高市政権の成長戦略、17項目の戦略分野の1つである「造船」分野
10月半ばに高市政権がスタートして、瞬く間に1ヶ月が経ちました。発足直後に来日したトランプ米大統領との首脳会談を実施し、その後も矢継ぎ早に独自色の強い政策を推進しています。
11月に入ってすぐに「日本成長戦略本部」が設置され、17項目に及ぶ戦略分野が明確に定められました。内容は「AI・半導体」、「量子(コンピューター・通信・暗号)」、「航空・宇宙」、「コンテンツ」など、高市政権の成長戦略の骨子となる「危機管理投資」の詳細が網羅されています。
2026年度の予算編成が終われば、夏ごろには新たな成長戦略が策定される予定です。それを待たずに今すぐにも実行すべき重点政策が幅広く盛り込まれています。特に注目されるのが「造船」分野です。17項目の戦略分野では最重要と目される「AI・半導体」の次に示されました。総合経済対策でも官民合わせて1兆円規模の投資が行われる計画です。
日本の造船の建造シェアは中国、韓国につぐ第3位を維持
世界の至るところで造船の建造や修繕に対する需要が高まっています。四方を海に囲まれ、エネルギーや食料の大部分を輸入に頼っている日本では、ひときわ重要といえるでしょう。重量ベースでは貿易の99%以上が海上輸送で賄われており、普段はあまり意識されませんが、日本人の暮らしや生命の最も基礎的な部分を海運と造船によって支えられています。
日本の造船業は1950~80年代まで世界一の建造量を誇りました。それが1980年代末からの急激な円高と労働コストの差で中国や韓国に追い越され、今ではすっかり主役の座を明け渡してしまいました。現在も日本の建造シェアは中国、韓国につぐ第3位を維持していますが、2004年の36%から2024年には13%まで低下しています。
政府は2035年までに日本の建造量を現在の2倍に引き上げる方針
地政学的リスクが日常的に意識され、世界の国境が複雑に分断されつつある現在、造船業の重要性が再び高まっています。軍民両用の「デュアル・ユース」の船舶建造能力をいかに自国内で保持しているかが重要です。高市首相も国会で「造船は経済・安全保障を支えるきわめて重要な産業」と明言しました。
17項目の重点戦略分野に造船を取り上げて、政府は2035年までに日本の建造量を現在の2倍となる1800万総トンまで引き上げる方針です。
一度手放した産業の国際競争力を取り戻すのは容易なことではありませんが、半導体と同じく造船も国を挙げての取り組みを強化して新たな挑戦をスタートさせる意向です。注目が集まる造船業界に関連する企業をピックアップします。
三菱重工業、名村造船所など造船株をピックアップ
三菱重工業(7011)
発電用ガスタービンから航空・宇宙、防衛まで手がける総合重機メーカー。造船でも日本有数の規模と実績を誇る。2025年8月、同社が建造したフリゲート艦を豪州政府に納入することが発表された。車両7,000台を一度に積載できる同社最新の自動車専用船は、エンジンに「二元燃料エンジン」を搭載。従来燃料の重油と代替燃料のLNGのどちらかを選択して運航することができる。2030年には船舶のエンジンの8割が二元燃料になるとされており、先駆例としても期待されている。
名村造船所(7014)
大阪に本社を置く造船会社。創業から100年以上にわたり、世界に向けて船舶を建造してきた。2008年に造船の名門・函館どつく株式会社、2014年には佐世保重工業を子会社化した。新造船の竣工量では今治造船、ジャパンマリンユナイテッドに次ぐ国内第3位に位置づけられている。現在も船舶の製造(タンカー、バルクキャリア、コンテナ船、自動車運搬船)を主軸としており、ほかにも船舶の修繕、橋梁・鉄構造物の設計・製造・架設に携わる。
大同メタル工業(7245)
軸受のメタル専業で、自動車エンジン用は世界シェア4割を誇り、国内最大手のひとつ。産業機械や造船用にも強い。軸受には大きく分けて、一般的な「ボールベアリング」と「すべり軸受」の2種類がある。同社は「すべり軸受」を得意としており、世界トップ企業である。これは油膜で回転を支える技術で、自動車・船舶用エンジンをはじめ、建設機械や発電用タービン、鉄道、洋上風力発電など、さまざまな分野で使われる。自動車生産の回復に合わせて、業績は急回復している。
いよぎんホールディングス(5830)
資金量は四国でトップの伊予銀行を中核とする持株会社。2022年10月に発足後、愛媛県から瀬戸内圏一帯に店舗を展開し、シンガポールや香港、上海にも拠点を持つ。瀬戸内海は造船業のメッカで、中でも愛媛県今治市は新造船の竣工量で国内シェア2割を持つ国内トップの海事都市である。今後は国によるバックアップに期待が高まる。デジタル技術を活用して事務部門を合理化し、次世代型店舗の導入にも積極的に取り組む。
