突出している対円での米ドル高

インフレ対策で米国の大幅利上げが続く中で、米ドルは主要通貨に対してほぼ全面高となっている。では、そういった中でなぜ日本が最初に米ドル高・円安に対する為替市場介入に動いたのか。それは、対円での米ドル高が「突出」していたためだろう。

米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率は、足元でプラス30%程度まで拡大した(図表1参照)。1990年以降で、今回のように5年MAかい離率が±20%以上に拡大したのは4回あったが、そのうち3回は為替市場介入が行われていた。今回の介入は、一定期間内の急過ぎる為替相場の変化をけん制するといった意味で、基本的に過去のパターンの範囲内だったと言えるだろう。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率 (1990年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

では、円以外の通貨に対する米ドル高はどうか。まずはユーロ/米ドルについて見てみよう。ユーロ/米ドルの5年MAかい離率は、足元でマイナス15%程度だ(図表2参照)。既に見てきた米ドル/円とは、円に対する米ドルの変化に対し、米ドルに対するユーロの変化といった具合に比較方法が違うものの、「行き過ぎ」の程度において、米ドル高・円安とユーロ安・米ドル高ではかなりの差がありそうだ。

【図表2】ユーロ/米ドルの5年MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ちなみに、止まらないユーロ安に対して、G7(主要7ヶ国)が協調でユーロ買い介入に出たのは2000年9月だった。当時のユーロ/米ドルの5年MAかい離率はマイナス20%以上に拡大していた。

足元のユーロ/米ドルの5年MAは1.14米ドル。従って、それを2割下回る水準は、単純計算なら0.91米ドルになる。以上からすると、ユーロ安・米ドル高に対してユーロ圏の通貨当局が米ドル売り介入に動くなら、基本的には0.9米ドル割れということになるのではないかと推測する。

次に、豪ドル/米ドルの5年MAかい離率も見てみよう。同かい離率も、足元でマイナス10%以上に拡大した程度にとどまっている(図表3参照)。これまでの実績からすると、特に豪ドル安・米ドル高の「行き過ぎ」を強く懸念する状況ということではないようだ。

【図表3】豪ドル/米ドルの5年MAかい離率 (1990年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上、今回は5年MAかい離率といった共通の物差しを使って、円、ユーロ、豪ドルなど主要通貨に対する米ドル高の「行き過ぎ」の程度を比較してきたが、米ドル/円の「突出」ぶりが分かりやすかっただろう。その背景にあるのは、先進国においてほぼ日本のみが金融引き締めに動いていないということだ。

一方でインフレの中での通貨安は、政策当局にとっては障害要因だ。その意味では、ユーロ/米ドルも0.9米ドル割れに向かうなど、一段と米ドル高が進むようになれば、「米ドル高問題」がG7でも利害が一致する課題になってくる可能性はあるのではないだろうか。