吉田恒の為替デイリーの記事一覧
チーフ・FXコンサルタントの吉田恒が独自の視点から日々のマーケット情報や注目材料などをお伝えします。
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【為替】「未体験の円安」というほどではない
米ドル高・円安は1998年以来、約24年ぶりの水準に達している。ではこの円安は、ウクライナ危機や世界的なインフレを受けた「未体験の円安」なのか。
円の総合力を示す実質実効レートの分析によると、少なくともここまでは過去に経験した範囲内の円安であり、経験的には円安最終局面の可能性あり。
【為替】40年前の「米インフレ下の円安」に学ぶ
米ドル高・円安局面はこれまでも何度かあった。その中で、米インフレ対策を受けた米金利の大幅な上昇に連れた米ドル高・円安という点では、今から約40年前、1980年代前半のケースこそが、今回に最も近いものだったと思われる。
そこで今後の米ドル/円の行方を考える上で、改めて1980年代前半の米ドル高・円安について振り返ってみたい。
「今から外貨投資を始めて大丈夫か?」不安の妥当性を検証
米ドルなど外貨は対円でかなり「割高」になっており、その意味では新たな外貨買いは慎重さが必要になっている。少なくともリスクのコントロールが不可欠だろう。
一方、過去の米インフレ局面での米ドル高では、インフレ鎮静化に時間がかかることから、利下げへの転換を経て改めて利上げに向かうまでさほど時間がかからなかった。今回も米インフレ対策に伴う「米金利上昇=米ドル高」の反転も長続きしない可能性あり!?
日銀緩和不変でも円安は終わる
この間の米ドル高・円安は、ほとんど米金利上昇に連れた結果であり、円金利は基本的に無関係。
その意味では、日銀の緩和方針不変でも、米金融政策を受けた米金利上昇が米金利低下に転換すると、円安から円高へ転換する可能性があるだろう。
円安が140円未満で終わる「条件」とは?
この間の米ドル/円上昇は、米金利上昇が手掛かりになってきた。さらに米ドル/円が140円以上に上昇するためには、米2年債利回りの場合なら4%以上への上昇が必要になりそうだ。
米2年債利回りはFFレートと連動する。このため米2年債利回りの4%以上の上昇には、FFレートが4%以上に引き上げられるといった見通しが必要になるため、それが140円を超えられるか否かの「条件」か。
FRB議長証言の米金利・米ドルへの影響
6月22日にパウエルFRB議長の議会証言があったが、その中で米金利は軒並み大きく低下、金融政策を反映する米2年債利回りも3%割れ近くに接近した。
これが米景気先行き懸念を受けた米利上げ見通しの下方修正に向かう動きなら、今後米ドルの下落リスクを試すことにつながる可能性もあるだけに注目。
クロス円の「上がり過ぎ」を検証する
代表的なクロス円、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円について、5年MAとの関係から「上がり過ぎ」を検証した。最も「上がり過ぎ」懸念が強かったのは豪ドル/円。
ただ、クロス円「上がり過ぎ」の主因は、歴史的な米ドル高・円安だろう。逆に言えば、米ドル高・円安が反転すると、クロス円も反転するリスクは要注意だろう。
過去の代表的な円安と何が違うのか?これまでの検証
過去の代表的な5つの円安局面と、今回の円安では何が違うかを検証してみた。
今回と比較的似ているのは、米国のインフレ対策の影響で米ドルが大幅に上昇し、その結果「止まらない円安」となった1982年にかけて。この時は、行き過ぎた米ドル高・円安が日米貿易不均衡を拡大させ、その後米ドル大暴落をもたらしたが、この点が今回とは異なっている。
将来の「円高シナリオ」を想像してみる
現在の米ドル高・円安が終わった後は、どこまで米ドル安・円高に戻す可能性があるか。
5年MAとの関係などを参考にすると、米国の金融政策の転換、利下げなどを主な手掛かりに110円程度まで円高に戻す可能性はあるのではないか。
米0.75%利上げでも米ドル反落の理由
15日のFOMCは0.75%の大幅な利上げを決めたが、米ドルはむしろその後比較的大きく反落した。
これは、短期的な米ドル「上がり過ぎ」の反動に加え、既に今回のFOMCで確認された今後のFFレート3.4%程度までの引き上げは織り込み済みだったためではないか。
続・FOMCと米ドル高・円安の最終到達点
15日FOMCで公表された米政策金利の予想平均は、2022年末も2023年末も3.4%。これは、政策金利のFFレートが3.5%程度まで引き上げられるとの見方が基本となっている可能性を示している。
これを参考にすると、FFレートの影響を受ける米2年債利回りは3.5%程度までの上昇の見通しになる。米2年債利回りが4%以上に上昇しなければ、米ドル/円も140円に届くかは微妙。
FOMCと米ドル高・円安の最終到達点
ここまでの米ドル高・円安は、基本的に米2年債利回り上昇と連動してきた。その米2年債利回りのサイクル・トップは、政策金利のFFレートのピークとほぼ重なるのが普通。
以上の関係を前提にすると、FFレート引き上げが3.5%以下にとどまるなら米ドル高・円安は140円に届かず、140円を超えるためには4%以上へのFFレート引き上げが必要になりそう。
円安、1998年との類似と相違
米ドル高・円安は1998年以来、約24年ぶりの円安水準を記録した。そんな24年前、1998年の円安と今回では、類似点と相違点それぞれある。
1998年にかけての円安と最近の円安では、物価との関係では「真逆」。にもかかわらず、両者はともに「悪い円安」との評価が目立っている。ただし、「悪い円安」とされる理由が違う。
円安懸念声明が示した「協調介入合意なし」
過去のG7による為替に関する声明文では、協調介入合意があった場合となかった場合では表現に微妙な違いがあった。
それを参考にすると、10日発表された財務省、金融庁、日銀「三者会合」の円安懸念声明は、未だ協調介入での合意はないことを示唆している可能性が高そうだ。
ECB利上げでユーロ安は終わるのか?
2021年から2022年にかけての大幅なユーロ安・米ドル高は、独米長期金利差ではほとんど説明できず、金融政策を反映する独米2年債利回り差の変化で正当化された可能性がある。
ただ独米の2年債利回りのボラティリティーには大きな差があった。ユーロ安・米ドル高トレンドへの影響は、基本的に米インフレ動向を受けたFRB利上げ見通し次第か。
円安135円、20年前との類似と相違
米ドル高・円安が2002年以来20年ぶりに135円を目指す動きとなっている。20年前も今回も、目的こそ違うものの、米国が米ドル高容認政策をとっていることは類似点。
一方、20年前の日本経済はデフレ。これに対して今回はインフレ懸念と物価情勢が大きく異なる。このため「悪い円安」批判がある中でも、135円ですら円安が止まるか微妙な状況が続いている。
「怒涛の円安」が一段落する条件
「怒涛の円安」一段落の条件としては、短期的な米ドルの「上がり過ぎ」や米金利低下などが必要になりそう。逆に言えば、そのような条件が出てくるまでは、「怒涛の円安」は続く可能性もある。
このまま15日予定のFOMCまで米金利が大きく低下しないようなら、一気に135円まで米ドルの短期的な「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性は十分ありそう。
RBA利上げと豪ドル・トレードの注意点
7日のRBA会合では、0.25%か0.4%の利上げが予想されている。特に大幅利上げとなった場合、それを口実に短期的な豪ドル「上がり過ぎ」が一段と拡大、この間の高値更新に向かう可能性もありそう。
ただ豪ドルは中長期的にも高値警戒域に入っている可能性があるだけに、「高値づかみ」リスクを意識したトレードが必要ではないか。
「超インフレ」トルコリラ相場を考える
6月3日発表のトルコの消費者物価上昇率は前年比70%超となった。インフレの深刻化は、基本的には通貨安要因。
ただ、2022年に入ってからインフレ急悪化の中でトルコリラ相場安定が続いた。その「謎解き」とともに、今後のトルコリラ相場の見通しを考える。
米金利の「6月アノマリー」
米金利には、6月以降の年央に、その年の天底を付ける習性がある。その代表例が、「グローバル・デフレ」がテーマとなった2003年の米金利低下の急反転だった。
最近にかけて「グローバル・インフレ」をテーマとした米金利上昇が続いているが、「アノマリー」通りに急反転に向かう可能性はあるか。米ドルへの影響からも注目。