近年、人工知能(AI)の進化は金融業界にも大きな影響を与えています。最近の研究では、アクティブ運用ファンドの売買判断の約71%がAIによって予測可能であることが示されました。これは、ファンドマネジャーの行動の多くが、資金の流出入や市場環境、銘柄の特性などに反応する一定のパターンに従っていることを意味しています。言い換えれば、プロの投資判断のかなりの部分は、過去データから学習したアルゴリズムでも再現できる可能性があるということです。

もっとも、この研究は「AIが市場に勝てる」という結論を示しているわけではありません。むしろ興味深いのは、AIが予測できなかった約29%の取引のほうが、平均してより良い運用成果と関連していた点です。つまり、日常的なパターンから外れた判断、他の投資家が見落としている情報を発見するような独自の判断こそが、アクティブ運用の価値を生み出している可能性があります。市場の常識から一歩外れた視点こそが、超過収益の源泉となることがあるのです。

S&Pダウ・ジョーンズが公表しているSPIVAという調査によると、2025年は日本株アクティブファンドの多くが指数を下回っています。10年という長期では約8割が指数を下回る結果となっており、長期で見るほど、指数に安定して勝ち続けることが難しいという現実が浮かび上がります。

大型株のように多くのアナリストや機関投資家が調査している市場では、情報が広く共有されているため、平均的な運用は指数に近づきやすくなります。一方で、小型株の分野では、企業数が多く、調査が十分に行き届かない企業も多いため、アクティブ運用が比較的成果を上げやすい傾向があるとも指摘されています。

これは、AI研究の結果とも通じる話です。多くの投資判断がパターン化され、アルゴリズムで再現できる部分がある一方で、パターンから外れた判断が成果につながる可能性があるという点です。情報が十分に整理されていない領域では、独自の視点や地道な調査が価値を持ちやすくなります。

「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があります。多くの投資家が同じ方向を向くとき、その情報はすでに価格に織り込まれていることが多く、大きな利益を得ることは簡単ではありません。反対に、まだ市場が十分に注目していない分野や、他の投資家が見過ごしている企業の中にこそ、将来の大きな成長の芽が潜んでいることがあります。

個人投資家にとって、この点は重要なヒントになります。機関投資家と同じ土俵で大型株を分析するのは簡単ではありません。しかし、日常生活の中で触れている製品やサービス、身近な地域企業、新しいビジネスモデルなど、自分が関心を持つ分野から投資のヒントを見つけることはできます。そうした視点は、ときに市場がまだ十分に評価していない企業を発見するきっかけになるかもしれません。

もちろん、多くの投資家にとっては、低コストのインデックスファンドを中心に資産形成を行うことが合理的な出発点になります。市場全体の成長を取り込むという意味で、インデックス投資は非常に強力な方法だからです。

そのうえで、自分の関心や知識を生かした投資を少し加えるという方法もあります。市場平均を土台にしながら、自分なりの視点で企業を探す──それは単なる資産運用というだけでなく、経済や企業を知る楽しさにもつながります。

AIの進化によって市場分析の手段はますます高度化しています。しかし、多くの判断がデータで再現できる時代だからこそ、独自の視点や好奇心から生まれる発見の価値は、むしろ高まっているのかもしれません。