S&P500とナスダック100が史上最高値を更新

先週(10月20日週)の米国株市場では、主要株価指数がそろって上昇し、S&P500が6,791.69ポイントへ到達、再び史上最高値を更新しました。ナスダック100も2.18%上昇、25,358.16ドルで同じく史上最高値を更新しています小型株指数のラッセル2000は、史上最高値は更新していないものの、2.5%上昇、あと6.3ポイントで史上最高値を更新するレベルまで上昇しました。

市場全体の上げを牽引したのは、インフレ鈍化の兆しと利下げ期待の高まりです。米国政府の閉鎖で経済データの発表が滞る中、久々に発表された9月の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%、コアCPIも+3.5%と、いずれも市場予想をわずかに下回りました。これにより、FRB(米連邦準備制度理事会)が11月または12月FOMC(米連邦公開市場委員会)で25ベーシスポイントの利下げに踏み切るとの安堵感が広まったのです。

リスク資産への資金回帰が鮮明に、米中関係の緊張緩和にも期待

債券市場では10年国債利回りが4%を割り込み、約半年ぶりの低水準に低下。長期金利の安定が株式市場のPER(株価収益率)拡大を下支えし、これまでバリュエーションの上値を抑えていた金利要因が緩和されました。恐怖指数(VIX)は14ドル台へと低下し、リスク資産への資金回帰が鮮明になっています。

資金フローの観点でも、株式ETFへの流入が拡大しました。特に、テクノロジーセクターETFへの週次流入額が5月以来の高水準を記録し、投資家のリスク許容度が再び上昇していることが確認されました。一方で、マネーマーケットファンド残高は依然として高く、余剰流動性が相場の下支え要因として控えています。

ウォール街では、今週(10月27日週)韓国で行われる予定となっているトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談が、米中関係の緊張をやわらげ、対話再開のきっかけになるとの期待が広がっています。もし両国関係が一時的にでも落ち着きを取り戻せば、市場の焦点は企業決算に再び集中するでしょう。

テクノロジー銘柄が再び市場を主導、金融株も堅調

セクター別では、2025年に入って市場をけん引してきたテクノロジー銘柄が再び市場の主導役を務めました。エヌビディア[NVDA]やブロードコム[AVGO]などAI半導体関連が買われたほか、マイクロソフト[MSFT]とアルファベット[GOOGL]の決算への期待が高まっています。特に、アルファベットは過去データ上、第3四半期決算発表後に平均+4.2%上昇する傾向があり、今回もそのアノマリーに沿う形で先回り買いが入っています。

金融株も堅調でした。長期金利の低下が逆風となる一方で、与信コストが安定し、預貸利ざやも予想以上に維持されています。ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]、モルガン・スタンレー[MS]などの大手行は安定推移し、クレジットカード事業を持つアメリカン・エキスプレス[AXP]はガイダンス上方修正を発表しました。

好調な決算発表が続くなか、マーケットを支配するのは「慎重な楽観」

決算発表を見ると、全体的には企業収益の底堅さを示す内容が発表されています。先週(10月20日週)末までにS&P500指数採用銘柄のうち145社、29%の企業が決算発表を終えていますが、これまでのところ約85%の企業が1株当たり利益(EPS)で市場予想を上回っています。

こうした好調な決算が投資家心理を明るくし、市場全体に楽観的なムードを広げています。特に工業、金融、ヘルスケアといったセクターで上振れが目立ち、景気減速への懸念を和らげる要因となりました。

2025年のマーケットは、ここ6ヶ月間でS&P500は30%以上上昇しながら3%以上の調整が一度もないという異例の展開となっています。歴史的には1950年代以降でわずか5回しか例のないパターンで、過熱感を指摘する声もあります。ただし、出来高は抑制されており、強気一色というより「慎重な楽観」が支配的です。

S&P500の7,000ポイント突破は時間の問題か

今週(10月27日週)は、エヌビディア[NVDA]を除くマグニフィセント7銘柄が決算を発表します。つまり、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アップル[AAPL]、メタ・プラットフォームズ[META]、マイクロソフト[MSFT]です。これらの企業はS&P500の利益全体のかなりの部分を占めています。したがって、市場は彼らの決算発表次第で上下します。

6ヶ月連続の上昇、S&P500の史上最高値更新、利下げ期待の高まり。これらを踏まえると、米国株市場は引き続き上昇を継続すると思います。

一方で、1952年以降で10本の指に入る長さとなる186日間の3%以上調整なしという連騰記録も続いており、短期的な過熱は否めません。テクニカル的にも10日移動平均線との乖離が拡大し、調整余地を残します。したがって、今後の投資戦略としては、急落局面での買い増しを狙う姿勢が賢明でしょう。

市場全体のファンダメンタルズは堅調です。 先週、「AIブームはまだ序章にすぎない 、ドットコム時代との比較で見えるAI革命の投資の持続性」の記事で述べた通り、AIブームは息の長いテーマであり、株式リターンの中期ドライバーであり続けるとみています。

私自身がターゲットとしている2025年末のS&P500、7,000ポイントまであと3%もありません。7,000ポイント突破を試す展開も時間の問題となってきています。