先週(3月2日週)の振り返り=イラン攻撃きっかけに米ドル高・円安、一時158円台
原油等の供給懸念を背景に「世界一の産油国」米ドル買い拡大
先週は米国とイスラエルによるイラン攻撃によって、イランがホルムズ海峡封鎖に動いたことから原油やガスの供給懸念が拡大しました。原油等の供給リスクの高まりを受けて、円やユーロが売られる一方で、「世界一の産油国」である米ドルや資源国通貨とされる加ドル、豪ドルが買われる展開となりました。こうした中で米ドル/円は、一時158円台まで上昇しました(図表1参照)。
この米ドル/円の上昇は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大にも沿ったものでした。日米の金融政策を反映する2年債利回り差は、1月下旬以来の2.3%以上に拡大し、こうした中、米ドル/円も1月23日の日米の通貨当局による円安けん制の「レートチェック」が行われる前に記録した158円台まで上昇しました(図表2参照)。
米ドル高・円安、日米金利差拡大とも連動=ただ米景気回復に足踏みの兆しも
上記のような日米金利差拡大は、おもに米金利上昇の影響が大きかったようです(図表3参照)。原油価格急騰などによりインフレ懸念が再燃し、米利下げ再開観測が後退したことが影響した面が大きかったでしょう。では、米金利上昇などによる日米金利差拡大は、まだ続くのでしょうか。
先週(3月2日週)発表された米経済指標は強弱が入り混じる結果でした。ただ、3月6日発表の2月雇用統計ではNFP(非農業部門雇用者数)が予想外のマイナスとなり、労働市場の悪化に改めて注目が集まりました。こうした中で、定評のある経済予測モデル、アトランタ連銀のGDPナウが6日に更新した1~3月期の米GDPは、前期比年率で2.1%へ下方修正されました。
以上のことから、米景気回復にも足踏みの兆しが見え始めたようです。インフレ懸念を受けた米金利上昇が、景気回復も反映したものとしてポジティブに評価されるかやや懐疑的な面が出てきたのではないでしょうか。
今週(3月9日週)の注目点=原油高、日米株価、円安阻止姿勢など
「世界一の産油国」という米ドルの強み=一方基軸通貨の立場に揺らぎも
為替市場の代表的な投機筋のデータであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、3月3日時点で売り越しが13万枚と、1週間前の19万枚から大きく縮小しました(図表4参照)。
イラン攻撃に伴う原油の供給懸念の急拡大により、供給リスクが意識されやすい円やユーロの買い持ちリスクの圧縮を急いだ一方で、シェール原油登場以降「世界一の産油国」となった米ドルの買い戻しを急いだ結果と考えられます。このような動きは、原油等の供給懸念がある中ではまだ続く可能性があり、それは米ドル高を後押しすることになるでしょう。
ただ、このイラン攻撃が始まる前、2月末の段階で投機筋の米ドル売り越しは20万枚程度に達するなど、過去の実績を参考にすると「売られ過ぎ」の状況となっていました(図表5参照)。これはトランプ米大統領の国際秩序を軽視したような言動を受けて、それに対する不信感から基軸通貨であるにもかかわらず「米ドル離れ」が続いていることを示唆するものではないでしょうか。「世界一の産油国」という強みの一方で、米ドルは基軸通貨としての立場が揺らぐといった脆弱性も抱えていることは、要注意と言えるのでしょう。
日米「レートチェック」は衆院選挙中の異例=円安阻止姿勢変化も
今週(3月9日週)は引き続き、イラン情勢やそれを受けた原油価格急騰などが注目されるでしょう。また、それを横にらみしながら不安定な動きが目立ってきた日米などの株価の動向も注目されます。
米ドル高・円安が、1月23日の日米協調「レートチェック」が実現した時以来の159円台に達した場合、再び円安けん制が強まるところとなるのでしょうか。米ドル/円の160円という水準は、2024年に日本の通貨当局が単独で米ドル売り・円買い介入を開始した水準でした。ただ、この5年MA(移動平均線)かい離率は、2024年当時と足下では大きく異なります(図表6参照)。
米ドル/円の5年MAかい離率を参考にすると、2024年の160円はかなり米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強かったことから、その点では為替介入によってそれを阻止しやすかったのに対し、足下での「行き過ぎ」懸念はそれほど強いものではないため介入によって阻止するのは困難かもしれません。
ただし、1月23日は衆院選挙中の「止まらない円安」が高市内閣にとってのマイナス要因となることが懸念されたことから、日米協調という「サプライズ」で円安の反転に成功させたということだったのではないでしょうか。
円、米ドルともに「暴落リスク」=今週(3月9日週)の米ドル/円予想は155~160円
以上のように考えると、衆院選挙が終わったことで、円安が160円を目指す動きが再燃した場合でも日本の当局が円安阻止行動に動かない可能性もあるのではないでしょうか。一方で、米当局が実際の米ドル売り介入に動いた場合は、「レートチェック」後に米ドル売りが急拡大したことを考えると米ドル売りを加速させるきっかけになる危険もありそうです。
そのため、円安が160円に接近するようなら、円、米ドルともに「暴落リスク」が顕在化するなどかなり荒れた展開になる可能性があるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は155~160円のレンジで予想します。
