人生の後半戦であるシニア世代になると、多くの人のお金の関心は「いかにお金を減らさないか」という守りの資産運用に集中しがちです。

しかし実は、節約して資産を減らさないようにすることよりも、「お金をどう使うか」を考え、資産を計画的に減らしていくことの方が、人生の満足度を高めます。それに気づいている人は意外と少ないものです。

お金は使わなければただの紙切れです。そう考えれば生きている間にお金の有意義な使い方を考えることの大切さが理解できるでしょう。

「増やす」から「キャッシュフロー」へのパラダイムシフト

シニア期に入ると、資産を増やすことよりもむしろ、「いつ、どのくらいのペースで使っていくか」を考え、運用しながら取り崩していく意識を持つ必要があります。

資産が右肩上がりに増えていくことに慣れた人にとって、減ることへの恐怖があることは理解できます。でも、減らすことを恐れ過ぎて無駄なお金を残して人生を終える方が、お金の無駄使いとも言えます。

年金や保険に加え、債券や不動産などからのインカム収入を確保しながら、足りないお金については資産を売却していくことで、自分に必要なキャッシュフローを作っていきます。

日本人は「死ぬ瞬間が一番お金持ち」と揶揄されることもあります。過剰な節約を続けるのではなく、お金の計画的な使い方を積極的に考える頭の切り替えが必要です。

「経験」への投資は早くやっておく

お金をかけて経験をするというと旅行や外食などがその典型です。早いうちにそのような経験にお金を使うことで、その後の人生を、思い出によって豊かにできます。

若いうちの旅行とシニアになってからの旅行では、身体的な自由度も感性も異なります。年齢が高くなると海外旅行に行ける体力も無くなってしまい、出かけるのも億劫になってしまいます。あるいは、年齢が高くなれば高級レストランに出かけても、食欲も落ちてきてアルコールもあまり飲めなくなります。食事やワインなどを充分に楽しむなら若いうちです。

60代と80代でできることには大きな違いがあります。同じ経験をするならできるだけ若いうちにしておきたいものです。

健康への先行投資は惜しまない

健康は豊かな生活の土台になるものです。また、健康を維持することで、将来の医療費や介護費を抑えることにもつながります。先行投資として健康への支出は惜しむべきではありません。

例えば、歩きやすい靴や自転車を購入したり、パーソナルトレーニングの指導を受けたりします。このようなコストは将来の健康を失う損失に比べたら小さなものです。また食生活でも、ファストフードやレトルト食品に偏らず、材料を吟味して食事をとることが健康維持に貢献します。さらに、人間ドックや胃腸の内視鏡検査などの健康チェックには、生活習慣病などを未然に防ぐ効果もあります。定期的に受けておくべきでしょう。

「健康は失ってみて初めてその価値に気づく」と言われます。病気になる前にそれを予防する方が、クオリティ・オブ・ライフを高めます。

人のためにお金を使う喜び

お金を自分のためだけではなく、周りの人のために使うことを、シニアになったら始めておくとよいでしょう。

募金や寄付をするだけではなく、周りにいる次の世代の人たちに経済的なサポートを行うのも有意義なお金の使い方です。アーティストの支援や応援したいスタートアップ企業に出資するといった使い方です。

遺産として残しても、そのお金がどのように使われるのかはわかりません。しかし生きているうちにお金を使えば、相手から感謝の気持ちを受け取ることができ、自分のお金が有意義に使われたことを見届けられます。

人が幸せになるのを助けることによって、自分が幸せを感じる。これは円熟したシニアならではの楽しみといえます。

後悔しないための「ゼロで死ぬ」準備

ビル・パーキンスは著書『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』の中で、「人生で一番大切なのはどれだけお金を貯めたかではなく、どれだけその時々にしかできない経験にリソースを割いたかである」と説いています。

シニアになってもお金の増やし方を考えることは、もちろん安心材料にはなります。しかし、それ以上に自分のお金をどのように有効に使うかを問い続けることが、豊かな老後を実現するために大切ではないかと思います。

お金は墓場まで持っていけません。それを理解したとき、お金の使い方は、より創造的で温かいものに変わっていくはずです。「DIE WITH ZERO」は現実的には難しいとしても、お金を残さず有意義に使って少しでも悔いのない人生を全うしたいものです。