主要な3つのクロス円の5年MAとの関係

米ドルに対する円安は、1998年以来、約24年ぶりの動きとなっている。米ドル以外の通貨に対してはそれほどではないものの、円安は大きく進んだ。米ドル以外の通貨に対する円相場をクロス円と呼ぶが、そんなクロス円の上昇について、5年MA(移動平均線)かい離率を使って、「上がり過ぎ」懸念を検証してみる。

今回は、代表的なクロス円として、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円の3つの通貨ペアについて検証してみたが、経験的には3通貨ペアとも、程度差はあるものの、5年MAを2割上回ると「上がり過ぎ」懸念が強く、上昇一巡となってきた(図表1、2、3参照)。

【図表1】豪ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表2】英ポンド/円の5年MAかい離率(1995年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表3】ユーロ/円の5年MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ちなみに、それぞれの5年MAは、足元で豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円の順に、80.4円、146円、127.5円。従って、それを2割上回る水準、それは上述のように「上がり過ぎ」懸念の1つの目安になりそうだが、それは96.5円、175円、153円といった計算になる。

これまで、既に豪ドル/円は、この5年MAを2割上回る水準まで上昇した。一方で、英ポンド/円、ユーロ/円はまだ、5年MAを2割上回る水準まで上昇していない。これらの「差」には、円安とは別に、対米ドルでの通貨の強弱、つまりエネルギー価格上昇の資源国通貨への影響や、ウクライナ危機の欧州諸国への影響などが関係したと考えられる。

ただし、5年MAからのかい離率において先頭に立った形となっている豪ドル/円が、経験的な「上がり過ぎ」の限界圏に達してきたことは注目される。この豪ドル/円が象徴的なように、主要なクロス円の上昇も、歴史的な米ドル高・円安の影響が大きく、さらに「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性はあるものの、上昇の「オーバー・シュート(行き過ぎ)圏」に入っていることは、頭に入れておく必要があるだろう。