現在のファンダメンタルズ:弱い雇用の数字による米ドル売り
先週(9月1日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 146.786円~149.133円 146.958円
・ユーロ/米ドル:1.16081ドル~1.17590ドル 1.17206ドル
・ユーロ/円: 171.779円~173.410円 172.749円
先週(9月1日週)の米ドル/円:非農業部門雇用者数6月改定値はマイナスに
先週(9月1日週)は、週明けは動意薄のスタートとなったものの、9月2日に氷見野日銀副総裁の挨拶が追加利上げに慎重と取られたこと、更に自民党幹部が相次いで辞意を表明したことを受け円安に振れました。9月1日終値は147.169円でしたが9月2日高値は148.940円まで上伸後、やや押して引けました。
翌9月3日は改めて米ドル買いが強まり欧州市場序盤には週刊高値となる149.133円をつけました。しかし週末の米国雇用統計を前に利食いも出て、またNY市場では予想より弱いJOLTSに反応し反落しての引け。翌9月4日は全般的に米ドル買いが強まり、9月5日には売られ、方向感がはっきりしない展開が続いた状態で雇用統計発表を迎えました。
米雇用統計は前月より悪化
雇用統計は失業率が4.3%と予想通りとはいえ前月から悪化、非農業部門雇用者数は予想を大きく下回る+2.2万人、また6月改定値はマイナス1.3万人とコロナ禍以来のマイナス(減少)となり、コロナ禍の時期を除けば2010年以来と15年ぶりの悪い数字でした。この発表を受けて米金利は低下、米ドルは大幅安となり米ドル/円は146.817円まで下げたものの、9月1日安値は割り込まず、147円に近づいての引けとなりました。
雇用統計後にFF先物の取引状況から算出される利下げ折り込み度は9月0.25%で変わらないものの、年内の利下げ回数は2回から3回へと増える結果となりました。FOMC(米連邦公開市場委員会)前にはCPI(消費者物価指数)の発表もありますが、0.25%利下げを完全に織り込んだ状態で迎えることとなるでしょう。
石破首相の退陣表明で週明けは円売りスタート
そして週末9月7日夕方、石破首相は9月8日の臨時総裁選の是非を問う投票を前に辞任の意向を固めました。会見では新総裁を選ぶ手続きの実施を幹事長に伝え、自身は立候補しないとしました。参院選での大敗後、日米関税交渉に一区切りが付いたことから然るべきタイミングと判断したことになります。
これを受け週明け9月8日早朝の円相場は、政局が当面は不安定になりやすいとの見方から円売りの動きで始まっています。ただ、年内にFRBが3回利下げ、日銀は1回利上げとなると日米金利差が1%も縮小することになります。長期的な米ドル/円の下げ相場が継続しやすいことを考えると、円安が大きく加速することもないとみています。
先週(9月1日週)のユーロ/米ドル:狭い値幅で行って来い
先週(9月1日週)のユーロ/米ドルは、基本的に米ドル/円と同じような動きをたどりました。9月2日の米ドル買いの動きでユーロ売りの動きとなり、翌9月3日に週間安値となる1.16081ドルをつけた後は買い戻し、米国雇用統計を1.16ドル台後半で迎えました。
雇用統計後の米ドル売りの動きでユーロ/米ドルは週間高値を更新し、1.17590ドルをつけていますが、週を通してみるとユーロ/米ドルだけでなくユーロ/円も底堅い動きが続き、173円台前半を4回トライしましたが常に反落する動きとなりました。
欧州関連では9月8日にフランスで内閣の信任投票が行われます。現状では総辞職につながる可能性が高く、その場合政局が不安定になり債券市場ではフランス売り、為替市場ではユーロ売りという流れが強まる可能性があります。
米ドル/円チャート(週足)、引き続き上値は重いが今週は節目
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、先週(9月1日週)も米ドル高の流れ、7月28日週のトンカチ(上ヒゲが長く実体が短い)以降の上値が重たい流れともに変化はありません。トライアングル(黄色)の中でレジスタンスが効いている点が長期テクニカルでは最も気にしておくべき点だと考えます(図表1)。ただ週明けの円安の動きで今週(9月8日週)もこのレジスタンスラインを試す流れで始まりました。今週末の終値がどの水準で引けるのか、重要な節目になってきました。
短期的には日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、ゴールデン・クロス状態が続く
短期的な判断は日足で行います。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
米ドル/円は8月29日時点で発生したゴールデン・クロス(GC)状態が続いています(図表2)。先週執筆時点ではデッド・クロスに転じる可能性も考えましたが、そうはならずに現在まで米ドル買いシグナルが点灯したままです。9月5日の雇用統計で下げた分を9月8日日早朝に行って来いで全戻ししたため、このGC状態が続いている限りは底堅いと判断せざるを得ないでしょう。
ファンダメンタルズ的には米ドルは弱いのですが、そこに日本円も弱いという材料が加わったことでテクニカルには青のラインで示した平行上昇チャンネル内での動きが当面のメインシナリオという感じです。
ユーロ/米ドルは高値圏でのもみあいが続く
ユーロ/米ドルのチャートを見ていきます。
週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持し、3月以降の上昇ウェッジの中で緩やかな上昇トレンドを継続しています。雇用統計で1.17ドル台に乗せて引けましたが1.17ドル台は何度も反落させられていること、フランスでの政局不安からも今回もまた反落する可能性もあり、米ドル/円同様に米ドルとユーロとの弱さ比べの一週間になりそうです。
日足チャートもご覧ください(図表4)。先週は短期的にゴールデン・クロスとデッド・クロスが入れ替わる状態が続いていることから「もみあい」という判断をしましたが、相変わらずこのもみあい状態は続いています。青のレジスタンスラインと黄色のサポートラインとどちらに抜けるのか、先週末の動きでレジスタンスラインを上抜けしようとしている状態です。その場合、上側のラインは緑のラインとなり黄色のラインとともに上昇ウェッジを形成しますが、少なくとも本日のフランスでの不信任がどうなるかを見てから動くべきかと思います。
ユーロ/円は7月高値をトライ中
ユーロ/円です。
ユーロ/円は7月28日週の大陰線の足の中での動きが続いていましたが、週明け円安の動きでこの週の高値を一時的とはいえ上抜ける動きとなってきました。欧州通貨が全般的に対円で強い動きとなってきていることもあり、改めて2024年高値を試しやすい地合いにあります(図表5)。
日足チャート(図表6)では8月26日のゴールデン・クロス状態を維持しており、今朝9月8日はギャップアップして始まったこともあり、175円の大台を試しやすい流れになってきたといえます。ユーロ/米ドルと違いユーロ/円は双方とも政局が流動的という同じ悪条件を持っているため、一番買いやすい通貨という見方になっているようです。ただフランスと異なり日本では自民党新総裁が新首相となる流れなので、比較的早い段階で落ち着きを取り戻すはずです。そうなると、ユーロ/円も2025年7月高値と2024年高値との間が売り場になってくる可能性も高いでしょう。
9月16・17日のFOMCを前に今は巻き返しの動きとなっていますが、個人的には本流は米ドル安の中、その時々の材料で主要通貨の強弱が変化するという見方でいます。
それでは今週も良いトレードを!
