FOMC、為替介入と盛沢山だった9月
まずは、9月の米ドル/円の展開を簡単に振り返ってみます。9月に入って早々に、140円の大台を突破すると、米ドルは一段高に向かいました。さすがに、次の大きな節目である145円は簡単には抜けませんでしたが、注目された8月CPI(消費者物価指数)発表を受けて、インフレ是正が鈍いと判断されると、米大幅利上げ継続との見方が広がりました。
実際に、9月21日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、3回連続で0.75%の大幅利上げが決まり、その上で今後のFFレート引き上げ見通しも大幅に上方修正されるところとなりました。これを受けて、米ドル/円もついに145円を突破、ここで日本の通貨当局が24年ぶりとなる米ドル売り・円買い介入が実現を実施したため、一時は140円台まで米ドル反落となりました(図表1参照)。
9月相場、2つの重要なポイント
ポイント1:9月のFOMCで米利上げ見通しが大幅に上方修正
このような9月相場の振り返りの中で、特に重要と思われることとして2点確認したいと思います。1つは、9月FOMCを受けて、米利上げ見通しが大幅に上方修正されたということです。FFレートが2022年末までに引き上げられる水準は、6月FOMCでは3.4%だったところが、9月FOMCでは4.4%といった具合に一気に1%もの上方修正となったわけです。
米ドル/円は、このFFレートを参考に動く米2年債利回りと高い相関関係が続いてきました(図表2参照)。この関係を前提にすると、米2年債利回りが4.5%まで上昇するなら、米ドル/円も150円まで上昇するといった見通しになります。
ポイント2:24年ぶり米ドル売り・円買い介入の実現
9月相場を振り返った上で、もう1つ重要と思われたのは、1998年以来24年ぶりに実現した米ドル売り・円買い介入です。米大幅利上げ見通しの中で、上述のように米ドル高・円安も150円を目指すようなら、それに対して日本の為替介入がどのように関わってくるかは1つの注目点でしょう。
歴史から学ぶ:2010~2011年為替介入(米ドル買い・円売り介入)から分かること
今後の為替介入の可能性を考える上で、今回と方向は逆ですが、これまでの日本の最後の為替介入となっていた2010~2011年にかけて断続的に行われた米ドル買い・円売り介入について確認してみましょう。この介入は、2010年9月15日に始まり2011年11月まで1年余りに渡って行われました。ただその中で主な介入は4回に過ぎなかったのです(図表3参照)。
この4回の介入の中で最初の介入は2010年9月15日に行われました。当時の為替相場を参考にすると、1米ドル=82円程度で米ドル買い・円売り介入が行われたと考えられます。当時の米ドル最安値は、1995年4月に記録した80円でした。その意味では、いよいよ米ドル最安値更新に迫る動きとなったことから最初の介入に出動したと考えられます。
これを受けて米ドルは一旦反発となります。ただ約3週間程度で、介入があった水準を米ドルは割り込んできました。それでも当時の米ドル最安値である80円の更新に至らないと2度目の介入は行われませんでした。
2度目の米ドル買い・円売り介入出動となったのは、2011年3月18日でした。2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。すると、これをきっかけに日本への外遊資金の引き揚げが広がるとの思惑から米ドル安・円高が再燃、米ドル最安値を大きく更新するところとなったのです。ここで2度目の介入実現となったのは、米ドル最安値更新で不安定になった相場のけん制が目的だったと考えられます。
3度目の介入は、2度目の介入から5ヶ月近くも経過した同年8月4日でした。これは、2度目の介入の際に記録した当時の米ドル最安値を更新した動きに対してけん制する目的だったと考えられます。
そして4度目の介入は同年10月31日、この日一日だけで8兆円もの大規模な米ドル買い・円売り介入として行われました。これは当時の米ドル最安値を下回る節目の75円を防衛ラインに設定した徹底介入と見られました。
為替介入、次のタイミングと10月の米ドル/円予想
上記の2010~2011年にかけての米ドル買い・円売り介入のやり方は、今回の米ドル売り・円買い介入の今後の展開を考える上でヒントになるのかもしれません。例えば、今回145円台で最初の介入が行われたと見られていますが、それは145円を防衛ラインとしたというより、1998年の米ドル高値、147円台更新前にけん制に動いたということではないでしょうか。そうであれば、次の介入は必ずしも145円にはこだわらず、1998年の米ドル高値である147円台を更新し、一気に150円の大台を目指すといった具合に不安定になったところがけん制のタイミングとして意識されるのではないでしょうか。
為替介入の実質的な責任者である神田財務官は、介入を判断する上で「ボラティリティ(変動率)を重視する」と説明していました。これは、特定の水準を防衛するということではなく、注目された水準を更新し、相場が不安定になった動きをけん制するといった意味と考えられます。
そうであれば、米利上げの動きをにらみながら米ドル高・円安が加速するような場面で介入との攻防戦が起こるといったイメージではないでしょうか。以上を踏まえ、10月の米ドル/円は140~148円中心での展開を想定したいと思います。