先週(3月2日週)のS&P500は2%下落、NYSE FANG+指数は+3.79%上昇
先週(3月2日週)のS&P500は途中でリバウンドする場面もありましたが、週間では最終的に2%下落し、ナスダック100も1.27%の下落で終えました。一方、これまで売られてきたS&P500ソフトウエアセクターは先週+6.28%上昇、同じくこのところ不調だったNYSE FANG+指数も+3.79%上昇しました。
地政学的な緊張が高まり原油が急騰している中で、株式市場が想像以上に底堅いのは、投資家がすでに「不確実性の一部」を価格に織り込み始めているからでしょう。
歴史的にも、米国株は悪材料が連続する局面で底を打ちやすく、直近の値動きは「売り圧力のピークは過ぎつつある」という見方を後押ししています。実際、ネガティブな見出しが続く中でも市場が反発できているのは、過去にしばしば観察された「侵攻局面では買う(buy the invasion)」というパターンと整合が取れます。
だからこそ、3月は上げ月になりやすいという見立ては、地政学リスクが強まっている状況でも完全には崩れていない感じがします。
イラン戦争による「不確実性」が原油に影響、インフレ懸念や利下げ期待などへの影響も
もっとも、3月に入ると本来なら「四半期末に向けて材料が減り、市場が落ち着きやすい季節」に入るはずでした。ところが現実は逆で、米国とイスラエルによるイランへの大規模攻撃が、投資家のフォーカスを一気に地政学へ引き戻しました。
はじめは「イランが水面下で和平ルートを探っている」といった観測もありましたが、時間の経過とともに状況は悪化し、「短期で終わる見通しは薄い」という空気が強まっています。へグセス米国防長官は「8週間続く可能性」に言及。エネルギー長官がガソリン価格の不安を抑えようとするなか、トランプ米大統領は「無条件降伏なしに終戦合意はない」と強硬なメッセージを発したのです。
さらに米中央軍が、少なくとも100日規模(9月頃まで)の作戦継続を想定しているという報道も出ました。市場が恐れたのは「戦争そのもの」というより、「どれだけ長引くのか分からない」という期間の「不確実性」です。
その不確実性が最も分かりやすく表れたのが原油でした。ホルムズ海峡での物流停滞が懸念され、世界の原油の約5分の1に加え、天然ガスや肥料など重要物資が通る要衝へのリスクが再燃しました。
結果として3月2日週にはWTI・ブレントは90ドル台へ上昇しました。湾岸産油国側からは「タンカーが通れなければ生産停止に追い込まれ得る」「150ドルもあり得る」といった強い警告も聞こえます。原油高が長引けば「インフレ懸念、利下げ期待の後退、株価バリュエーションの抑制」という形で、じわじわ効いてきます。
原油が上がったコストを「価格転嫁」できるかどうかが企業を左右
先週(3月2日週)の市場内のセクターの動きは、この因果関係をそのまま映しました。原油が上がればエネルギーが強くなり、地政学リスクが意識されるほど防衛関連にも資金が向かいやすくなります。その一方で、燃料費が直撃する航空・運輸、家計の可処分所得が削られやすい一般消費財には逆風が吹きます。
ここから先は、同じセクター内でも差がつきます。上がったコストを価格転嫁できる会社は耐えられますが、転嫁できない会社は利益率で飲み込むしかありません。この一点が、今週(3月9日週)以降の勝ち負けを左右するでしょう。ガソリン、軽油、ジェット燃料の値動きが荒くなるほど、投資家は「現実のコスト」が決算コメントにどう反映されるかを待つことになります。
相場を難しくしている金融政策の行方は?
さらに、相場を難しくしているのが金融政策です。弱い雇用指標が出れば、本来は「FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げしやすい」という話になります。しかし、原油高がインフレ再燃の種をまくと、利下げはインフレを刺激しかねません。逆に据え置けば景気減速を放置する形になる。つまりFRBは「救済に駆けつける」カードを切りにくい局面に入りました。
株式にとって厄介なのは、景気が鈍るのにインフレが粘って金利が下がりにくい状態で、これは市場が最も嫌う組み合わせの一つです。利下げを進めたがっているトランプ米大統領にとっては、自ら巻いた皮肉な種です。
今週(3月9日週)のマーケットは「中東情勢による供給制約」「企業のコメント」「AI」がポイントに
今週(3月9日週)のマーケットを考える上でのポイントは3つです。第1に、中東情勢が実際の原油供給制約へ発展するかどうか。ホルムズ海峡の通航リスクが続けば、原油高止まりが現実味を帯びます。
第2に企業のコメントです。燃料・輸送・原材料の上昇に加え、関税などのコスト圧力が影響し始めるのか。「顧客に転嫁できる会社」と「マージンが削られる会社」の線引きが進むほど、株価の分岐は鮮明になります。
第3にAIです。地政学で市場全体が揺れる局面でも、AI関連銘柄へ資金が引き続き戻るかを見れば、AIの「実需」が続くかが見えてきます。
先週(3月2日週)、これまで売られてきたソフトウェアやマグニフィセント7、FANG+と呼ばれるメガキャップのIT銘柄が上昇したのは、近く底打ちして資金が戻る(ローテーションバックする)サインかもしれません。潤沢なフリーキャッシュフローが、こうした不安な局面での「下支え」になったのでしょう。「質への逃避」という考え方が出てきたのかもしれません。
