モトリーフール米国本社 – 2026年3月9日 投稿記事より

マイクロソフトの強力な人工知能(AI)エコシステムは、急速に拡大しているエージェント型AI市場において、同社を最大の勝者の一つにする可能性があります。

拡大するエージェント型AI市場とマイクロソフト[MSFT]の先行ポジション

人工知能(AI)は、まもなくチャットボットの段階を超え、自律的なソフトウェアエージェントがユーザーに代わって計画を立て、推論し、複雑なタスクを実行する「エージェント型AI」という新しい時代へ移行する可能性があります。マーケットアンドマーケッツ(グローバル市場調査会社)の推計によると、世界のAIエージェント市場は2024年の約52億ドルから2030年には526億ドルへと成長する可能性があり、今後数年間でほぼ10倍の拡大が見込まれています。

大手企業がこぞってカスタマーサービス、ソフトウェア開発、業務運営といった様々な分野で、これらエージェントの導入を急いでいる一方で、マイクロソフト[MSFT]はすでに他社をリードしているように見えます。ここでは、その理由を説明します。

マイクロソフトのAI戦略を支える3つのレイヤー

2026年度第2四半期の決算説明会において、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは同社のAI戦略は3つのレイヤーで構成されていると説明しました。1つ目はAIモデルを稼働させるクラウドインフラ、2つ目はAIエージェントを構築するためのプラットフォーム、そして3つ目はそれらのエージェントが導入される高付加価値アプリケーションです。つまり、マイクロソフトはAIエージェントの構築から運用に至るまであらゆる要素を自社でコントロールすることを目指しています。

この戦略の基盤となるのが、マイクロソフトの巨大なクラウドインフラです。第2四半期において、Microsoft Cloud部門の売上高は前年同期比26%増の515億ドルとなり、Azureおよびその他のクラウドサービス(Microsoft Cloudの一部)の売上は前年同期比39%増となりました。これらのインフラにより、マイクロソフトはAIモデルのトレーニングや、大量のAIエージェントを大規模に稼働させるために必要な計算能力を確保しています。

マイクロソフトはさらに、より少ない計算能力とエネルギーでより多くのAIタスクを処理ができるよう、クラウドインフラの最適化を進めています。エージェント型AIでは大量のAIクエリが生成される可能性があり、それらの処理には大きな計算能力が必要となるため、こうした効率改善は重要です。

AIエージェントを支えるマイクロソフトのプラットフォームとアプリケーション

インフラに加えて、マイクロソフトはAIエージェントを活用するためのプラットフォームも構築しています。例えば「Azure AI Foundry」は企業がAIアプリケーションを構築・展開するのを支援するサービスであり、「Microsoft Fabric」は企業データを整理・分析するための統合データプラットフォームです。これらのプラットフォームを通じて、企業は複数のAIモデルの中から選択し、AIモデルを企業データに接続し、外部ツールやワークフローを連携させたりすることができます。また、AIアプリケーションやエージェントを構築・カスタマイズし、実際に運用することも可能になります。

マイクロソフトでは、これらのサービスの導入が力強く進んでいます。Fabricは31,000社を超える顧客を抱え、年間売上換算(ランレート)は20億ドルを超えました。また、Foundryに四半期あたり100万ドル以上を支出する顧客数は、第2四半期末時点で前年同期比80%近く増加しました。

さらにマイクロソフトは、数百万人の従業員や開発者が利用する高付加価値アプリケーションでもエージェント機能を活用しています。「Microsoft 365 Copilot」や「GitHub Copilot」(AIコーディングアシスタント)といった製品を利用することで、ユーザーは文書作成、データ分析、コード生成、ワークフロー自動化などの作業を行う際に、使い慣れたツールの中でAIエージェントを直接利用することができます。第2四半期末時点で、Microsoft 365 Copilotの有料シート数は1,500万に達し、GitHub Copilotの有料契約者数は470万人となりました。

企業での導入が加速しているCopilot

大企業では、マイクロソフトのエージェント型AIツールの採用がますます進んでいます。Fortune 500企業の80%以上が、AIエージェントを作成および導入するためのマイクロソフトのローコードツールである「Copilot Studio」および「Agent Builder」を使用してエージェントを構築しています。さらに、企業によるCopilotの大規模導入も進んでおり、第2四半期末時点で35,000シート以上Copilotを利用している顧客数は、前年同期比で3倍に増加しました。つまり、AIアシスタントは試験的な導入段階を過ぎ、企業のテクノロジースタックに組み込まれ始めているのです。

企業がCopilotやその他のツールを通じてより多くのエージェントを導入するにつれて、Azureのコンピューティング容量や、Azure AI Foundry、Fabricに対する需要も増加します。そのため、エージェント型AIの導入拡大は、マイクロソフトのクラウドエコシステム全体にとって大きな追い風となる可能性があります。

エージェント型AIの可能性を支える強固な基盤

マイクロソフトは、世界で最大規模かつ最も収益性の高いテクノロジー企業の一つです。第2四半期の売上高は前年同期比17%増の813億ドルとなり、1株当たり利益は前年同期比24%増の4.14ドルとなりました。営業利益も前年同期比21%増の383億ドルとなり、同社の中核事業の強い収益性を浮き彫りにしました。

さらに同社は、第2四半期末時点でバランスシート上に約895億ドルの現金を保有しています。そのため、AI関連の成長戦略に投資するための十分な財務的柔軟性を備えています。

こうした強みがあるにもかかわらず、マイクロソフトの足元の株価収益率(PER)は利益の25.7倍で取引されており、過去3年間の平均である33.7倍を大きく下回っています。つまり、同社のバリュエーションは、まだ利益を上げていない多くの小規模AI企業よりも、はるかに妥当な水準で取引されていると言えます。

もしエージェント型AI市場が予想されるペースで成長を続ける場合、インフラ、プラットフォーム、アプリケーションのすべての領域で強みを持つマイクロソフトは、こうした成長機会から大きな恩恵を受けるでしょう。そのため、急速に成長しているエージェント型AI市場への投資機会を求める投資家にとって、マイクロソフトは魅力的な銘柄と言えるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Manali Pradhan, CFAは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。