「ウォーシュ・ロング」損切りが影響か=円高の拡大
代表的な投機筋であるヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、9月1日時点で売り越し(米ドル買い越し)が10万枚近くに拡大していた(図表1参照)。8月28日のウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長のジャクソンホール会議での発言を受けて、米早期利上げ観測が再燃したことで米ドル買い・円売りが広がった影響と考えられた。
ところが9月2日以降、米ドル/円は急落に転じた。そうした中で、ヘッジFの円売りポジションの損益分岐点の目安とされる120日MA(移動平均線)は、9月4日時点では159.8円だったが、それを大きく割り込む動きとなった(図表2参照)。
これにより、ウォーシュ発言をきっかけに大きく増やした米ドル買い・円売りポジション、いわば「ウォーシュ・ロング」は一転して損失が拡大する可能性が高まった。
9月3日、米ドル/円が反発しても159円すら超えられないことを確認すると、その後はほぼ一本調子で155円台まで下落した。これには、「ウォーシュ・ロング」損切りに伴う米ドル売り・円買いの影響が大きかったのではないか。
ヘッジFの円買いは損切りにとどまるのか?
ヘッジFの円買いは、あくまで円売りポジションの損切りにとどまるだろうか。ヘッジFは2026年に入ってから基本的に円売りポジションを拡大する方針を続けてきたが、それは変わらないのか。それとも円買いポジションに転換する可能性もあるだろうか(図表3参照)。
ヘッジFが円買いポジション拡大戦略に動き、一時139円までの米ドル安・円高を主導したのは第2次トランプ政権が発足した直後、2025年前半のことだった。この局面では日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に沿う形で米ドル安・円高が広がり、その中でヘッジFは、空前の規模で米ドル売り・円買いポジションを拡大した。ただこの時のヘッジFの円買い拡大は、論理的には首をかしげたくなるところもあった。
2025年前半の円高を主導したヘッジF「謎の円買い」
この2025年前半、CFTC統計の投機筋の円買い越しは、最大で17万枚まで拡大した。それは、それ以前の最高記録である2016年の7万枚をはるかに上回るものだった。その意味ではまさに空前の円買い拡大だった。
当時、日米の政策金利差は一時より縮小したものの、まだ4%と米ドル買い・円売りに有利な状況が続いていた。それまでは日米政策金利差がほぼゼロまで縮小する中でも円買い拡大が限定的にとどまっていたにもかかわらず、なぜヘッジFは金利差の観点では不利な米ドル売り・円買いを空前規模で積極化したのか(図表4参照)。
ベッセントが想定する「円高になる政策」は実現するのか
このヘッジFの論理だけでは説明できない円買いの確信は、基本的に貿易相手国の通貨安を嫌うトランプ米大統領の考え方を受けたトランプ政権の通貨政策、その責任者がヘッジF業界出身のベッセント財務長官だということの影響があったのではないか。要するに、トランプ政権が円高をもたらす可能性を信じ、ヘッジFは円買い戦略に動いたのではないか。
そのベッセント長官は先週(8月31日週)、「日本には円高になる政策を期待する」、「リフレ政策はやめるべき」などと述べていた。ベッセント長官が想定するように、高市政権がリフレ政策を見直し、財政規律への懸念払しょくを目指すことで「円高になる政策」に動くことに確信が持てるか、ヘッジFが再び円買い戦略に動くかはその点が判断の目安になるのではないか。
