その1:公的年金受給者:確定申告不要のままでは損をする人がいます

公的年金収入のある人は、通常、年金収入が400万円以下で、公的年金以外の所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要とされています。

ところが、令和7年分(2025年分)については確定申告をしないと、所得税を多く源泉徴収されたままの人がいます。令和7年分の改正点は給与所得者においては勤め先が年末調整で精算していますが、公的年金については年末調整のシステムがありません。

公的年金は2月、4月、6月、8月、10月、12月に支払われますが、この支払の都度、所得税の源泉徴収が行われています。前年に本人から提出された「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に基づいて、配偶者や扶養親族のことを考慮します。さらに、国民健康保険料や介護保険料などの年金天引きの社会保険料も考慮したうえで、ほぼ適切な額となるように計算した所得税額を、6回分の年金から分割徴収します。そのため、通常の場合は確定申告しなくてもよいように配慮されています。

ただし、医療費控除や、寄付金控除、生命保険料控除、地震保険料控除などは、全く反映されていませんので、これらの控除を受けるには確定申告しなければなりません。令和7年分については、これら以外に、税制改正の影響で確定申告しなければ損をしてしまう人が発生します。

【1】基礎控除の引き上げの影響

令和7年(2025年)の所得税の基礎控除は、合計所得金額に応じて10万円~47万円引き上げられ、合計所得金額が132万円以下なら最大95万円控除できます。年金受給者については12月に年金が支払われる際にこの改正後の基礎控除を踏まえて、すでに徴収済みの所得税の精算が行われます。

その12月の精算時の基礎控除は「88万円」で計算されることとなっています。そのため、基礎控除額が95万円の人は、12月の精算時には完全に控除されておらず、源泉徴収が過大となっている可能性もあります。ここに該当するのは年金収入金額が198万円超242万円以下の人です(65歳未満の場合は年金収入154万円~約213万円です)。特に扶養控除や配偶者控除の無い単身世帯の方などは、確定申告しなければ、過大に徴収されたままとなってしまっています。

【2】扶養親族の所得要件の引き上げの影響

令和7年(2025年)の所得税は、合計所得金額が58万円以下の生計を一にする親族が扶養控除の対象となります。令和6年中に「令和7年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出した際は、扶養親族の合計所得要件は48万円以下でした。

その際、合計所得金額が48万円を超えているため、扶養から外していた生計一親族がいる場合には、令和7年分の公的年金からの源泉徴収には反映されていません。例えば、同居の70歳の兄弟の年金収入が160万円(=合計所得金額50万円)なので扶養対象外としていたとします。令和6年のときは扶養対象外でしたが、令和7年においては扶養の対象で、老人扶養親族として48万円の控除をすることができます。

このように令和7年度(2025年)の改正により新たに扶養親族となった場合は、12月の源泉徴収で精算してくれませんので、確定申告で還付申告をする必要があります。住民税への影響も小さくありません。生計を一にする親族の合計所得金額の再確認をして、確定申告をするかどうかを判断しましょう。

【3】特定親族特別控除の創設の影響

公的年金受給者の中にも、19歳以上23歳未満の親族と同居しているケースがあるでしょう(子、孫、養子など)。

令和7年からは19歳以上23歳未満の生計一親族については、合計所得金額が58万円を超えたため扶養から外れても、合計所得金額123万円(アルバイト収入188万円)までは特定親族特別控除の適用があり、最大63万円を控除できます。

令和6年に「令和7年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出した際は、この所得控除そのものが無かったため、12月の源泉徴収で対応してくれません。こちらも住民税への影響は小さくありませんので、該当する親族がいる場合は確定申告をしましょう。

【図表1】令和7年分の確定申告書:申告書特定親族特別控除欄の新設
出所:国税庁

その2:令和7年中(2025年中)に退職した人:源泉徴収税額の還付の可能性大!

年の中途で退職した人については、給与所得に係る源泉徴収額が過大であることが多いため、確定申告をすることで、ほとんどの場合は還付となります。

特に令和7年(2025年)は11月末までは、基礎控除等の引き上げ等の改正が源泉徴収に全く反映されていません。そのため、確定申告すれば還付の金額も多くなると期待できます。

また、令和7年中に死亡した給与所得者や、海外赴任等で非居住者となった人も、死亡時や出国時に改正前の税制のまま年末調整を受けていますので、確定申告(準確定申告)をすれば還付されるでしょう。

なお、給与所得者以外の人で、出国し非居住者となったり死亡したりして、所得税を納税しなければならない場合は「準確定申告」を提出します。令和7年(2025年)11月末までに準確定申告を提出している場合は、やはり改正前の税制のまま申告していますので、令和7年(2025年)12月1日~令和12年(2030年)12月2日まで、更正の請求書を提出して還付を受けることができます。

その3:通勤手当の支給を受けている人:「自動車通勤手当の所得税非課税限度額の引き上げ」改正で確定申告が必要な人も

交通機関やマイカー等で通勤している給与所得者は、勤め先から通勤手当の支給を受けても一定の金額までは所得税の非課税の対象となります。交通機関の場合は実費相当額(最高月額15万円)が非課税、マイカー等通勤の場合は、片道の通勤距離に応じて最大月額3万1600円まで、非課税となっていました。

物価高による個人負担の増加に配慮して、マイカー等通勤者への非課税限度額の引き上げが行われました(図表2)。令和7年(2025年)4月分以後にさかのぼって適用されますので、限度額を超えて支給を受けたために課税対象となっていた部分の金額がある場合は、年末調整で精算されます。

ただし、この改正は令和7年(2025年)11月20日から施行されますので、やはり、令和7年中に退職した人は、退職した元の勤め先から源泉徴収票の「再交付」を受けて、本人が確定申告する必要があります。再交付の源泉徴収票では、給与の支払金額が訂正され、摘要欄に「再交付」と記載されます。

退職者と異なり、年の途中で死亡した人や出国された方については取り扱いが異なるようです。死亡退職時や出国時に年末調整を受けていた場合、このマイカー通勤の非課税限度額の引き上げに関する部分は勤め先の方で、年末調整のやり直しをすることとなっているようです(通勤手当の非課税限度額の引き上げに関するQ&A国税庁・令和7年11月19日)。この場合は元の勤め先への確認が望まれます。

【図表2】通勤手当の非課税限度額の改正
出所:国税庁

マイナンバーカードの2025年問題、有効期限切れで思わぬ損失

マイナンバーカードには2つの有効期限があり、マイナンバーカードの有効期限と電子証明書の有効期限です。

マイナンバーカードの有効期限はカード発行から10回目の誕生日まで(18歳以上)、電子証明書の有効期限は、電子証明書の発行から5回目の誕生日までです。

5年ほど前に政府はマイナンバーカードの普及を図るため、マイナンバーカードを作るとポイントがつくキャンペーンをしていましたので、令和7年(2025年)は電子証明書の有効期限が切れてしまう人が続出しました。

電子証明書の有効期限が切れた場合、e-Taxによる申告ができません。個人事業主がe-Taxで申告ができないと、青色申告特別控除の65万円が使えず、55万円の控除しかできないこととなります。所得税だけでなく住民税にも影響しますので、有効期限切れには要注意です。

特に、2月16日以降の確定申告期は、市区町村の更新窓口が込み合うことが予想されます。そもそも申請から交付通知書が届くまで1ヶ月~1ヶ月半ほどかかりますし、新カードの交付を受けるためには、その交付通知書が届いてから市町村窓口に行かねばなりません。市町村によっては更新手続きの日程を予約しなければならず、2週間先しか取れないということもあります。

なお、マイナ保険証については、期限が切れても3ヶ月間は引き続き使用可能で、医療機関で保険受診はできます。

その他、2026年提出(令和7年分)の確定申告で注目したいこと

【1】雑損控除

扶養親族の所得要件が拡大されたことが、雑損控除に影響します。

雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、資産に損害を受けた場合等に、一定の金額の所得控除を受けることができることです。令和7年から被災等した「資産」の持ち主の範囲が拡大されました。

雑損控除の対象になる資産の所有者は納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族の持っている生活用の不動産や動産(住宅、家財、衣類、現金等)です。

この場合の生計一の配偶者や親族の総所得金額等が58万円以下(令和6年までは48万円以下)であれば、納税者の雑損控除の対象となります。例えば、年収123万円のパートの妻の現金が盗難に遭ってしまったなどの場合、夫の雑損控除の対象となります。

【2】内職的な働き方をする人のための必要経費の特例の引き上げ

家内労働者(内職・外交員・集金人・電力検針人など特定の者に継続的に人的役務の提供をする人※注)の所得は、事業所得か雑所得です。この所得の計算は、収入金額から実際の経費を差し引いて求めます。

ただし、これらの働き方は、与えられた道具と材料で労働力(役務)を提供して、対価を受け取るというものです。そのため仕入れや家賃・人件費などの経費となる支出は、ほとんどありませんので、収入金額がそのまま所得金額と言えます。実態は給与所得者と類似した働き方であるにもかかわらず、収入金額が58万円を超えたことで扶養から外れるということも考えられます。

そこで、家内労働者等の特例として、給与所得者並みの最低限の必要経費の概算控除の特例があります。この控除額は令和6年までは最大55万円でしたが、令和7年は65万円に引き上げられました。

その結果、例えば、家内労働者の収入が160万円以下でしたら、その本人に所得税はかかりません(収入160万円-必要経費の特例65万円-基礎控除95万円=0円)。そのため所得税の申告は不要となります(ただし、住民税は申告が必要でしょう)。また生計一の親族が家内労働者である場合にはその収入が123万円以下であれば、扶養控除の対象(収入123万円-65万円=58万円≦58万円)となります。

※注:家内労働者の必要経費の特例が受けられる働き方に次のようなものがあります。シルバー人材センターからの分配金、電力、ガス等検針員、生命保険の外交員報酬、ヤクルトの訪問販売員・ダスキンレディ、データ入力、ピアノ教室教師・学習塾教師、食品配達員など。

【3】極めて高い水準の所得に対する税負担が重くなります

合計所得金額が1億円を超えると所得税の負担率が低くなる、いわゆる「1億円の壁」が問題となっています。そこで税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置が令和7年分の申告からはじまります。ただし、所得金額が3億3千万円を超える人に関係する税制ですので、影響を受ける人は、かなり限定されます。

②が①を超える場合、差額分の所得税を追加で納税することとなります。

①所得税の金額
②(基準所得金額※-3億3千万円)×22.5%
※基準所得金額・・・申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額のこと

以上が、令和7年(2025年)の主な確定申告のポイントです。

令和7年(2025年)の年末に令和8年度税制改正大綱が公表されました。令和8年(2026年)分以後の所得税の基礎控除の金額基準のさらなる拡大など、個人課税に影響する内容の多いものとなっています。今後の国会の動向が注目されます。