回復基調のJ-REIT市場、コロナ禍前の水準には至らず
J-REIT(上場不動産投資信託)市場が回復基調にある。東証REIT指数は11月に入って2,000ポイントを回復した。これは2022年9月以来のことである。景況感の改善によるオフィス賃料や住宅賃料の上昇が背景となっている。金利上昇は調達コストの増加につながるが、賃料の上昇がこれを上回っているため分配金の向上が期待されている。高市内閣の経済成長戦略も追い風だ。
ただ、日経平均株価が過去最高値を更新したのに対し、東証REIT指数はコロナ禍前の2019年10月の最高値2,262ポイントを抜けていない。さらなる評価の向上には「外部成長」が必要との見方が出ている。
J-REIT分配金増加のために必要な「内部成長」と「外部成長」
REITは多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなどに投資し、基本的には家賃収入を投資家に分配する商品。上場しているREITを非上場と区別するために「J-REIT」と呼ぶ。
J-REITにはオフィスビル特化型、レジデンシャル(住居賃貸)特化型、物流施設特化型、ホテル特化型のほかに、いくつかを手掛ける複合型、すべてを手掛ける総合型などがあり、現在58銘柄が上場している。収益の大半が投資家に分配される仕組みで、実物不動産に比べ小口で投資できる点が魅力となっている。
REITの分配金を増加させるには大まかに「内部成長」と「外部成長」がある。内部成長は保有物件の賃料上昇によるもの。また、ポートフォリオ(物件)の入れ替えで改善させるケースもある。一方の外部成長は資金調達をして、新規の物件を購入することで規模の拡大を図るもの。借入れで調達することもあるが金利上昇下ではPO(公募増資)が一般的だ。REITの分配金増にはこの2つの成長をバランスよく進めることが重要となる。
PO(公募増資)実施基準となるNAV(純資産価値)倍率も上昇傾向
このうち、外部成長が生かせていない。POを行うには、株式市場で使われるPBR(株価純資産倍率)に相当するNAVが1倍を超えていることが原則的に必要となるためだ。1倍割れは解散価値を割り込んでいるので割安ということになるが、REITではこの状態では基本的にPOができない。既存の投資家からの理解が得にくいためだ。1倍割れのディスカウント増資は既存投資家のエクイティ価値を毀損し、その分、新規投資家の資産価値の増加を意味する。
ただ、REIT価格の上昇で環境が変わりつつある。2025年12月3日時点、上場REIT58銘柄中で、NAV倍率が1倍以上は9銘柄。REIT市場が見直されてきたことでNAV倍率も上昇傾向にあり、POによる外部成長戦略を取りやすくなりつつある。0.9倍台以上ならば、全体の約8割の45銘柄となっている。今後、POの実施で外部成長を取り込むことができる銘柄が増加しそうだ。
投資妙味がありそうなJ-REITをピックアップ
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銘柄名 |
NAV倍率(倍) |
利回り |
概要等 |
| ユナイテッド・アーバン投資法人(8960) | 1.05 | 5.00 | 丸紅(8002)と第一生命ホールディングス(8750)をスポンサーとする総合型REIT。商業施設やオフィスビル、ホテル、住居などが投資対象。2025年11月にPOを発表。調達額約240億円。商業施設2物件、工場1物件などを取得する。POの実施は2019年6月以来6年5ヶ月ぶり。 |
| 日本ビルファンド投資法人(8951) | 1.20 | 3.34 | 三井不動産(8801)が主要スポンサーであるオフィスビル特化型REIT。都心を中心とした大型のオフィスビルが主な投資先。J-REITで時価総額首位。2025年6月にPOを発表。調達額は181億円で、「フロンティア武蔵小杉N棟・S棟」の取得資金に充当。 |
| 東海道リート投資法人(2989) | 1.01 | 5.64 | 東海道エリアに重点投資する地方型REIT。スポンサーも静岡エリアが軸の不動産や東海道関連企業。物流施設・オフィスビル、住宅・商業施設の底地の2つのタイプに区分。2025年1月にPOを発表。調達額は約37億円で、工場底地2件、住宅4物件を取得。 |
| ジャパンリアルエステイト投資法人(8952) | 1.08 | 3.88 | 三菱地所(8802)をスポンサーとするオフィスビル特化型REIT。2001年9月に日本ビルファンド投資法人(8951)と同時に初上場した最古参。都心のオフィスビルが主な投資対象。時価総額で2位。 |
| 平和不動産リート投資法人(8966) | 1.04 | 5.14 | 平和不動産(8803)をスポンサーとする複合型REIT。2010年にジャパン・シングルレジデンス投資法人と合併。首都圏のオフィスと住居が主要な投資対象。 |
| ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) | 1.00 | 5.65 | シンガポール系ファンド企業がメインスポンサーのホテル特化型REIT。サブスポンサーは共立メンテナンス(9616)、オリックス(8591)。ホテル特化型J-REITの中では運用実績が最長。 |
(NAV倍率、分配金利回りはいずれも2025年12月3日時点)
