マーケットは、大統領選後の熱狂から覚め、反落
先週(11月11日週)の米国株は売られS&P500はおおよそ2%下落、ナスダック100は3.42%の下げとなりました。減税を公約にあげたトランプ氏の勝利を受け急上昇していた小型株指数のラッセル2000は、先週3.99%と目立って下げています。
マーケットのフォーカスは、トランプ氏の勝利から、先週発表されたマクロ指標に移りました。トランプ政権の誕生は年明けですし、投資家の注目は目の前の現実へ戻ったのです。
FRBパウエル議長、金利引き下げに慎重な姿勢
インフレは依然として粘り強い
先週のマーケットは、9月以降で一番大きな下げでした。この下落の原因はインフレに関連する経済指標でした。先週発表された10月の米CPI(消費者物価指数)および米PPI(生産者物価指数)では、インフレが依然として粘り強く、特に食品とエネルギーを除いたコアCPIが、FRB(米連邦準備制度理事会)の目標である2%からまだ大きく離れていることが確認されました。
そのような経済データの発表を受け、パウエル議長は先週11月14日(木)の午後、「FRBが急いで金利を引き下げる必要はない」と発言、慎重な姿勢を見せました。こうした発言が株式市場の先週利益確定の売りを促した可能性があります。
グロース株・小型株が押し下げた理由
10年債利回りは、強い経済データを受け9月の半ばから上昇してきました。しかし、インフレが依然として粘り強いことを示唆したデータを受け、先週も金利上昇を継続、その結果、グロース株や小型株を押し下げたのです。
このような状態の中、果たしてFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げのペースも鈍化するのか、今後の政策金利の方向性が確認できるのは12月6日(金)に予定されている11月の雇用統計です。この発表で12月の利下げや金利据え置きの決定についての感触がわかるでしょう。
トランプ政権人事で防衛・製薬関連が下落、政策の優先順位は?
先週、次の政権の人事発表を受けマーケットは反応しました。トランプ次期大統領は、次期国防長官にピート・ヘグセス氏を指名、ノースロップ・グラマン[NOC]やロッキード・マーチン[LMT]といった防衛関連株が下落しました。これは、ヘグセス氏が、国防総省や政府機関での高官経験がなく、彼の指導力や政策決定能力に対する市場の不安が高まったことがあります。
また、トランプ次期大統領は、イーロン・マスク氏とビベック・ラマスワミ氏を共同リーダーとする「政府効率化省」の設立の構想を発表しています。この新設省庁は、政府の無駄な支出削減や効率化を目指しており、防衛予算の見直しや削減が行われる可能性があるとの懸念が、防衛関連株の下落要因となりました。 政府の支出削減懸念から、ブーズ・アレン・ハミルトン・ホールディング[BAH]のような政府契約者も下落しました。
このような状況で、多くの投資家が「今後のトランプ政権での政策の優先事項が何になるのか」を懸念しています。
関税の引き上げに関しても注目が集まっています。地元の請負業者が2025年のコストについて心配していると言っていましたが、多くのCEOも同じ懸念を抱えています。特に、リテール企業は中国との関係が深く、関税の影響を和らげるために、現在、注文を前倒ししています。有名なファッションブランドのスティーブン・マデン[SHOO]は、在庫の50%が中国に依存していると述べており、早急な対応を進めています。
製薬会社についても、ロバート・F・ケネディ氏が保健福祉省(HHS)の長官に指名されたことで不満を抱えています。彼は反ワクチン発言で知られており、肥満治療薬にも批判的です。この指名により、ペプシコ[PEP]やゼネラル・ミルズ[GIS]、フレンチフライメーカーのラム・ウェストン・ホールディングス[LW]などの株価も下落しました。しかし、彼の政策が実際にどのように展開されるかは、今後の動向次第です。
米国株は、次期大統領が確定するやトランプ氏の勝利を祝うかのように素直に上昇しましたが、先週の下げは、選挙後の急騰後に見られる典型的な調整ともいえます。株価が売られ過すぎか、買われ過ぎかを測るRSI(相対力指数)で見ても、マーケットは明らかに買われ過ぎでした。ですから、先週の下げは健全な下げといえるでしょう。
今週の注目はマイクロフト[MSFT]の年次カンファレンスとエヌビディア[NVDA]の決算
今週マーケットを左右する可能性のある大きなイベントとして、11月18日から22日まで行われるマイクロソフト[MSFT]の年次カンファレンスであるMicrosoft Ignite開発者カンファレンスと11月20日のエヌビディア[NVDA]の決算発表があります。