2024年7月の投機円売り越しは約18万枚=足下は4万枚

2024年7月、米ドル/円は161円という1986年以来約38年ぶりの米ドル高・円安を記録した。この時、代表的な投機筋のデータであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、18万枚近くに拡大していた。これは2007年に記録した過去最高の売り越しにほぼ肩を並べる水準である(図表1参照)。その意味では、「行き過ぎた投機的円売り」の結果の米ドル高・円安の可能性があった。

【図表1】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2024年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

これに対して足下の円ポジションは、3月10日時点で4万枚の売り越しである。米ドル/円の水準では同じような160円近辺ではあるが、経験的には決して2024年のような「行き過ぎた投機的円売り」というほどではないだろう。

2024年4月の米ドル買い越しは38万枚=足下は6万枚の売り越し

投機筋のポジションが足下と2024年では大きく異なっているのは米ドルについても同じだった。米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、2024年に最初に160円を超えてきた4月に、買い越しが過去最高とほぼ肩を並べる38万枚に拡大していた(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この大幅な米ドル買い越しの中心はもちろん対円だったが、円以外の4通貨に対しても米ドルはすべて買い越しとなっていた。当時メディアの中では「米ドル1強」との呼び方もあったが、別な見方をすると米ドルは「買われ過ぎ」の可能性があった。

一方、足下の米ドル・ポジションは2月に売り越しが21万枚まで拡大するなど、一時は2024年とは逆の「売られ過ぎ」となっていた。3月10日時点でもなお6万枚の売り越しが続いていた。

以上のように見ると、2024年の160円を超えた米ドル高・円安は、投機筋の円が「売られ過ぎ」、米ドルが「買われ過ぎ」の中で起こったものだった。「行き過ぎ」という意味では、さらなる円売り、米ドル買い余地は、すでに限られていたのかもしれない。これに対して足下は、円のポジションは「売られ過ぎ」ではなく、米ドルのポジションはむしろ売りに傾斜している可能性がある。つまり、投機筋の円売り・米ドル買いの拡大余地は大きい可能性がある。その場合、通貨当局の米ドル売り・円買い介入でそれを止めるのはかなり困難ではないか。

5年MAかい離率=2024年7月は3割、足下は15%

2024年に160円以上の米ドル高・円安を記録した局面と足下のもう1つの大きな違いは、中長期の移動平均線だ。5年MA(移動平均線)は、米ドル高・円安がこの間のピークである161円を記録した2024年7月には125円程度だった。一方、足下では140円程度と、まだ2年も経過していない中で15円程度と大幅に上昇した(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と5年MA(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この結果、当然同じ160円でも5年MAとの関係は2024年と足下では大きく異なっている。2024年7月の160円は5年MAを約3割と大幅に上回るものだったが、足下の160円は5年MAを15%程度上回っているに過ぎない(図表4参照)。

【図表4】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

なお、2024年7月に5年MAを15%上回る水準は144円程度という計算になる。2024年7月当時、144円程度の米ドル/円に対して米ドル売り・円買い介入を行うと考える人は皆無だっただろう。足下の160円は、5年MAとの関係で見ると、そうした状況にある。