吉田恒の為替デイリーの記事一覧

チーフ・FXコンサルタントの吉田恒が独自の視点から日々のマーケット情報や注目材料などをお伝えします。
 

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吉田恒の為替デイリー
金利差という短期的米ドル買いの「障害」
ユーロ/米ドルなどに顕著だが、最近にかけて金利差と米ドル高のかい離が目立っている。 速やかに金利差が米ドル高を正当化できなければ、さらなる米ドル買いの「障害」になる可能性あるだろう。
米ドル高・円安「行き過ぎ」の再点検
米ドル高・円安は、5年MAかい離率などで見ると、過去の円安トレンドのピークに接近してきた。また90日MAかい離率で見ると、先週は短期的な米ドル「上がり過ぎ」懸念も再燃していた。 一方、CFTC統計の投機筋のポジションを見る限り、円の「売られ過ぎ」懸念はまだそれほど強くない。
円安を巡る財務省と日銀の温度差
止まらない円安を受け、9月8日に開かれた財務省、日銀、金融庁の3者会合の後、財務省の神田財務官は「為替市場において必要な対応を取る準備がある」などと述べた。これは、普通なら為替介入を行う覚悟を決めた時に使う表現。 ところが、3者会合は声明を発表しなかった。これには3者会合への日銀からの参加者、為替の知識と経験がある「スーパーレディ」の影響も注目される。
米ドル急騰「一服」2つのシナリオ
今週に入ってから米ドル高・円安が急加速した。 この数ヶ月間で、加速した米ドル高・円安が一服した代表例は4月下旬と7月中旬。この2つのケースを参考に、足元の米ドル急騰が一服するシナリオを考えてみる。
米大幅利上げを後押しする3Q景気回復
米国では第2四半期まで2四半期連続マイナス成長となったが、GDP予測モデルの第3四半期(3Q)予想は2%以上に回復してきた。 FRB大幅利上げにもかかわらず米景気が回復すると、インフレ是正の障害になる可能性がある。その場合、FRBは当面大幅利上げ姿勢を緩められず、それは米ドル高を後押ししそう。
米ドル高・円安、「145円」と「150円」の違い
米ドル高は、5年MAかい離率で見ると、145円はまだ「経験内の米ドル上がり過ぎ」だが、150円は「未体験の米ドル上がり過ぎ」。ただ、購買力平価との関係では、既に足元でも「飛び抜けた米ドル上がり過ぎ」。 FRBはインフレ対策で大幅利上げを続けているが、それに行き過ぎた米ドル高も重なり、米景気が急悪化に転換するタイミングこそが、行き過ぎた米ドル高の反転、そしてそれがどの程度急激な動きになるかの目安となりそう。
米ドル高・円安とレーバー・デー「アノマリー」
欧米のトレーダーにとって実質的な夏休み明けとなるレーバー・デー明けから、相場は一方向へ大きく動き出す傾向があった。 2022年は例年と異なり「夏枯れ知らず」で歴史的米ドル高・円安が展開しているが、9月5日のレーバー・デーが終わり、名実ともに本格的なトレード局面に移行することで、米ドル高・円安が一段と広がる可能性に一応要注意。
「雇用統計相場」を予想する
8月の「雇用統計相場」は、NFPなどが「ポジティブ・サプライズ」となったことを受けて米ドル一段高となった。この「雇用統計相場」以上の大相場となったのが、7月CPI発表を受けた米ドル急落だ。 このように注目指標の結果へのリアクションが大きくなっている。今回の雇用統計発表では、「先行指標」ADP統計の「ネガティブ・サプライズ」の影響も一部で警戒されている。
なぜ株安でも円高にならなくなったのか
リスクオフ(株安)局面では「安全資産」として円が選好されてきたが、最近にかけてそれは大きく崩れた。 これには、ロシアによるウクライナ侵攻といった安全保障要因や米金利の影響などが考えられる。株安でも円高にならなくなったことは、円安を加速させ、「歴史的円安」が起こった1つの側面になったのではないか。
政治との関係で考える円安阻止介入
日本の円高、円安阻止といった為替介入出動には、これまで政治の影響も小さくなかったようだ。 重要な国政選挙がしばらくない「黄金の3年」の中では、政治的に為替安定への期待は高まらず、円安阻止介入の動機としては、記録的円安、1998年の147円更新前後が1つの目安か。
1998年以来「140円超の円安」を考える
1998年以来の140円超の米ドル高・円安に迫る動きとなっている。これは、1998年と同様に米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念がかなり強くなっていると言えそうだ。 1998年の場合は、米ドル高・円安が終了すると、行き過ぎの反動から米ドルは大暴落となったが、それはリスクオフがきっかけだった。今回の米ドル安への転換が緩やになるか急激になるかは「××ショック」のようなことが起こるかが左右するのではないか。
米インフレへの原油の影響を再考する
米インフレにピークアウトの可能性が出てきたのは、原油など資源・穀物相場急落の影響が大きかったと推測。 原油相場は、足元で「下げ渋り」が目立っているが、あくまで短期的な「下がり過ぎ」によるもので、中長期的には逆になお「上がり過ぎ」修正の途上、景気との関係でも「上がり過ぎ」修正の可能性が大きそうだ。
ユーロ安は「いつまで、いくらまで」続くのか
22年ぶりに「パリティ」割れとなるなどユーロ安が広がっている。このユーロ安は、ウクライナ情勢の影響以上に米金利上昇に伴う米ドル高の結果という面が大きいのではないか。そうであれば、ユーロ安の終わりは、米金利上昇の終了が目安になりそう。 52週MAかい離率、5年MAかい離率を参考にすると、ユーロ安は0.95米ドルを割れる可能性はあるものの、0.9米ドル割れは微妙ではないか。
「円高リスク」をケーススタディする
急ピッチの円安が進む中で、その反動の円高リスクとはどの程度のものか。 経験を参考にすると、円高リスクは米金利低下が目安になる。かつては、「リスクオフ(株安)の円買い」もあったが、それは最近目立たなくなった。
「ボルカーのインフレ退治」からの教訓
米インフレにピークアウトの可能性が出てきたが、FOMC関係者などからは、引き続きインフレ抑制に強い姿勢で取り組み、リセッションも辞さずといった発言が目立っている。 実際に、インフレ退治に強い姿勢で取り組んだ結果、2度もリセッションを起こすところとなった1979年に発表、実施された「ボルカーのインフレ退治」を振り返り、今回への「示唆」を考えてみたい。
豪ドル、ユーロの下落シナリオ再点検
米ドルに対する円安の再燃だけでなく、円以外の通貨である豪ドルやユーロも最近にかけて米ドルに対して下落再燃となった。 再燃した豪ドル/米ドル、ユーロ/米ドルの下落見通しについて、主に52週MAとの関係で見ると、豪ドル/米ドルは0.65米ドル割れ、ユーロ/米ドルは0.95米ドル割れが、基本的な「目標」になるのではないか。
米インフレ対策と米ドル高継続の関係
供給要因によるインフレ、「コスト・プッシュ・インフレ」は、原油価格の急落などによりピークを過ぎたようだ。 ただそれを好感した株高、そして原油急落によるガソリン価格の下落などは、主に消費者心理改善を通じて需要刺激効果をもたらしている可能性がある。需要要因によるインフレ、「デマンド・プル・インフレ」対策の需要抑制策は、引き続き通貨高をもたらす可能性があるだろう。
FOMC議事録が需要抑制を強調した意味
8月17日公表された7月FOMC議事録では、インフレ是正のために需要を抑制することを強調した点が印象的だった。これは、議事録公表までの間の「変化」を反映した可能性もありそうだ。 需要抑制に整合するマーケットの動きは、為替の場合なら通貨高。FOMCが需要抑制を強調したことで、それと整合する米ドル高再燃の可能性が改めて注目されそうだ。
行き過ぎた円安の大反転、1998年の悪夢
米ドル高・円安は、5年MAかい離率などで見ると、行き過ぎ懸念が強くなっている。 行き過ぎた米ドル高・円安の反転は、1998年のような米ドル大暴落をもたらしたこともあった。
利上げ見通し巡る「FOMC vs 市場」の影響
FOMCメンバーたちの大幅な利上げ見通し表明の割には、本来的に米金融政策を反映する米2年債利回りなどの上昇が鈍い印象だ。 これが米利上げ見通しを巡るFOMCと市場の見方のズレということなら、そのズレが修正される局面で米金利、それを通じた為替相場のボラティリティーが高まる可能性に要注意。