S&P500は1週間で4.66%、ナスダック100は5.41%上昇
先週の米国株は、トランプ氏の圧勝という大統領選挙の結果を受け、大きく上昇しました。その上げは1896年の「マッキンリー・ラリー」以来、最大の選挙後ラリーとなりました。「マッキンリー・ラリー」とは、1896年のアメリカ大統領選挙後に起きた大幅な株式市場の上昇を指します。この年の選挙では、ウィリアム・マッキンリーがウィリアム・ジェニングス・ブライアンに勝利しました。マッキンリーは親ビジネス的な政策を掲げており、彼の勝利がウォール街やビジネス界から好意的に受け入れられ、株価が大きく上昇したのです。
今回の大統領選挙では、多くの投資家が選挙翌日の11月6日(水)朝までに結果が出ることはないのではと心配していましたが、無事結果は出ました。それがVIX(恐怖指数)に表れており、選挙前に急上昇したものの、「ボラティリティ・クラッシュ」が起こりVIX指数が急落、2024年最大の下落を演じました。つまり、投資家は選挙の結果に対する恐怖を感じなくなり、マーケットを買い上げたということです。
先週S&P500は、史上最高値を更新し続け1週間で4.66%、ナスダック100も同じく史上最高値を更新し5.41%上昇して終わりました。急上昇の背景としては、トランプ氏と共和党が躍進したことで、今後4年間、投資家に優しい政策への期待があるからです。アメリカの著名な投資家で、ヘッジファンド運用会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントの創業者CEOのビル・アックマン氏はX(旧Twitter)で、今後4年間トランプ氏の下で、アメリカがビジネスに最適な場所になるかもしれないと言及しました。
減税や規制緩和への期待を織り込み、小型株指数などが上昇
マーケットはトランプ氏の勝利に素直に反応し、非常にわかりやすい展開となっています。市場はトランプ氏が法人税を現在の21%から15%へ引き下げると公約していることを好感していますが、その中でも減税の恩恵をより受けやすい小型株が大きく上がりました。トランプ氏の勝利が確認された翌日、小型株指数であるラッセル2000は1日で5.84%上昇、1週間では8.57%上昇し終えています。
株式市場に最も影響を与えそうなのは、トランプ氏が公約に掲げている規制緩和でしょう。バイデン政権によって規制が強化された業界は、トランプ氏により規制が緩和されると期待されています。例えば金融業界は規制緩和の恩恵を最も受けやすい業界の1つと言われています。ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]のジェイミー・ダイモンCEOも金融機関に対する規制に批判的で、規制緩和が行われると同セクターに大きな後押しとなるでしょう。市場ではそんな期待を織り込み始め、実際、KWB銀行指数は先週8.42%上昇しました。
「賭け」に勝ったイーロン・マスク氏の[TSLA]株は急上昇、中国との関係はどうなる?
トランプ氏圧勝の恩恵を最も受けるのは、トランプ氏の最強の支持者であるテスラ[TSLA]CEOのイーロン・マスク氏でしょう。マスク氏はここ数ヶ月、激戦州ペンシルベニアで対話集会を開いたり、マディソンスクエアーガーデンでトランプ支持の演説を行うなど、トランプ氏の選挙で最も強力な支援者でした。彼は個人的に少なくとも200億円をトランプ氏の選挙キャンペーンに使ったと言います。もしかすると、マスク氏のサポートがなければ、トランプ氏は選挙に勝てなかったかもしれません。
マスク氏の無謀とも言えるトランプ氏当選への賭けは、同氏、いや、彼がCEOを務める会社の株主にとっても最大のリスクであったはずです。しかし、結果が全ての世界においては、今回の賭けは最高の結果をもたらすかもしれません。
民間企業がスペースXのスターリンクのような戦略的なツールを支配しているというのは、歴史上でも例がないことです。ここから4年間、トランプ新政権下ではマスク氏の事業が有利に運ぶよう見返りがあるはずです。実際、選挙の翌日、市場はトランプ氏の勝利で恩恵を受けるのはマスク氏の関連する会社だと判断し、同氏がCEOを務めるテスラ株は1日で15%上昇。この日だけでテスラの時価総額は2250億円も増えたのです。週間ベースでは、テスラ株は先週29%上げ、ほぼ2年ぶりに時価総額1兆ドル企業となりました。
また、マスク氏は中国にもテスラのギガファクトリーを有し、中国とは経済的に大きな利害関係を持っていますが、トランプ氏や共和党議員は対中強硬姿勢をとっています。マスク氏は中国訪問の際、トランプ氏が勝利すれば自分が中国とトランプ政権をうまく取り持つと中国指導者に伝えているのですが、それが実現するかは不透明です。特定の技術分野でトランプ政権の政策を中国寄りに動かす可能性はあるものの、米中貿易戦争の根幹にある関税政策に大きな変化が起きるかどうかは疑問です。マスク氏が中国の期待に応えられない場合、その反動も懸念されます。