米ドル/円は約9ヶ月で2割以上の急落

CFTC統計の投機筋の円売り越し、その最高記録は2007年6月の18.8万枚だった。ただ、この円売り越しは、その後ほぼ2ヶ月で消滅した(図表1参照)。当時、「サブプライム・ショック」と呼ばれた現象が起こり、米国株が急落し、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月から利下げを始めた。金利差米ドル優位・円劣位が急縮小に向かうという見通しを受けて円高に大きく動き出したことで、投機的円売りポジションも急いで解消に向かったということだろう。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2006~2008年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

 当時の米ドル/円は、2007年6月の124円がピークだったが、米ドル高・円安をもたらした主因とみられた投機円売りが急変する中で、米ドル/円も急落に向かい、2008年3月には95円まで下落した(図表2参照)。つまり、約9ヶ月で米ドル/円は2割以上下落したのだった。

【図表2】米ドル/円の週足チャート(2007年1月~2008年8月)
出所:マネックストレーダーFX

では、これを最近のケースに当てはめたらどうなるか。仮に、この間の米ドル/円の高値、160円から2割下落するなら、130円を割れる計算になる。2007年の円売りバブル崩壊で起こった米ドル/円の下落とは、そうしたイメージになるだろう。

豪ドル・円の「上がり過ぎ」懸念

しかし、2007年の円売りバブル崩壊において、この米ドル/円の急落は決して「主役」ではなかった。そもそも米ドル/円は、円売りバブル局面でも、5年MA(移動平均線)かい離率などで見る限り、特に「上がり過ぎ」が懸念されるほどではなかった(図表3参照)。当時「上がり過ぎ」が懸念されていたのは、豪ドル/円などのクロス円だった(図表4参照)。

【図表3】米ドル/円の5年MAかい離率(1980年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成
【図表4】豪ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

これは日米以上に、日豪などの金利差円劣位が大きかった影響と考えられた(図表5参照)。当時は新興国時代の始まりであり、原油価格など資源価格の高騰が重なった影響もあっただろう。そうした中で、「円売りバブル」の主役となっていた豪ドル/円などは、米ドル/円の急落を尻目に、なお下落が限られる状況が続いた。

【図表5】先進国の政策金利の推移(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

2008年に入り、米ドル/円はすっかり円高へ景色が一変したのに対し、豪ドル/円はむしろ、再びこの間の豪ドル高・円安に接近するところとなった。豪ドル、通称「オージー」は、あたかも不死鳥のようだった。しかしそれは幻想に過ぎなかった。やがて、豪ドル/円は米ドル/円以上の大暴落に襲われるところとなった。