可能性があった。
今回は、CPI上昇率がいくらまで低下したらFRB利上げは終了となるのか。1年前にパウエルFRB議長が「インフレは一時的」との見解を撤回した5%に注目したい。
吉田恒の為替デイリー
ユーロ安と豪ドル安の「差」は何か?
9月FOMCの米利上げ見通し上方修正を受けて、対円では介入警戒感もあったことから、円以外の主要通貨、ユーロや豪ドルに対して米ドル買いが拡大した。
ただユーロ安は、今週に入りFOMC前の水準までほぼ戻した。一方豪ドルはなおFOMC前より豪ドル安となっている。両者の違いは金利差である程度説明できそうだ。
吉田恒の為替デイリー
「鳥の目」と「虫の目」で見る円安
遠巻きの「鳥の目」で見た米ドル高・円安は、循環的な限界圏に達しており、いつ終わってもおかしくない段階だろう。
より近づき、「虫の目」で見た米ドル高・円安は、インフレ対策の米利上げとの連動が基本。その意味ではいつ終わってもおかしくない米ドル高・円安が、ついに終わるのは米利上げ終了が目安になりそうだ。
吉田恒の為替デイリー
「最後の円売り介入」と類似している今回
今回の米ドル売り・円買いの為替市場介入は、9月に2兆円超もの大規模で実現した。方向は逆の米ドル買い・円売り介入だったものの、前回の「最後の米ドル買い・円売り介入」局面と同じだった。
中間期末対策から始まったなど、両者には共通点が多そうだ。
吉田恒の為替ウイークリー
10月の米ドル/円を予想する
9月FOMCで利上げ見通しが大きく上方修正されたことから、米ドル高・円安は150円を目指す可能性も出てきた。
こうした中で日本の通貨当局は24年ぶりに米ドル売り・円買い介入に出動した。これは特定の水準を防衛するものではなく、節目の水準を抜けて相場が不安定になった時にけん制する可能性が高そうだ。
以上を踏まえ、10月の米ドル/円は140~148円中心の展開を想定する。
吉田恒の為替デイリー
復活する2015年「黒田シーリング」
2015年6月、黒田総裁の発言をきっかけに米ドル高・円安は125円で終了した。ただこの時、黒田総裁が「円安の限界」の目安としたのは米ドル/円ではなく、円の実質実効レートだった。
そんな「真の黒田シーリング」、円安の限界圏にいよいよ接近してきた可能性がある。
吉田恒の為替デイリー
米マイナス成長は3期連続となるのか?
米7~9月GDP予想が下方修正されているようだ。仮に、マイナス成長となると、3四半期連続となり、リセッション入りの可能性が一段と注目されるだろう。
米ドル高・円安は、FRB大幅利上げ見通しが主因と考えられるが、リセッションの現実化はそんな見通し修正の鍵を握ることとなりそうだ。
吉田恒の為替デイリー
円とユーロの米金利との関係を再点検
米金利上昇が続く中でも、介入警戒の影響から対円で米ドルが「上げ渋る」結果、米金利との関係では米ドル「下がり過ぎ」懸念が目立ってきた。
一方、介入警戒がない分、円以外の通貨、対ユーロなどで順調に米ドル高値更新となっているように見えるが、実は金利差との関係からは米ドル「上がり過ぎ」気味になっている。
吉田恒の為替デイリー
米ドル売り介入と為替差益の実現化
日本の円安阻止介入については、効果が期待できず無駄だといった批判も少なくない。
ただ、日本が円売りの対価としてこれまで取得してきた外貨は、大半が120円以下と最近より大幅に割安な水準で購入したもの。そんな外貨の売却は、結果的に巨額の含み益の実現化であることを考えると、必ずしも無駄でもないだろう。
吉田恒の為替デイリー
日本の為替介入の「疑問」に答える【後編】
前編に続き、約四半世紀ぶりの円買い介入についての「疑問」に答える。
後編の今回は、そもそもなぜ、円安阻止介入は四半世紀近くもの間行われなかったのか、外貨売り介入資金が底をつき、円安を止められなくなるということはあり得るのか等の疑問に答える。
吉田恒の為替ウイークリー
FOMCと介入を受けた米ドル/円の見通し
先週はFOMCと、その後実現した24年ぶりの円買い介入により米ドル/円は上下ともに大きな動きとなった。
ついに介入実現となったが、大きな米ドル高・円安の流れは変わらないのではないか。まだ当面140円を大きく割れることすらなく、145円を超えると1998年の米ドル高値147円台更新トライの可能性が髙そうだ。今週の予想レンジは140~146円中心で想定。
吉田恒の為替デイリー
日本の為替介入の「疑問」に答える【前編】
日本の通貨当局は9月22日、約24年ぶりの米ドル売り・円買い介入に出動した。
円買い介入については、ほぼ四半世紀ぶりということもあり、「疑問」も多いと思われるので、代表的な「疑問」に対して答えてみたい。
前編の今回は、日米やG7による協調介入の可能性などについて。
吉田恒の為替デイリー
24年ぶり円買い介入で「押さえておきたいポイント」
日本の通貨当局(財務省・日銀)の為替介入としては10年以上ぶり、さらに米ドル売り・円買い介入としては24年ぶりの介入が22日行われた。
この介入は瞬間的には米ドル安・円高に大きく戻すところとなったが、これは「日本単独では効果ない」との見方の反動が大きかったのではないか。
一方、米インフレ対策に支障を来しかねない米ドル安・円高への大きな誘導を目指すものでもないだろう。
吉田恒の為替デイリー
FOMC後の米ドル/円のシナリオを考える
9月21日のFOMCで公表されたドット・チャートによると、FFレート見通しは2022年末4.4%、2023年末4.6%へ大幅に上方修正された。
このFFレート見通しを参考にすると、米2年債利回りは4.5%前後、そして米ドル/円は150円前後まで上昇する見通しとなる。
吉田恒の為替デイリー
これまでの円安とは何が違うのか【後編】
1998年の円安と今回の最大の違いは、前者はデフレ時代の始まりだったのに対し、後者は物価高への懸念があるということ。物価高の円安は、「悪い円安」不満をもたらしやすい。
2000年以降の円安局面で、これまで円安阻止の介入は行われなかった。貿易不均衡の拡大が一巡したことで、円安が政治イシュー化しにくくなった影響が大きいだろう。