令和7年(2025年)の税制改正は個人の所得税に係る部分が多くありました。年末調整や確定申告において大きく影響し、今まで確定申告は不要だった人も申告しなければ、「ソン」をすることも少なくありません。

まず、個人課税に関することを再確認し、令和7年分(2026年提出)の確定申告において特に留意しなければならないことを解説します。

なお、令和8年度税制改正大綱によりますと、令和8年分(2026年分)以後の個人課税について改正が予定されています。ここでは、令和7年(2025年)の取り扱いに絞ってお伝えいたします。

所得税の計算方法とは

所得税の計算は、【ステップ1】「収入金額」から「必要経費」を差し引いて「所得金額」をもとめ、【ステップ2】その「所得金額」から扶養家族など個人的事情に配慮した「所得控除」を差し引き、【ステップ3】その残額である課税所得金額に税率(5%~45%)を乗じて計算します(図表1参照)。

【図表1】所得税の算出ステップ
注:「所得金額」は稼ぎ方等により10種類に区分されます。例えば、給与収入と不動産収入のある人や、給与収入と年金収入がある人など複数の所得がある人は、それぞれの所得の区分ごとに「収入金額-必要経費」で所得金額をもとめ、これらの所得金額を合算します。合算した金額のことを合計所得金額と言います。
出所:筆者作成

令和7年税制改正で個人税制に影響する項目は各所得控除

令和7年の税制改正で所得税に関係するのは、給与所得者の必要経費である給与所得控除と、所得控除のうち、基礎控除、特定親族特別控除、扶養控除などの所得要件が影響する各所得控除です(図表2参照)。

【図表2】所得税の計算の流れと改正点一覧
※上図の赤太字部分が改正点及び改正の影響がある項目
出所:筆者作成

改正点1:給与所得控除額の最低保障部分の引き上げ

給与所得控除の最低保障額が65万円(改正前: 55万円)に引き上げられ、図表3の通りとなりました。

【図表3】令和7年(2025年)の給与所得控除額の速算表
【図表3】給与所得控除額の速算表
給与等の収入金額 (A) 給与所得控除額
190万円以下 65万円
190万円超360万円以下 (A)×30%+8万円
360万円超660万円以下 (A)×20%+44万円
660万円超850万円以下 (A)×10%+110万円
850万円超 195万円
出所:国税庁タックスアンサー№1410を一部加工

この改正の影響を受けるのは?

この改正は年収190万円未満の給与所得者に影響します。控除する金額が引き上がりましたので税負担は軽減します。

改正点2:基礎控除の引き上げ

合計所得金額が2350万円以下である場合の基礎控除額(改正前48万円)は、合計所得金額に応じて10万円~47万円引き上げられました。令和7年(2025年)の所得税の基礎控除の額は、図表4の通りとなります。

【図表4】令和7年(2025年)の所得税の基礎控除
出所:筆者作成
合計所得金額 所得税( )は改正前 給与収入によるおおよその区分
132万円以下 95万円(48万円) ~200万円相当
132万円超~ 336万円以下 88万円(48万円) 200万円相当~475万円相当
336万円超~ 489万円以下 68万円(48万円) 475万円相当~665万円相当
489万円超~ 655万円以下 63万円(48万円) 665万円相当~850万円相当
655万円超~2350万円以下 58万円(48万円) 850万円相当~2545万円相当
2350万円超~2400万円以下 48万円 2545万円相当~2595万円相当
2400万円超~2450万円以下 32万円 2595万円相当~2645万円相当
2450万円超~2500万円以下 16万円 2645万円相当~2695万円相当
2500万円超 0 2695万円相当~
出所:国税庁タックスアンサー№1199を一部加工

令和7年(2025年分)、103万円の壁は160万円の壁に

令和6年(2024年)以前は、いわゆる103万円の壁がありました。これは給与所得者目線での所得税がかからないという年収の壁のことです。給与収入103万円以下の場合は103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0で、所得税がかかりませんでした。

令和7年(2025年)は基礎控除と給与所得控除額の引き上げにより、年収160万円 (160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=0)までは所得税はかかりません。

改正点3:扶養親族の所得要件等の引き上げ

令和6年(2024年)までは扶養の対象となるのは、その扶養の対象となる配偶者や親族の合計所得金額が48万円以下でした。これが令和7年(2025年)は58万円以下に引き上げられました。

この結果、改正前はパート・アルバイトの配偶者や子の給与収入が103万円を超えると扶養から外れていたのですが、令和7年(2025年)分は年収123万円までは扶養の対象となり、配偶者控除や扶養控除の適用を受けられます。扶養の対象となる親族が公的年金収入のみであれば、年金収入168万円以下(65歳未満の扶養親族の場合は118万円以下)です。

また、ひとりで子を扶養している場合、ひとり親控除として35万円を所得から差し引くことができますが、子の総所得金額等が58万円以下であればひとり親控除の適用を受けられます(合計所得金額と総所得金額等は微妙な違いがありますが、ここではすべて「合計所得金額」として表記します)。

混乱しがちなことは…?

今回、「扶養控除や配偶者控除の対象となるかどうか」の所得要件が58万円以下となったということで、扶養控除や配偶者控除の控除額そのものは改正されていません(図表5参照)。

【図表5】扶養親族の年齢別の控除額は変わらない 
出所:筆者作成

この改正により波及する影響項目

扶養親族の対象が58万円以下となったことが、以下の通り、その他の所得控除にも影響します。

【1】障害のある扶養親族がいる場合に障害者控除を受けられますが、その障害のある親族の合計所得金額が58万円以下であれば、扶養控除に障害者控除を加算して控除できます(障害者控除27万円、特別障害者控除40万円、同居特別障害者控除75万円)。

【2】離婚した女性に扶養親族がいる場合、寡婦控除として27万円を所得から差し引くことができます。その扶養親族の合計所得金額が58万円以下であれば扶養控除と寡婦控除を控除できます。

【3】給与収入850万円超の給与所得者に23歳未満の扶養親族や特別障害者の扶養親族がいる場合に、所得金額調整控除として給与所得から最大15万円を差し引くことができます。生計一の23歳未満の親族や特別障害者の親族の合計所得金額が58万円以下であれば、この調整控除の適用があります。

改正点4:特定親族特別控除の創設(大学生年代のアルバイトについて扶養の範囲が拡充)

19歳以上23歳未満の扶養親族がいる居住者は、上記のとおり特定扶養控除として63万円の所得控除が受けられます。しかし、例えば大学生の子が扶養の範囲を1円でも超えてアルバイトなどをした場合は、その親は63万円の控除を引くことができず、税負担が跳ね上がることとなります。これでは、その大学生の子は「働き控え」せざるを得ません。

賃上げが推奨され時給がアップしている中での労働力不足が社会的問題となっている昨今です。令和7年(2025年)から大学生年代が「壁」を気にせずに就労できるよう新しい控除が創設されました。

特定親族特別控除とは

19歳以上23歳未満の大学生年代の子等が扶養の範囲を超えて働いても合計所得金額85万円(給与収入150万円に相当)までは、その子の親が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられ、子の合計所得金額が85万円を超えた場合でも親が受けられる控除の額が段階的に逓減するという所得控除です(図表6参照)。

【図表6】特定親族特別控除額表(令和7年(2025年))
出所:筆者作成
特定親族等の合計所得金額 控除額 参考:特定親族等の給与収入
58万円超  85万円以下 63万円 ~150万円以下
85万円超  90万円以下 61万円 ~155万円以下
90万円超  95万円以下 51万円 ~160万円以下
 95万円超 100万円以下 41万円 ~165万円以下
100万円超 105万円以下 31万円 ~170万円以下
105万円超 110万円以下 21万円 ~175万円以下
110万円超 115万円以下 11万円 ~180万円以下
115万円超 120万円以下 6万円 ~185万円以下
120万円超 123万円以下 3万円 ~188万円以下
出所:国税庁タックスアンサー№.1177一部加工

特定扶養控除と特定親族特別控除の関係は、配偶者控除と配偶者特別控除の関係に似ています(図表7参照)。

【図表7】特定扶養控除と特定親族特別控除のイメージ図
出所:筆者作成

この控除の対象は大学生に限らない

特定親族特別控除の対象は大学生「年代」ですが、大学等に行っているかどうかは関係ありません。また、親と子の関係に限られませんので、例えば生計を一にする祖父と孫や、兄妹などの間でも可能です。

大学生年代の子等の本人の年収の壁のまとめ

特定親族特定控除は大学生年代の子を持つ親等の所得控除ですが、特定親族(19歳以上23歳未満)本人の令和7年(2025年)の年収の壁は次の通りとなります。

【1】 特定親族の「所得税」のかからない給与収入は?

160万円 (160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=0円) です。

なお、合計所得金額が85万円以下の場合、勤労学生控除の適用が受けられることとなっていますが、基礎控除が引上げられましたので、所得税では適用の余地が無くなりました。

【2】 勤労学生である特定親族の「住民税」のかからない給与収入は?

134万円 (134万円-給与所得控除65万円-基礎控除43万円-勤労学生控除26万円=0円) です。住民税については基礎控除額の引き上げは行われておらず、多くの人の基礎控除は43万円のままです。ですから、合計所得金額が85万円以下の勤労学生の場合は、勤労学生控除として26万円を控除できます。

一方、勤労学生ではない特定親族の「住民税」のかからない給与収入は、110万円です。住民税の基礎控除額は43万円ですが、住民税には非課税制度があり、合計所得金額45万円以下は住民税がかからないこととなっています。そのため110万円までは住民税がかかりません(110万円-給与所得控除65万円=45万円)。

【3】 健康保険料が追加でかからない給与収入は?

扶養親族である子や配偶者の給与年収が130万円以上となると、健康保険については給与所得者の親や夫の扶養から外れ、本人が国民健康保険の対象となり新たに保険料が発生することとなっています。

令和7年(2025年)10月より健康保険の扶養の収入基準においても、特定親族に限り本人の給与収入150万円までは親等の扶養の対象となりました。(なお、これは親が給与所得者の場合です。親が個人事業者等の場合の国民健康保険料は、世帯で所得が合算されて保険料が決定し、世帯主に納付義務が生じます)。

「特定親族は扶養親族ではない」ことによる影響

特定親族特別控除の対象となる大学年代の子等は合計所得金額が58万円超で扶養親族ではありません。ですから特定親族の親等は、「子等が扶養親族である場合に受けられる」ひとり親控除、寡婦控除(離婚)、障害者控除、所得金額調整控除の適用はありません。また、特定親族の所有する生活用動産・不動産が災害・盗難・横領による被害を受けても、親等の雑損控除の適用は受けられません。