14年のブランクを経て2020年に投資に再チャレンジし、その後4年で1億円超の資産を築いたトミィ@NISA芸人さん。投資を始めたきっかけや、過去の失敗経験とそこから学んだこと、NISAを活用して資産を築くためのポイントや注意点をうかがいました。
●トミィ@NISA芸人さんプロフィール●
IT関連上場企業の管理職サラリーマン。2005年に最初の投資をスタート。2006年にライブドアショックで市場から退場するも、2020年からNISAと日本・米国株投資を再スタート。2023年末には再スタート4年で億越え資産を築く。2020年にX(ツイッター)アカウントを開設し、米国株やNISAに関する情報を発信。現在フォロワーは約5万人。質問箱では投資やNISAについて分かりやすく回答し、好評を得ている。2024年3月に書籍『図解でよくわかる!新NISAがすべてわかる本』(ソーテック社出版)を上梓。
20~30代は「自分に投資」し、仕事に邁進
――トミィ@NISA芸人さん(以下、トミィさん)が株式投資を始めたきっかけとこれまでの投資経験を教えてください。
最初に投資を始めたのは2005年です。当時はIT関連の仕事をしていたこともあり、昼休みにパソコンで、個人投資家の間で注目されていたデイトレードで投資をしていました。少しずつ貯金が増え始めた頃で、自由に使えるお金のうち200~300万円ほどを投資しました。
ところが、2006年にライブドアによる粉飾決算で相場全体が大幅に落ち込み、私が投資していた銘柄も暴落に巻き込まれ、大きな損失を出し、株式投資からは身を引きました。その後当時流行っていた「和牛オーナー制度」に投資していました。しかし、2011年にその会社が経営破綻し、そこでも大きな損失を出すことになりました。
これらの経験もあり、「仕事を頑張って、自身の力をつけよう」と考え、自分に投資することに力をいれました。その後は仕事に邁進し、語学学習にも力をいれました。その甲斐あって転職することができ、海外での経験を積むこともできました。なお、海外に住んでいた期間は、投資できない環境にあったため、投資はしませんでした。
「外貨のまま、米国株に投資しよう」と投資を再スタート
――2020年に投資を再開されたきっかけや原動力は、何だったのでしょうか。
海外から帰国した時に外貨を持っていたことがきっかけですね。日本円に両替して、日本円で貯金したところで、超低金利ですから増えません。また、当時米国株が注目されていたこともあって、「外貨のまま、米国株に投資しよう」と考えました。
海外出向の後半は単身赴任だったため、現地で貯めたお金のことを家族には知らせていませんでした。そのため、「自身でコントロールできるお金だ」という少し軽い気持ちもあったのだと思います。また、同じ頃、妻が桐谷広人さんの株主優待生活を紹介するテレビ番組などを見て、日本株の株主優待銘柄に興味を持ち始めていました。
その後、新型コロナウィルス感染拡大で株価が暴落するコロナショックが起きました。「これはチャンスかもしれない」と思い、少しずつ投資を始めました。NISAもコロナショックが起きた2020年2月にスタートしています。当時はNISAに詳しかったわけではなく、非課税でお得だから使ってみようという感覚で始めました。
――投資を再開した当初はどのような心境でしたか。また、何か投資戦略はあったのでしょうか。
投資を再開した時は、まだコロナショックで相場の底が見えない状態でしたし、私自身のリスク許容度も高くありませんでした。
そのため、相場環境が変化すると、つみたてNISAの枠いっぱいでの月々3万3,000円の積立投資ですら、不安になって1万円に減らしたこともありました。当時は、2006年のライブドアショックで暴落を経験したことがトラウマになっていたのだと思います。それでもなんとか改めて月々3万3,000円のつみたてNISAを続けながら、並行して高配当株投資を始めることにしました。YouTubeで高配当株投資のことを知り、「配当を受け取ることで、少しでもメンタルを安定させよう」と考えたのです。
――それで高配当株への投資を始められたのですね。
そうです。まずは、毎日コツコツと米国高配当ETFと日本高配当個別株を1株単位で買うことにしました。ところが、2020年6月に高配当株よりもグロース株のほうが、株価の回復が早いことに気づいたのです。そこで「インカムゲイン(配当金)よりも、キャピタルゲイン(株価の上昇)をねらったほうが良いのではないか」と考え、それまでに買い集めた米国高配当ETFを、すべてナスダック100やS&P500など米国の代表的な指数をベンチ―マークとするETFにスイッチしました。
また、帰国後、職場でDC(企業型確定拠出年金制度)が導入され、ひとまずバランス型ファンドで運用していたのですが、それも同じタイミング(2020年6月)で100%先進国株式を投資対象とするインデックスファンドにスイッチングしました。
コロナショックの時に投資を再開し投資の勉強を続けたことでマネーリテラシーが向上するとともに、リスク許容度も高くなったのだと思います。
NISAに加えて、毎日2万円ずつの積立投資も開始
――2021年からは、毎日2万円ずつの積立投資も始められたそうですね。
はい。さらなる株価の上昇を期待して、FANG+(メタ・プラットフォームズ(旧フェイズブック)[META]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、ネットフリックス[NFLX]、アルファベット(グーグル)[GOOGL]の4社を含む、米国上場企業10銘柄で構成された株価指数)と、ナスダック100に連動する投資信託をメインに、それぞれ毎日1万円ずつ積み立てていました。1ヶ月に2銘柄で40万円ずつ投資する計算になりますが、株価が下落したタイミングで40万円をまとめて投資しようとしても「まだ下がるのではないか」と思ってしまい、なかなかまとめて買うに至らず。そこでそれぞれ毎日1万円ずつ、積立投資することにしました。
この積み立ては2022年まで続けたのですが、資産が大きくなると積み立てによる効果も薄れてくることに加え、2023年からは子どもの教育費支出が増えたこともあって、最低限の積立投資のみになりました。しかし、今振り返ると、2022年に株価が低迷しているときの積立が、2023年の大きな資産拡大に貢献してくれたのだと思います。
新NISAでは成長投資枠で日本の高配当株に投資
――2024年から新NISAがスタートしました。トミィさんが新NISAで実践されている投資戦略と、現在のポートフォリオについて教えてください。
「興味をもった投資はなんでもやってみよう」という考えで投資を再開したので、債券以外はほぼすべての種類の資産を保有していました。実際に買って保有してみないとメリットやデメリットを人に伝えることができないと思うためです。いろいろな資産に投資した結果、最終的に自分自身に心地良いバランスになったのが現在のポートフォリオ(下図参照)です。
現在のポートフォリオには一部の日本株を除いて「高配当株」がありません。また、資産の70%が外国株です。日本国内で働いて、日本円で給料を得ている間は、現在の配分(外国株70%、日本株30%)で良いと考えています。とはいえ、将来リタイアした後のことを考え、日本円の配当金を受け取れるようにしたいと思っています。
そのため、資産の拡大は現在保有している資産と新NISAを利用した、つみたて投資枠での積立投資(米国の主要株式指数に連動するインデックスファンド2種類を半々)をコアとして、成長投資枠では日本の高配当株に投資したいと思っています。
なお、米国株式の配当金はまず米国で10%の税金が差し引かれた後、差し引かれた金額に対して日本で20.315%が課税されます。課税口座(特定口座や一般口座)で投資した場合には、確定申告することで外国税額控除を受けることが可能です。しかし、NISA口座で投資した場合には日本で課税される20.315%はかからないものの、外国税額控除を受けることができず、10%の税金が差し引かれてしまいます。
そう考えると、NISA口座では日本の高配当株に投資したほうが、税金面でも得になると思っています。現在のポートフォリオは、外国株が70%なので今後は日本の高配当株に投資することが分散を図ることにも繋がると思っています。
――新NISAでの投資方針は、どうお考えでしょうか?
はい。新NISAの成長投資枠では日本の高配当株、つみたて投資枠ではインデックスファンド(米国の主要な株価指数(S&P500とNASDAQ100)に連動する投資信託2種類)に投資し、最短の5年で非課税投資枠を埋める計画を立てています。
ただし、これはあくまで現段階での計画です。他に投資妙味のある投資信託や株式が出てきたり、マーケットで暴落が起きたりした場合は、変更する可能性があります。
現状では、米国株の「マグニフィセント・セブン(アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA])に分散投資する投資信託や、半導体関連の30銘柄で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)に連動する投資成果を目指すインデックス投信などにも注目しています。
――株式投資を再スタートされてから創意工夫されたことや経験値を積まれたことを教えてください。
中小型のハイテク個別株が大きく下落したことで、損切りの重要性を思い知らされました。その経験から、何パーセント下落したら損切りするなど、自分なりのルールを設けてきちんと実行することが大切だと思っています。
ただし、全銘柄に同じルールを適用する必要はないとも考えています。長期投資が前提なのか、短期売買なのか、何度かに分けて買っていくものなのかによって、ルールを変えるなどの工夫は必要でしょう。私の場合は、損切りをした結果、大型ハイテク株の個別株が残り、それが大きく上昇して資産の増加に貢献しました。
といいつつ、下落時にどうしても損切りできなかった銘柄もあります。その評価損益は-80%でしょうか。反省材料として、現在も塩漬けしています。
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※本インタビューは2024年4月18日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。