5回目の15万枚超を記録した投機円売り

投機筋の代表格であるヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、5月28日時点で売り越し(米ドル買い越し)が15万枚に拡大した。4月以降、同売り越しが15万枚以上を記録したのは、これで5回目になる(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

最近の他に、同売り越しが15万枚以上に拡大したのは2007年のみ。その2007年は、2月と6月の2局面を中心に、円売り越しが15万枚以上に拡大したのは計7回あった(図表2参照)。以上のように見ると、最近は2007年に迫る記録的な投機円売り拡大が続いていることが分かるだろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2006~2008年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

2007年と最近の代表的な共通点は、大幅な金利差円劣位の長期化だろう。両者とも、日米政策金利差円劣位は5%前後もの大幅な状況が長期に渡って展開した。これは短期売買を行う投機筋にとっては円買いが極めて厳しく、一方で円売りには圧倒的に有利な要因だろう。そうした中で、投機円売りが極端な「行き過ぎ」、バブル化したのが2007年であり、そして最近の状況と言えそうだ(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

最近の投機円売りバブルの前例と言える2007年において、投機円売りのピークは6月であり、CFTC統計の投機筋の円売り越しは18.8万枚だった。ただ、米ドル高・円安が6月の124円でピークアウトし、7月に入ると120円割れへと円高に向かい始めた。そしてNYダウなどの米国株も7月中旬から大きく下落に向かい始めると、投機円売り越しも急ピッチの縮小となり、9月にFRB(米連邦準備制度理事会)が、この局面での最初の利下げに動く前には、投機円売り越しは消滅した(図表4参照)。

【図表4】NYダウの推移(2006~2007年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

今回、投機円売り越しのこれまでのピークは、4月23日に記録した17.9万枚。その後、間もなく日本の通貨当局による米ドル売り介入が行われ、円高へ大きく動いたことから、同売り越しも一時は12万枚まで縮小した。

しかし、冒頭で述べたように、5月28日には同売り越しは15万枚まで再拡大した。このままさらに、2007年6月に記録した過去最高の18.8万枚の更新に向かい、2007年を上回る過去最大の投機円売りバブルが展開することになるのか。為替相場の円高リスク、そして株安の動向などをにらみながらの展開となりそうだ。