協調介入の可能性は極めて低い!?

【疑問その1】日米協調介入はあるか?

9月22日の円買い介入は、日本単独で行われたと見られている。今後は米国も協調的に米ドル売り・円買い介入に参加することがあるかと言えば、その可能性は極めて低いだろう。現在米国はインフレ対策を最優先で取り組んでおり、それに関連した通貨政策は米ドル高容認となるため許容するが、それと逆行する米ドル売り協調介入への参加は考えにくい。

ただ可能性がゼロということでもないだろう。例えば、1998年6月に行われた米ドル売り・円買い介入は日米による協調介入だった。当時米国では景気回復が続いており、金融政策は引き締め姿勢をとっていた。それにもかかわらず、逆行する米ドル売り協調介入に参加したのは、当時のクリントン政権が重要課題と位置付けていた大統領の訪中に関連した政治的なバーター取引によると見られた。

このように、政治要因との兼ね合いなどから米国が協調介入に参加することはこの先ゼロではないだろう。しかし、それはあくまで金融政策などとの整合性を崩さない程度の限定的、「お付き合い」の範囲にとどまりそうだ。

【疑問その2】G7協調介入はあるか?

これまでの直近の主なG7(主要7ヶ国)協調介入は、2001年9月11日、「9・11」米同時多発テロ事件後の米ドル防衛、そして2000年9月のユーロ防衛で、これらは、基本的にG7関係国の利害が一致したものだった。

これに対して、今回の日本は物価高と通貨安が同時進行する中で通貨安阻止に動いたわけだが、主要通貨に対してほぼ米ドル独歩高の中では、物価高と通貨安の同時進行となっているのは日本だけではないので、円安阻止でG7協調介入が実現する可能性はほとんど考えられないだろう。

また、単独介入より協調介入の方が効果に期待できるとの意見はあるが、確かに上述の2000年と2001年のケースは、協調介入と相場の転換がほぼ一致したものの、必ずしもうまくいかなかったケースもあった。1995年4月にかけて当時の米ドル戦後最安値である1米ドル=80円まで米ドル安・円高が展開した局面ではG7協調介入でも米ドル下落にはしばらく歯止めがかからなかった。協調介入もなかなか「最後の切り札」にはならなかったわけだ。

【疑問その3】なぜ今回日本だけ通貨安阻止介入に動いたのか?

現在は世界的なインフレが展開しており、その中で米国こそ米ドル高となっているものの、その裏返しでユーロ圏なども物価高とユーロ安の同時進行となっている。その中でなぜ日本だけ円安阻止介入に動いたのか。

これは、通貨安の「程度の差」ということではないか。例えば、5年MA(移動平均線)かい離率で見ると、米ドル/円は5年MAを3割近くも上回っているのに対し、ユーロ/米ドルはまだ14%程度下回っているに過ぎない(図表1、2参照)。同かい離率が大きく拡大するほど「行き過ぎ」懸念が強いことを示しているので、これを見ると米ドル高・円安とユーロ安・米ドル高では「行き過ぎ」の程度にかなりの差があることがわかるだろう。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率 (1980年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】ユーロ/米ドルの5年MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上から、同じように物価高と通貨安の同時進行ながら、円安のそれは相対的に程度が大きいことから、行き過ぎた相場の動きとして、それを日本単独で阻止に動くことについては基本的にG7などの場でも容認されているということではないか。(続く)