中東情勢と日米金融政策をにらみ、方向感を探る展開
今週の日本株市場は、中東情勢と原油価格への警戒が続くなか、日米で重要な金融政策の決定が相次ぐことから、積極的な売買は手控えられ、方向感を探る展開となりそうだ。
先週末11日の日経平均は前日比1,259円安の6万4011円と大幅に下落した。中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が急騰したほか、米国でインフレへの警戒が改めて強まり、日米の金利上昇も株価の重石となった。終値では8月4日以来、約1ヶ月ぶりの安値水準となった。
一方、先週末11日の米国市場では原油価格が反落し、WTI原油先物が1バレル=100ドルを割り込んだことなどから、インフレへの過度な警戒がやや和らぎ、主要株価指数は上昇した。
ただ、その後の週末には中東情勢を巡る新たな懸念が浮上した。サウジアラビアでは、ホルムズ海峡を迂回して紅海側へ原油を運ぶ重要な東西パイプラインがドローン攻撃を受けて停止した。さらに13日にはホルムズ海峡で船舶への新たな攻撃も報告され、原油供給を巡る不透明感は再び強まっている。
このため、先週末の米国株が反発したとはいえ、週初の日本株がその流れを引き継いで大きくリバウンドする展開は期待しにくい。週明けは中東情勢と原油価格の動向を確認しながら、慎重なスタートとなりそうだ。WTI原油先物が再び100ドルを超えて上昇すれば、企業のコスト増に加え、インフレ懸念や長期金利の上昇を通じて日本株の上値を抑える要因となろう。
今週は、中東情勢に加えて日米の金融政策が大きな焦点となる。米国では15-16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、16日に結果が発表される。同日には8月の米小売売上高も発表される。続いて日本では17-18日に日銀金融政策決定会合が開催される。18日の朝には8月の全国消費者物価指数(CPI)が発表され、その後に日銀の金融政策決定、午後には植田日銀総裁の会見が予定されている。
FOMCに続いて日銀会合を迎えるため、18日までは様子見姿勢が続きやすいとみる。日米とも今回の利上げは相当程度、市場に織り込まれており、結果が市場の想定から大きく外れなければ、金融政策を巡る不透明感は後退しよう。中東情勢と原油価格も落ち着けば、これまでの下げで売られ過ぎた銘柄を中心に買い戻しが入りやすくなると考える。
ただ、18日の取引を終えると、日本市場は19-23日の5連休に入る。日本の休場中も海外市場では取引が続くため、中東情勢や原油価格、米国株、米長期金利、ドル円相場の変動を警戒し、18日は積極的にポジションを傾けにくい面もありそうだ。
予想レンジは6万2500円-6万6500円とする。
利上げよりも「その次」が重要な中銀ウィーク
今回の日米の金融政策を考えるうえで重要なのは、利上げそのものよりも、その後の金融政策がどうなるかである。
米国では、8月の消費者物価指数(CPI)を受け、15-16日のFOMCでは市場で0.25%の利上げが有力視されている。利上げ観測がすでに相当程度織り込まれているだけに、市場の関心は今回の政策金利の決定だけでなく、その先の金融政策へと移っている。
より注目したいのは、16日に公表されるFOMC参加者の政策金利見通し、いわゆる「ドットチャート」と、ウォーシュFRB議長の会見である。今回の利上げがインフレ再加速を警戒した一時的な対応なのか、それとも追加利上げにつながる引き締め局面の入り口なのかで、株式市場の受け止め方は変わってくる。中東情勢の緊迫化に伴う原油高が、米国のインフレを再び押し上げる可能性にも目を配る必要がある。仮に年内にもう一段の利上げを示唆するような内容となれば、米長期金利の上昇を通じて高PERの成長株には逆風となりやすい。一方、今回の利上げ後は経済指標を確認しながら慎重に判断する姿勢が示されれば、追加利上げへの警戒は後退しよう。
日銀についても、今回の0.25%の追加利上げそのものより、その先の政策運営が重要になる。17-18日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を1.25%に引き上げることがほぼ織り込まれている。焦点は、利上げがこの先どこまで続くのか、そして次の利上げがいつになるのかである。
政策金利が1.25%まで上昇すると、中立金利の推計レンジ内に入ってくるとみられる。このため、18日の会見では、植田総裁が今後も着実に利上げを続ける姿勢を示すのか、それとも、これまでの利上げが景気や物価に与える影響を見ながら次の一手を判断する姿勢を示すのかが注目される。
市場では年末から来年初めにかけての追加利上げも意識されている。植田総裁の発言が市場の想定よりもタカ派的と受け止められれば、円高が進み、輸出関連株を中心に株価の重石になる可能性がある。逆に、次の利上げを急がない姿勢が示されれば、円高への警戒は和らごう。
日米とも市場の関心は「今回、利上げをするか」から、「次の利上げはいつなのか」「どこまで政策金利を引き上げるのか」へ移っている。今回のFOMCと日銀会合では、利上げ後の政策運営についてどこまで具体的な道筋が示されるかが最大の焦点となろう。
金利をにらんだ物色から月末の配当取りへ
物色面では、原油価格と金利の動向が大きなカギを握りそうだ。中東情勢の緊迫化によって原油価格が高止まりすれば、商社や資源関連株には資金が向かいやすい。一方、原油高は企業のコスト増やインフレ圧力につながるため、幅広い銘柄にとっては株価の重石となり得る。
日銀の追加利上げが見込まれるなかでは、金利上昇が収益改善につながりやすい銀行などの金融株にも引き続き注目したい。その後も利上げが続くとの見方が強まれば、金融株には追い風となろう。
一方、AI・半導体関連株については、日米の金利動向がポイントになる。成長期待を背景に株価評価が高い銘柄が多いため、長期金利の上昇は株価の重石となりやすい。特に米国のAI・半導体株との連動性が高いことから米長期金利の影響を受けやすいが、日銀の利上げに伴う国内金利の上昇も株価評価を抑える要因となる。FOMCと日銀会合を経て日米の金利上昇が一服すれば、直近の株価調整もあって押し目買いが入りやすくなる可能性がある。逆に金利がさらに上昇すれば、AI・半導体関連株には慎重な見方が必要となろう。
日米の金融政策を確認した後は、投資家の目線は次第に9月末の配当取りへ向かおう。9月末は3月期決算企業の中間配当の権利確定が集中する時期であり、配当利回りの高い銘柄への関心が高まりやすい。
さらに注目したいのが、配当の再投資に伴う需給である。機関投資家の中には、株価指数との連動性を維持するため、受け取る予定の配当金相当額を株価指数先物などに再投資する動きがある。一部の試算では、9月末には約1.6兆円規模の先物買い需要が発生するとの見方もある。
実際の買い需要が発生するのは月末だが、市場ではこうした需給を先回りする動きも起こり得る。翌週の日本株市場は21-23日が休場となり、24日と25日の2営業日しかない。23日の米国市場では9月のS&Pグローバル製造業・サービス業PMIの速報値が発表されるため、FOMC後の米景気や金利の見方を左右する材料として注目したい。
日本市場が再開する24日以降は、28日の権利付き最終売買日を目前に控える。海外市場が大きく崩れていなければ、配当取りに加え、配当再投資を先取りした買いも日本株の需給面での下支え要因となりそうだ。
