前編「年収300万円の掃除夫から資産10億円の専業投資家へ、www9945さんの夢の配当生活までの道のり」では、資産10億円突破までの投資ヒストリーや、資産が半減した際の乗り換え方、投資を継続できた理由などをうかがいました。後編では現在の具体的な投資手法やポートフォリオ、保有銘柄などについて紹介します。
「富士山型」ポートフォリオを実践する理由
――リーマン・ショックで資産が半減した後、投資手法に変化はありましたか?
リーマン・ショック後は、ピラミッティングという値上がりした株をさらに買い増す手法を取り入れました。ただし、株価が上がったからたくさん買うのではなく、買い増しする株数を少しずつ減らしていくやり方です。
また、小型のグロース株にも注目するようになりました。2009年6月から2012年11月までの民主党政権時代、日経平均採用銘柄があまり上がらなかったのですが、小型株は比較的上昇していたのに目を付けました。2012年にはグロース株を中心に投資して、パフォーマンスは+70%くらいでした。
――現在の投資手法について教えてください。
現在は「富士山型」ポートフォリオを実践しています。2013年頃には「スカイツリー型」ポートフォリオでしたが、現在では「富士山型」に変化しています。
「スカイツリー型」は、高配当銘柄や株主優待銘柄など長期保有銘柄で固めた東京ソラマチにあたる土台部分があり、そのうえに旬のテーマや業績などに応じて頻繁に入れ替える集中投資銘柄が乗った形のポートフォリオです。
土台の銘柄は「広く・浅く」が基本で、100社以上の銘柄で構成されるものの、株数は最低単元です。一方、タワー部分にあたる銘柄は「狭く・高く」で、銘柄数は10社に満たないものの、1社あたりの投資金額は1,000万円ほどを集中投資する手法です。
――なぜ「スカイツリー型」から「富士山型」に変化したのでしょうか?
現在、「富士山型」にしているのは、資金が増えるにつれて、タワー部分の銘柄を増やさざるを得なくなったためです。以前のようにタワー部分を5~10銘柄で構成していると、1銘柄あたりの投資金額が1億円近くになってしまうようになり…。
また、以前は投資金額トップの銘柄に資産の30~35%を集中させていたのですが、下方修正があった場合のリスクが大きく、小型株では流動性の問題もありました。何より1銘柄に1億円も投資していると、自分自身のメンタルの負担が大きすぎることもあり…。現在では10~20銘柄ほどに分散投資し、投資金額の上位10銘柄には、時価総額1000億円以上の中型株以上を入れるようにしています。
日本株上位5銘柄と「常用性」視点で選ぶ米国株銘柄
――ポートフォリオの全体像を教えてください。
日本株が全体の85パーセントで、銘柄数は105銘柄(内訳:優待銘柄70銘柄、調整銘柄35銘柄)です。メインに据えているのは35銘柄くらいでしょうか。基本的に、優待銘柄は継続して保有していますが、信用取引で調整することもあります。
――現在のポートフォリオの上位銘柄を教えていただけますか?
現在は上位から、光通信(9435)、サイバーエージェント(4751)、SBIホールディングス(8473)、U-NEXT HOLDINGS(9418)、ハピネット(7552)です。
――日本株以外には投資をされていますか?
米国株に投資をしており、フィリップ・モリス・インターナショナル[PM]やペプシコ[PEP]など、「常用性」に着目して、関連企業の株式を所有しています。タバコやスナック菓子、炭酸飲料は手軽に手に入る分、辞めるのが難しい…、そういった人間の習性を投資のヒントにしています。人口が増えて娯楽がまだ少ない新興国(アフリカ・中南米など)で需要が伸びているのもポイントです。米国株の強みは、AIやハイテクだけでなく、日用品や食品の事業を世界中で展開する企業があることだと思います。
あとは、ベトナム・フィリピンのアジア個別株にも投資をしています。現地の大手銀行セクター業界1位か2位中心に数十銘柄ほど投資しています。
渋谷でも新宿でもなく、池袋の「街角ウォッチ」が銘柄発掘のヒント
――池袋の「街角ウォッチ」で銘柄を発掘されるそうですが、詳しく教えてください。
銘柄を発掘するうえで大事にしているのは、「街並みの変化」からの「気づき」です。2015年頃から、池袋の街角ウォッチをヒントに銘柄を発掘しているのですが、池袋は、「ちょうどいい」都会ですよね。渋谷はトレンドを先取りしすぎることがあり、新宿は私にとって広すぎます。そういう意味で、池袋の変化は、日本全体の変化をちょうどよく先取りして教えてくれる格好の投資材料です。
そもそも「街角」と「池袋」に注目したきっかけは3つあります。1つ目はスマホが普及して、女子学生がスマホの壁紙に自撮り写真を貼り付けるようになったこと。2つ目は札幌の地下鉄で見かけたカップルが写真を撮って補正アプリで加工していたこと。3つ目は池袋にあるゲームセンターの2階のプリクラが大流行していたことです。
――「スマホで自撮り」「アプリで加工」「プリクラ」に目を付けたのですね。
そこからプリクラを提供しているフリュー(6238)という会社について調べました。同社は、プリクラで撮った写真をスマホに転送すると月額料金がかかるサブスクスのサービスを提供していたのですが、その料金は携帯キャリアの請求代の中に含まれていることがわかりました。明細書に記載されないから、サービスを解約されにくい。これはすごいビジネスモデルだ…と思ってフリューの株式を買ったところ、その後、株価が2倍になりました。
池袋のガチャガチャからキャッチする投資サインとは?
――最近の池袋の街角で注目されている変化はありますか?
ガチャガチャ(カプセルトイ)の動向に注目しています。池袋では2024年5月にガチャガチャ専門店がオープンし、2025年2月にはエキナカのオープンスペースにもガチャガチャが置かれました。2025年5月にはゲオグループが展開する「カプセル楽局」がオープンし、ヤマダ電機の裏口にあったガチャガチャが6階の専門コーナーに移動しています。
実は2025年4月にオリックスが「ガチャガチャの森」などを展開するカプセルトイ販売大手のルルアークを100億円程度で買収しました。オリックスは、ブルーオーシャン(競争が少ない新しい市場)をレッドオーシャン(競争が激しい既存の市場)に変えるプロなので「これが決定打だ」と思いましたね。
実際、池袋のガチャガチャの店舗はどんどん駅に近くなり、2年前にはサンシャイン60の3階にだけあったものが、駅近に展開するようになっています。これはガチャガチャの店舗を巡る競争が後半戦に入ったサインかもしれません。そのため、決算動向によっては、売却する可能性もあります。
――なるほど。そういった観察から投資判断をされるのですね。どのくらいの頻度で街角ウォッチをしていらっしゃるのですか?
池袋のスポーツセンターにはほぼ毎日行き、街並みを観察はしていますが、街をぐるっと巡るのは週1回くらいです。流行っているものや売れ行きがよいものから仮説を立て、決算を確認するようにしています。
リアルから情報を得て、自身が立てた仮説と決算書などの紙面情報がマッチした時のワクワク感が投資の醍醐味だと感じています。そして、百聞は一見に如かずで、自分の眼で確認することで株価が2倍や3倍になるまで、じっくり待つことができるようになっていると思います。
――NISA制度は活用されていますか?
つみたて投資枠では、8割を全世界型、2割を日本の主要株価指数であるTOPIXに連動する投資信託で積み立てをしています。理由として、全世界型は日本の割合が約5%のため、補完の意味合いです。成長投資枠では、日本のコンテンツ産業2社と配当目的で1社に投資しています。
投資の王道はとにかく一歩ずつ進めていくこと
――資産が10億円を突破された今、今後の投資や人生の目標について教えてください。
資産が10億円を超えたことで、高配当銘柄や株主優待銘柄で資産を増やすというモチベーションは薄れています。無理に増やそうと思えば高配当銘柄中心に配当金2,000万円以上増やせますが、独身なので1,000万円もあれば十分と考えています。
今は時間的な余裕もできましたので、趣味の離島や景勝地を見て回ろうと思っています。高齢になると足腰が弱って思うように動けなくなるかもしれないので、出来るうちにあちこち旅するのがこれからの目標です。
――最後に、投資を始めたいと思っているけれど、なかなか最初の一歩を踏み出せない方へのアドバイスをお願いします。
第一歩が口座開設でしょうか。その後、月1万円または3万円でもいいので、NISAのつみたて投資枠で投資信託の積立を始めてみるのがよいと思います。個別株に興味がない人や値動きが苦手な人はそれで十分でしょう。
「より、お金を増やしたい」とか「個別株で短期的にFIREしたい」という人は、株主優待銘柄への投資を始めるといいかもしれません。株主優待を受け取るうちに、決算月や配当金の仕組みなどもわかってくるでしょう。すると株主通信を読むようになり、企業の業績にも興味が湧いてきます。
SNSなどで知り合った投資仲間のセミナーやオフ会に参加するようになると、どんどん投資のモチベーションが高まります。そういう形で一歩ずつ進んでいくのが、投資の王道ではないでしょうか。最初は失敗することもありますが、投資仲間のコミュニティには同じような仲間がいます。そこで知識を積み上げていくといいのではないかと考えています。
――本日はありがとうございました。
取材・文/大山弘子
企画・編集/マネクリ編集部(佐野佳代子、西條玄香)
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※本インタビューは2025年7月23日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。
