イラン攻撃を前後して急縮小した米ドル売り越し
CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジションは、2月17日時点で21万枚の売り越しだった(図表1参照)。経験的に20万枚以上の売り越しは「行き過ぎ」の水準とされる。同売り越しは、1月23日に米通貨当局が円安けん制の「レートチェック」を行って以降、急拡大した。その上で、約1ヶ月で「売られ過ぎ」懸念が強まる状況となっていた。
ところが、2月末に米国とイスラエルがイラン攻撃を行うと、3月3日時点の米ドル売り越しは13万枚まで急縮小した。これについて、中東有事を受けて基軸通貨の米ドルが選好された、いわゆる「有事の米ドル買い」の結果との解説が少なくなかったが、本当だろうか。
米ドル買いの一方で売られたのはユーロ、円
イラン攻撃の前後で大きく売られた通貨の1つはユーロだった。ユーロは、2月10日時点では18万枚まで買い越しが拡大していた。これは経験的にはユーロが「買われ過ぎ」懸念が強まっている可能性を示していた(図表2参照)。ところがイラン攻撃直後、3月3日時点ではユーロ買い越しは13万枚まで縮小した。
ユーロ買い越しの縮小とは、別の言い方をするとユーロ売り戻しとなる。改めて、このようなイラン攻撃を前後した米ドル買い・ユーロ売りは「有事の米ドル買い」が主因だったのか。ただし、原油やガスの供給懸念は、欧州にとってのリスクであるため、イラン攻撃を受けて過剰なユーロ買いリスクの圧縮が拡大したということだった可能性もあっただろう。
円についてもイラン攻撃の前後で売りが拡大したようだ。投機筋の円ポジションは、2月24日時点では1万枚と小幅の買い越しだったが、3月3日時点では1万枚と小幅ながら売り越しに転換した(図表3参照)。
資源国通貨の豪ドルは買い=カナダドルも大きく売られず
一方で、イラン攻撃を前後して米ドルに対して買い越し拡大となった通貨もあった。豪ドル買い越しは2月24日時点で5万枚だったが、3月3日時点では7万枚近くに拡大した(図表4参照)。
またカナダドルは、2月24日時点では2.7万枚の買い越しだったか、3月3日時点でも2.1万枚と小幅の縮小にとどまった(図表5参照)。以上のように見ると、豪ドル、カナダドルなどはイラン攻撃を前後しても、対米ドルで買われるか、売られた場合でもあくまで小幅にとどまっていたようだ。
豪ドル、カナダドルは資源国通貨の代表格だが、そうした点では、ホルムズ海峡の封鎖などによる原油やガスなどの供給リスクの影響を比較的受けにくいと考えられる。イラン攻撃の前後で、資源国通貨が米ドルに対してもそれほど売られなかった可能性があることは、イラン攻撃に対する為替相場の反応が、いわゆる「有事の米ドル買い」というより、原油等の供給リスクに反応した面が大きかったことを示しているだろう。
