米国長期金利の再上昇でJ-REIT価格は下落へ
J-REIT価格は9月下旬から下落基調となり、下値を切り下げる状態だ。東証REIT指数は10月15日に割り込んだ1,700ポイント台を回復出来ずに推移し、1,670ポイントを辛うじて維持している。
前回の連載以降も米国長期金利の上昇が続いていることが、価格下落の背景にあると考えられる。以下の図表の通り、年初から見ると、4月下旬以降の米国10年債利回りは9月下旬までは低下基調にあったが、その後は上昇基調が止らず、6月下旬の水準と同じ4.5%程度になっている。
FRB(米国連邦準備制度理事会)は9月に続き、11月6日(現地ベース)に利下げを実施したが、米国10年債利回りは高い水準で推移している。これは、トランプ氏の再選が影響している可能性がありそうだ。
トランプ氏は、大幅な減税及び歳出拡大を政策に挙げている。それにより、米国債の信認が低下することが想定されるため、米国債利回りが上昇しているという見方も出来るだろう。
国内金利も上昇の懸念高まる
FRBは足許のインフレが沈静化していることから、11月と同様に、12月も0.25%の利下げに動く可能性が高くなっている。ただし、FRBの利下げは短期金利の調整であり、長期金利は今後のインフレ進展懸念が強まっているため、高い水準が続く可能性が高いと考えられる。
米国長期金利の上昇に伴い円安が進展している中、日本国内ではコストアップインフレの影響が懸念される状態だ。トランプ氏はドル安による輸出拡大を目指しているため、日銀が利上げを行い、円安進行を防いで日本国内のインフレ対応を行う可能性もあるだろう。
すでに11月上旬には、日本の10年債利回りは7月下旬以来の1.0%を超える水準まで上昇している。長期金利の上昇は、利回り商品としての特性を持つJ-REIT価格に対しては「逆風」となっている。
J-REIT価格は短期的には「重い」足取りが続く
米国だけでなく、国内金利も上昇している状態となっているため、J-REIT価格は反発が難しい状態が続くことになりそうだ。外国人投資家は、米国10年債利回りが4.0%以下に低下したことから、8月と9月はそれぞれ736億円、538億円と買い越していたが、米国長期金利の再上昇により、10月は586億円と大幅な売り越しに転じた。今後もさらに米国長期金利の上昇が続けば、外国人投資家の売り越し基調は続く可能性が高い。
また円安が進展していることもあり、国内機関投資家は円安メリットがある株式市場に資金を転じることも想定される。分配金などのファンダメンタルズで見れば、J-REIT価格は割安感が強いが、その点に注目して投資を拡大できる投資主体は、短期的な値動きに左右されない個人投資家が中心となっている。
J-REITの利回りは、11月13日に加重平均ベースでも5%を超える高い水準になっている。前回の連載でも記載した通り、米国10年債利回りが4.5%を超える水準になったとしても、すでに割安感が高い状態だ。従って、個人投資家は、米国長期金利の低下を待ちながら、中期的な視点で投資することが重要と考えられる。