介入合意の有無で違った表現
10日、財務省、日銀、金融庁は「三者会合」を開き、円の急落を懸念するとした声明文を発表した(図表参照)。ただ、この文面からすると、「必要な場合の適切な対応」の中に、円安阻止のための米国などとの協調介入は含まれていない可能性が高そうであり、日本単独の為替介入すらも微妙と感じさせるところがある。
というのも、為替介入について決定した場合の表現には特徴があった。今から最も近いG7(先進7ヶ国財務相会議)協調介入は、いわゆる「9・11」などの例外を除くと2000年9月のユーロ安阻止協調介入まで遡る必要があったが、その直後に発表されたG7声明では、「引き続き動向をよく注視し、為替市場において適切に協力していく」との表現になっていた。
その一方で、同じ2000年1月に、G7は「円高を懸念する」といった声明を発表したが、ここでは円高阻止の協調介入は実現しなかった。この声明では、「引き続き為替市場の動向を注視し、適切に協力して」との表現が使われていた。
以上、①~③の3つの声明を見てきた。②はG7協調介入が実現した時の声明、これに対して③はG7協調介入が実現しなかった時の声明だ。とても微妙ながら、表現における違いは、協調介入を行う場合は、「為替市場において適切に協力していく」との表現になっていたこと。
まさに、「市場における適切な協力」とは、文字通り受け止めると協調介入という意味だろう。とても微妙な表現の違いながら、協調介入合意があった場合は、声明で「為替市場において適切に協力していく」と表現するのが基本で、逆に言えばその表現を使わなかった場合は、協調介入について合意はない可能性が高いのではないか。
改めて10日に発表された「三者会合」声明を見て見ると、「各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合には適切な対応をとる」となっており、とくに「為替市場において適切に協力する」とはなっていないことからすると、協調介入合意のあった②より、合意のなかった③に近いのではないか。以上からすると、今回は未だG7での協調介入の合意はない可能性が高いと考えられる。
ところで、協調介入は行われなかった③の声明発表前後でも、日本の通貨当局による単独介入は断続的に行われた。その意味では、今回の声明が、日本単独の円安阻止介入まで否定したということではないだろう。ただ敢えて「為替市場における適切な対応」と、より明確に為替市場介入を示唆する表現としなかった点は少し気になるところではある。