「配当取り」=配当の受け取りを狙った短期投資
3月の年度末が近づくと、「配当」が気になる方も多いでしょう。2026年で言えば、3月27日(金)の権利付き最終日までに株式を保有していれば、3月末の権利確定日に株主として記録され、配当を受け取ることができます。一方、翌営業日の3月30日(月)は「権利落ち日」となり、この日に株式を取得しても配当を受け取ることはできません。そのため理論上は、受け取れなくなった配当相当額だけ株価が下落することになります。
この時期には、配当の受け取りを狙った短期投資、いわゆる「配当取り」も注目されます。権利付き最終日までに株式を保有し、配当を確保したうえで権利落ち後に売却するという戦略です。同様の考えを持つ投資家が増えれば、権利付き最終日にかけて株価が押し上げられ、その反動が権利落ち日に生じやすくなる可能性もあります。
では実際に、高配当利回り銘柄は権利付き最終日前後でどのように推移しているのでしょうか。本稿では過去データを用いて、その値動きの特徴を検証しました。
権利付き最終日に向けて株価はどう動く?
図表1は、2025年3月27日の権利付き最終日前後における高配当利回り銘柄の平均的な株価推移を示したものです。流動性を考慮し、TOPIX500指数構成銘柄のうち3月期決算企業を対象に、2025年2月末時点で予想配当利回りが4%以上の銘柄を抽出しました。それらの配当収益込みベースの株価を、権利付き最終日を0として指数化し、平均した推移を算出しています。
高配当銘柄は権利取り局面で相対的にもアウトパフォーム→アンダーパフォームする傾向
赤線は対象銘柄の累積リターンです。権利付き最終日に向けて株価は緩やかに上昇しており、配当取りを意識した買い需要が株価を押し上げている様子がうかがえます。その後は権利付き最終日通過とともに下落に転じています。
青線は、母集団であるTOPIX500構成銘柄全体の平均株価と比較した累積超過リターンです。絶対リターンと同様に、権利付き最終日に向けて超過リターンが拡大し、その後は縮小する動きが確認できます。すなわち、高配当銘柄は権利取り局面で相対的にもアウトパフォームし、その後はアンダーパフォームする傾向が見られました。
なお、権利付き最終日後の下落は単なる「配当落ち」を示しているわけではありません。本分析は配当収益込みで算出しているため、配当分はすでにリターンに反映されています。それでも下落しているということは、配当取りを終えた投資家の売却需要が株価の重しとなっている可能性が示唆されます。
毎年同じ動きになるのか?過去5年の検証結果
2025年以外の年においても、高配当利回り銘柄は権利付き最終日に向けて株価が上昇し、その後下落する傾向が見られるのでしょうか。これを確認するため、図表2では2021年から2025年までの5年間について、同様に権利付き最終日前後における予想配当利回り4%以上の銘柄の株価推移を算出し、その平均を示しました。
分析の結果、赤線の対象銘柄の累積リターンを見ると、図表1と同様に、権利付き最終日に向けて株価が緩やかに上昇し、その後は下落に転じる傾向が見られます。また、青線で示した超過リターンも概ね同様の傾向が見られました。すなわち、絶対リターン、超過リターン共に、一定の季節性が観察される結果となりました。
季節的パターンが機能しにくくなる局面とは?
もっとも、こうした動きが毎年必ず発生するわけではありません。2023年3月は例外的な年でした。当時、米欧で銀行破綻懸念が高まり、信用不安が世界的に拡大した影響で株式市場全体が不安定となり、高配当利回り銘柄も権利付き最終日に向けて上昇するどころか下落する展開となりました。株価の下落によって、表面的には配当利回りが高まる銘柄が増えましたが、それは企業業績や配当の持続性に対する不安を織り込んだ結果でもありました。
したがって、高配当銘柄の予想配当の確実性に不安が生じる局面では、例年見られる季節的パターンが機能しにくくなる点には留意が必要です。
足元は中東情勢不安など地政学リスクの高まりを背景に、相対的にディフェンシブな銘柄への物色が意識されやすい環境にあります。こうした局面では、保守的な投資対象と位置付けられる高配当利回り銘柄への需要が高まりやすく、権利付き最終日に向けた堅調な推移が期待される可能性もあります。
なお、高配当利回りを軸とした投資戦略については、本連載2月25日付の記事「『総還元利回り』で探す魅力的な銘柄の見つけ方―日本郵船(9101)など参考銘柄6選も」にて、総還元利回りを組み合わせた銘柄スクリーニング手法を詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
