電線各社「御三家」が上方修正、光ファイバーの需要が急増

2025年3月期第2四半期(4~9月)決算発表が一巡した。日経平均株価の決算直前の1株利益は2,500円程度だったが、直近では2,420円台にまで低下。全体としては、当初一段の増加が見込まれていただけに、厳しい内容だったと総括されている。中国経済の低迷、日本の酷暑や豪雨の影響、そして自動車の不正検査の影響も指摘されている。

こうした中で、好決算が目立ったのが電線各社だ。「御三家」といわれる古河電気工業(5801)、住友電気工業(5802)、フジクラ(5803)の3社はいずれも通期業績を上方修正している。フジクラを軸に、各社が手掛けている光ファイバーがAI(人工知能)の普及に伴い、大規模データセンター向けなどの需要が急増している。

光ファイバーとは透過率の高い石英ガラスやプラスチックなどで作られた光の伝送路だ。1本1本は非常に細い繊維状で、これを大量に束ねることによって大容量の光(情報量)を流す「光ファイバーケーブル」となる。膨大な情報量を処理する大規模データセンターには不可欠だ。光ファイバーは、銅線などに比べて高速通信が可能で、伝送損失が少ないというメリットもある。

AI半導体であるGPU(画像処理半導体)には従来のデータセンターの10倍超の光ファイバーが必要になると言われている。

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フジクラ(5803)

第2四半期時点で2度目の業績上方修正を行うなど快走している。期初時点での2025年3月期の営業利益予想は700億円(前期比0.7%増)だった。これが8月に発表された第1四半期決算発表で、890億円(同28.1%増)に修正され、さらに第2四半期決算発表で1040億円(同49.7%増)にまで上乗せされている。

同社の細径高密度(極細で、たくさんの光ファイバーを詰め込んだ)光ファイバーケーブルは、一般的な製品に比べて大幅に細径・軽量化した製品だ。敷設にかかる工数を短縮することで短納期も可能になったという。会社側によれば、従来比で23%細径化が可能。同社ではこのほか、光ファイバーの接続に不可欠な融着接続機が、世界シェア50%を超えていると推察される。

【図表1】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月21日時点)

古河電気工業(5801)

今回の決算で最もサプライズだった同社は、決算発表の翌日から2日連続で制限値幅いっぱい(ストップ高)に買われている。第2四半期時点で、営業利益を従来予想の250億円から130億円増額の380億円(前期比3.4倍)になる見通しと発表。自動車部品事業の生産性改善や、機能製品事業でのデータ関連製品の好調などを要因に挙げている。

決算説明資料では今後も成長が見込まれるデータセンター市場に向けて、製品供給力を増強し売上高拡大を図るとしている。ケーブルやコネクタなどデータセンター関連製品の売上高は、2023年に比べ2025年には1.5倍になると予想している。

【図表2】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月21日時点)

住友電気工業(5802)

第2四半期時点で従来計画に比べ、営業利益が100億円増額の2600億円(前期比14.7%増)となる見通し。生産性の改善やコスト低減などを要因とし、売上高は500億円下方修正している。今期、光ファイバー関連の大きな伸びはない。ただ、上半期では生成AIの普及に伴うデータセンター事業者の設備投資が増加傾向で、光デバイスや光配線機器の需要が増加しているという。

一方、大手証券会社のアナリストは、データセンター向けを中心に高い利益成長が見込めると指摘。データセンター向けの光コネクタ(接続部品)の世界シェアは現状10%未満だが、新たな顧客の受注が決まっており、2026年3月期には2024年3月期に比べ生産能力を4.4倍とし、シェアも25~30%に上昇するとしている。

会社側では11月13日に「データセンター関連事業の成長戦略」という資料を出しているが、その中でデータセンター向け光コネクタ・ケーブル市場は2028年にかけて年率27%成長するとの見方を示している。同社の超多芯光ケーブルや融着接続機などの伸びに期待している。

【図表3】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月21日時点)

SWCC(5805)

総合電線・ケーブルメーカー。2025年3月期の営業利益は前期比59.9%増の205億円を計画している。第2四半期時点で従来予想比70億円の上方修正に。こちらはエネルギー・インフラ事業が当初想定を大きく上回っていることが要因としている。

エネルギー・インフラ事業では国内建設関連向けの需給ひっ迫が継続し、電力インフラ向けなどが拡大しているという。同社は工場向けの産業用電線・ケーブルなどに展開している。通信・産業デバイス事業では通信ケーブルは価格見直しの効果に加え、データセンターを含む建設関連向けや車載向け需要が堅調に推移している。

【図表4】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月21日時点)