先週(7月21日週)の振り返り=参院選後は円買い戻し先行、ただ徐々に円売り再燃
円買い戻し先行も、テクニカルに重要な146円はサポート
先週は、7月20日に行われた日本の参院選で連立与党が過半数割れとなったことを受けて、前週(7月14日週)に一時149円まで売られた円を買い戻す展開が先行し、一時は146円を割れるまで米ドル安・円高に戻しました(図表1参照)。ただその後は徐々に円売りが再燃し、148円近くまで米ドル高・円安へ戻りました。
参院選にかけて大きく米ドル高・円安が広がった要因としては、それまで2ヶ月以上と長く続いた142~146円のコアレンジを米ドルが「上放れた」というテクニカルな影響があったと思います(図表2参照)。そうした中で、日本の政治不安が円売りの主要な口実になったのではないでしょうか。
日本の政治の先行き不透明な状況は続く
今回の参院選挙では、事前の予想から連立与党の過半数割れの可能性が高いと見られていました。そうなると石破総理は退陣する可能性がありましたが、衆参両院で与党が過半数割れとなったことで、次期総理は与野党の協力が不可欠になる可能性が高い。その場合は、参院選で多くの野党が主張した消費税減税が焦点になることから、すんなりと与野党協力が成立するかは不明瞭で、その結果「総理大臣不在」が長引く懸念すらあったわけです。
ところが、参院選終了直後に石破総理が続投を表明したことで、「政治的カオス(混沌)」のシナリオは一旦後退し、円買い戻しが先行したと考えられます。ただそうした円買い戻しでも、長く続いたコアレンジの上限、146円以下に再び戻るまでには至りませんでした。
先週(7月21日週)の米ドル/円は、石破総理の続投を巡って自民党内から退陣圧力が強く、先行き不透明な状況が続いていることから円売りが再燃したのでしょう。
今週(7月28日週)の注目点=日米の金融政策発表、米雇用統計発表など注目材料目白押し
日米とも金融政策の変更は予想されていない
今週は水曜日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして木曜日には日銀の金融政策決定会合が予定されています。どちらも金融政策の変更は予想されていません。ただし、FOMCについてはトランプ米大統領による執拗な利下げ要求が続いていることから、政策金利据え置きを決めた場合でも、一部のメンバーから利下げへの支持が出るなど、FOMC内の分裂が再確認される可能性はありそうです。
また日銀については、日米の関税交渉合意により先行きの不確実性が低下したとして、利上げが再開できるようになったとみられています。さすがに今回の利上げという予想はほとんどなさそうですが、早期の利上げ再開について日銀がどのように情報発信するかは注目されるところでしょう。
その他、米経済指標発表も注目度の高いものが続きます。7月30日(水)に発表される予定の米第2四半期GDP・速報値は、第1四半期のマイナス成長から2.5%のプラス成長に回復するとの予想になっています。また8月1日(金)には、米7月雇用統計が発表されます。6月の結果はNFP(非農業部門雇用者数)、失業率とも予想外に強いものとなり、それからは少し悪化するとの予想になっていますが、利下げ再開を示唆するほどの急悪化は今のところ想定されていないようです。
米ドル/円は金利差より日本の金利と連動
最近の米ドル/円は日米金利差(米ドル優位・円劣位)で説明しにくい状況が続いています(図表3参照)。むしろ、米ドル/円は金利差よりも日本の長期金利が比較的うまく説明できる可能性があります(図表4参照)。その意味では、日本の政治の混乱や消費税減税などが財政赤字拡大をもたらす可能性があります。そのため、「債券価格下落(債券利回り上昇)=円売り」が1つのテーマとなり得るでしょう。
日本の財政赤字拡大懸念による円売りは、基本的に日本からの資金流出懸念を伴い、本来なら株安も起こるところでしょう。しかし、その株価は先週(7月21日週)、日米関税交渉の合意などを受けて急騰しました。その意味では、日本の株高が続く中において、政治不安や財政赤字拡大懸念を理由とした円売りには自ずと限界があるのではないでしょうか。
ヘッジファンドの円売りは先週一段落=トランプ政権の通貨政策と連携
もう1つ注目されたのが、ヘッジファンド(以下、ヘッジF)の取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションの動向です。先週、このところ続いていた買い越し(米ドル売り越し)縮小が止まりました(図表5参照)。ヘッジFの円買いポジション縮小(円売り)には、円安が続く中での損益分岐点割れに伴う損失拡大懸念があると考えられましたが、それが先週一段落したのはなぜなのでしょうか。
ヘッジFの取引には、トランプ政権の通貨政策が強く影響している可能性がありました。先週、ヘッジFが円売りを一段落したのは、150円の大台が迫る中で円安を容認しないトランプ政権の考え方に連携した可能性もあったのではないでしょうか。
今週(7月28日週)の米ドル/円予想レンジは146~151円
米ドル/円は、先週(7月21日週)確認したように146円を大きく割れない限り、米ドル買い・円売りの根強い状況は続く可能性があるでしょう。ただ、これまで見てきたように、日本の政治不安や財政赤字拡大懸念を理由とした円売り継続にも自ずと限界がありそうだということ、またトランプ政権の通貨政策などから、ヘッジFが大量の円買いポジションの手仕舞いで円売り拡大に動く可能性が低そうという理由などから、米ドル高・円安の拡大余地も限られるでしょう。
今週は日米の金融政策などを材料に荒い値動きになる可能性はありますが、以上のようなことを踏まえ、米ドル/円は146~151円のレンジで想定したいと思います。
