2026年10月「TOPIX刷新」で何が変わる?市場へのインパクトと注目銘柄
2026年10月末から、TOPIX(東証株価指数)が大きく変わります。私たちが日々の株式相場の動きを見るときには、日経平均株価を見ることが多いでしょう。そのため、「TOPIXが変わる」と聞いても、あまりピンとこない方もいるかもしれません。
しかし、実際の資産運用の世界では、TOPIXは非常に重要な指数です。国内株式を運用する際のパフォーマンスを測る基準として広く使われているほか、TOPIXに連動する投資信託も数多くあります。
そのため、TOPIXを構成する銘柄が変われば、株式市場にも影響が及びます。TOPIXに連動して運用する資金は、指数の変更に合わせて保有銘柄を入れ替える必要があるからです。新たにTOPIXに加わる銘柄には買い需要が発生する一方、除外される銘柄には売り需要が発生します。
そこで今回は、10月30日からTOPIXがどのように変わるのか、その仕組みを確認するとともに、どのような銘柄が注目されるのかをデータから探ってみたいと思います。
なぜ今、TOPIXを大きく変えるのか
現在のTOPIXの仕組みと「市場区分」に縛られる課題
今一度、現在のTOPIXについて確認しましょう。
TOPIXは、225銘柄に限って算出する日経平均株価とは異なり、日本の株式市場全体の動きを表す指数とされています。現在のTOPIXは東証の市場区分と結びついており、プライム市場に新規上場した銘柄はTOPIXに組み入れられる仕組みになっています。
現在のTOPIXには、過去に東証1部に上場していた銘柄の多くについて指数の連続性を保つため、スタンダード市場やグロース市場の銘柄も含まれています。ただし、これらの市場に新規上場した銘柄はTOPIXには組み入れられません。つまり、現在のTOPIXにはスタンダード市場やグロース市場の銘柄も含まれているものの、新たにTOPIXに加わるためには、基本的にプライム市場に入る必要があったわけです。
市場区分から脱却へ、規模と流動性を重視する「次期TOPIX」
では、なぜTOPIXの仕組みを見直すのでしょうか。
現在の仕組みでは、スタンダード市場やグロース市場に、時価総額が大きく売買も活発な銘柄があったとしても、その市場に上場している限り、新たにTOPIXに加わることはできません。一方で、プライム市場に上場すればTOPIXへの組み入れ対象となります。これでは、日本の株式市場全体の動きを表すというTOPIXの役割を考えた場合、どの市場に上場しているかによって銘柄を選ぶことが必ずしも適切とはいえません。
そこで今回の見直しでは、TOPIXの構成銘柄を市場区分から切り離して選ぶ仕組みに変わります。プライム市場だけでなく、スタンダード市場やグロース市場の銘柄も同じ土俵で候補とし、その中から流動性や時価総額などを基準に銘柄を選びます。
つまり、「どの市場に上場しているか」ではなく、「市場でどれだけ売買され、どの程度の規模があるか」を重視する指数へ変わるということです。これは、日本の株式市場をより広く捉えながら、TOPIXを実際の運用にも使いやすい指数にしていくことが狙いです。
本稿では、こうした見直し後のTOPIXを、現在のTOPIXと区別するため「次期TOPIX」と呼ぶことにします。
1,636銘柄から987銘柄へ、追加される株・除外される株
次期TOPIXの銘柄選定や算出ルールの詳細については、日本取引所グループやJPX総研の公表資料をご覧いただきたいと思います。ここで重要なのは、2026年10月30日から次期TOPIXへの移行が始まるにあたり、どの銘柄を組み入れ、どの銘柄を除外するのかを決める必要があるという点です。
その銘柄選びの基準となるのが、2026年8月末時点で取得できる時価総額や売買代金などのデータです。つまり、8月末のデータを使って、次期TOPIXの構成銘柄が選ばれることになります。
もちろん、現時点では実際にどの銘柄が採用・除外されるのかは日本取引所グループなどから公表されていないため確定していません。ただ、銘柄選定のルールが公表されているため、そのルールに沿って計算することで、次期TOPIXがどのような銘柄で構成されるのかをシミュレーションすることは可能です。
そこで、8月末時点のデータを使ってシミュレーションしました。その結果、8月末時点のTOPIXが1,636銘柄で構成されているのに対して、次期TOPIXでは987銘柄となり、銘柄数は現在の6割程度まで減少すると推計されました。
このように構成銘柄が大きく変われば、当然、株式市場にも影響が出てきます。冒頭でも触れたように、TOPIXへの完全連動を目指すインデックス運用(パッシブ運用)では、TOPIXの構成銘柄に合わせて株式を保有します。そのため、次期TOPIXから除外される銘柄については、TOPIXの変更に合わせて保有株を売却する必要があります。反対に、新たに採用される銘柄については、TOPIXへの連動を維持するために新たに購入する必要があります。
つまり、次期TOPIXへの移行は、単に指数の銘柄数が変わるだけではありません。除外候補には売り需要、追加候補には買い需要が発生する可能性があるため、実際の株価にも影響を与える可能性があるのです。
マクドナルドなど新市場からも、次期TOPIX「追加候補」シミュレーション
では、実際にどのような銘柄が次期TOPIXに加わる可能性があるのでしょうか。
図表1は、今回のシミュレーションで次期TOPIXへの追加候補となった銘柄のうち、次期TOPIXにおける推計ウエイトが高い上位15社を示したものです。
注2:次期TOPIX推計ウエイトは、2026年8月31日時点で次期TOPIXへの移行が完了したと仮定して算出した推計値
注3:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料をもとに、次期TOPIXの銘柄選定ルールに基づいてシミュレーションした推計値であり、実際の採用銘柄とは異なる場合がある
注4:第4位のGO(581A)は2026年6月16日に上場した銘柄であるが、次期TOPIXの銘柄選定ルールに基づくシミュレーションでは採用対象になると推計している
出所:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料を参考にQUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
最もウエイトが高いのは日本マクドナルドホールディングス(2702)で、フェローテック(6890)、セリア(2782)などが続きます。興味深いのは、これらの追加候補の多くがスタンダード市場やグロース市場に上場していることです。
例えば、日本マクドナルドホールディングスやフェローテック、セリアはスタンダード市場の銘柄です。これまでであれば、スタンダード市場に上場しているため、新たにTOPIXに加わることはありませんでした。しかし、次期TOPIXでは市場区分にかかわらず銘柄を選ぶため、こうした時価総額が大きく、売買も活発な銘柄が新たに採用される可能性があります。
このように見ると、今回のTOPIXの変更は、単に構成銘柄を減らすだけではないことが分かります。プライム市場を中心としてきた従来の仕組みから、市場区分にかかわらず、流動性や時価総額などを基準に銘柄を選ぶ仕組みへ変わることで、スタンダード市場やグロース市場から新たにTOPIXへ加わる銘柄が出てくることも大きな特徴です。
銘柄入れ替えで売り圧力も?次期TOPIX「除外可能性」シミュレーション
一方、図表2は、次期TOPIXから除外されると推計した銘柄のうち、現在のTOPIXにおけるウエイトが高い上位15社を示したものです。こちらは客観的なルールで試算した推計ですが、除外となる可能性があるというだけで、除外を確定するものでないことは注意点です。
注2:推計除外ウエイトは、次期TOPIXへの移行に伴いTOPIXから除外されると推計したウエイト
注3:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料をもとに、次期TOPIXの銘柄選定ルールに基づいてシミュレーションした推計値であり、実際の除外銘柄とは異なる場合がある
注4:客観的なルールで試算した推計で除外を確定するものではない
出所:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料を参考にQUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
大型株に追い風、小型株に逆風となる可能性
注目したいのは、図表1の追加候補とは対照的に、図表2に示した除外となる可能性のある上位15社はすべてプライム市場に上場していることです。
今回のシミュレーションでは、次期TOPIXの構成銘柄987社の内訳は、プライム市場が942社、スタンダード市場が33社、グロース市場が12社となりました。次期TOPIXでもプライム市場の銘柄が中心であることに変わりはありません。
一方、除外されると推計した684社の内訳を見ると、プライム市場が574社と83.9%を占め、スタンダード市場が109社で15.9%、グロース市場が1社で0.1%となっています。つまり、プライム市場に上場していても、流動性や時価総額などの基準を満たさなければ除外されるのが次期TOPIXの大きな特徴です。
ここから株式市場への影響を考えると、もう一つ重要なポイントが見えてきます。プライム市場のなかでも規模が小さい銘柄には、TOPIXからの除外に伴う売り需要が発生する可能性があります。反対に、スタンダード市場などに上場する規模の大きな銘柄には、新規採用に伴う買い需要が発生する可能性があります。
つまり、今回のTOPIX見直しは、市場区分を超えて規模が大きく流動性の高い銘柄を選び、規模が小さく流動性の低い銘柄を絞り込む方向の見直しと見ることもできます。そのため、TOPIX連動資金(ファンド)の売買という需給面からは、全体として大型株には追い風となる一方、小型株には向かい風となる可能性があります。
165兆円の資金が動く? 注目したい「買い需要」の大きさ
では、こうしたTOPIXの変更によって、追加候補の銘柄にはどの程度の買い需要が発生するのでしょうか。
日本取引所グループは「TOPIXの見直し」というウェブサイトのなかで、2024年3月末時点で「TOPIXを投資対象とするETF及び年金信託運用等の連動運用資産は約110兆円となる」と示しています。その後、TOPIXは2024年3月末の2,768ポイントから2026年8月末には4,156ポイントまで約50%上昇しました。そこで、連動運用資産もTOPIXの上昇に合わせて増加したと仮定すると、その規模は約165兆円となります。
もちろん、実際の連動運用資産は資金の流入や流出などによっても変化するため、165兆円はあくまで今回の分析のために置いた仮定です。そこで、この165兆円をベースに、次期TOPIXへの変更によって追加候補の銘柄にどの程度の買い需要が発生するのかを試算しました。
計算の考え方はシンプルです。まず、165兆円に各銘柄の次期TOPIXでの推計ウエイトを掛けることで、TOPIXへの連動運用に必要となる金額を推計します。すでに現在のTOPIXに含まれている銘柄については、現在のウエイト分を差し引き、次期TOPIXへの変更によって新たに必要となる買い需要を求めました。
金額の大きさだけじゃない?株価を動かす「買い需要インパクト」とは
ただ、買い需要の金額が大きいだけでは、株価への影響が大きいとは限りません。普段から売買代金が非常に大きい銘柄であれば、大きな買い需要が発生しても市場で吸収しやすいからです。反対に、普段の売買がそれほど多くない銘柄に大きな買い需要が発生すれば、株価への影響も大きくなる可能性があります。
そこで図表3では、推計した買い需要を、各銘柄の2026年8月の日次売買代金の中央値で割りました。これを「買い需要のインパクト(日数)」としています。これは、次期TOPIXへの変更で発生すると推計される買い需要が、その銘柄の普段の売買代金の何日分に相当するかを示したものです。
例えば、10日であれば普段の10日分、50日であれば50日分の売買代金に相当する買い需要が発生すると考えることができます。数字が大きいほど、普段の売買規模に比べてTOPIX変更による買い需要が大きいことを意味します。
図表3は、この「買い需要のインパクト」が大きい上位15社を示したものです。
注2:次期TOPIX推計ウエイトは、2026年8月31日時点で次期TOPIXへの移行が完了したと仮定して算出した推計値
注3:買い需要のインパクト(日数)は、TOPIXの連動運用資産を165兆円と仮定し、次期TOPIXへの変更に伴う推計買い需要を1日平均売買代金で除して算出
注4:1日平均売買代金は、2026年8月の日次売買代金の中央値を使用
注5:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料をもとに、次期TOPIXの銘柄選定ルールに基づいてシミュレーションした推計値であり、実際の採用銘柄や売買需要とは異なる場合がある
出所:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料を参考にQUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
ここで重要なのは、図表1で示した次期TOPIXでのウエイトが大きい銘柄と、買い需要のインパクトが大きい銘柄は同じではないという点です。例えば、次期TOPIXでの推計ウエイトだけでなく、その銘柄が普段どの程度売買されているかによって、買い需要のインパクトは大きく変わります。
したがって、次期TOPIXへの変更が個別銘柄の株価に与える影響を考える際には、単に「追加されるかどうか」だけでなく、追加に伴う買い需要が普段の売買規模に対してどの程度の大きさになるのかを見ることが重要になります。
すでに市場は動いている?それぞれの「株価パフォーマンス」を比較
そこで実際に、足元の株価パフォーマンスを見てみましょう。
今回のシミュレーションでは、次期TOPIXへの推計追加候補が35銘柄、推計除外候補が684銘柄となりました。そこで、それぞれの銘柄群について、2026年7月31日を基準として、8月31日までの1ヶ月間の株価推移を調べました。
具体的には、各銘柄について7月31日の配当込み基準値を0%として、その後の累積リターンを算出し、追加候補35銘柄、除外候補684銘柄について、それぞれ等金額で投資した場合の平均リターンを求めています。
その結果、8月の1ヶ月間では、推計追加候補銘柄のパフォーマンスが推計除外候補銘柄を上回りました。次期TOPIXへの見直しについては、これまでも市場である程度話題になっており、公表された銘柄選定ルールを使ったシミュレーションなどから、どの銘柄が追加・除外の候補になりそうかを探る動きもあったと考えられます。こうした思惑が、追加候補銘柄の株価を押し上げる一因になった可能性があります。
注2:推計追加候補全銘柄(35銘柄)、推計除外候補全銘柄(684銘柄)は、日本取引所グループ、JPX総研の公表資料をもとに、次期TOPIXの銘柄選定ルールに基づいてシミュレーションした銘柄群
注3:推計買い需要インパクト15社は、次期TOPIXへの移行に伴う買い需要のインパクトが大きいと推計した上位15社
注4:各銘柄について2026年7月31日の配当込み基準値を0%として、その後の累積リターンを算出し、各銘柄群について等金額投資した場合の平均リターンを示している
出所:日本取引所グループ、JPX総研の公表資料を参考にQUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
10月末で終わらない、2028年まで続くTOPIX大改革
ただ、ここから先は注目される銘柄が次第に変わってくると考えています。
これまでは、「どの銘柄が次期TOPIXに採用されるのか」が大きな関心事でした。図表4で推計追加候補銘柄のパフォーマンスが推計除外候補銘柄を上回っていることからも、まずは次期TOPIXへの採用そのものを期待した物色が先行してきた可能性があります。
特に、次期TOPIXでのウエイトが大きいと予想される銘柄は、TOPIX連動資金(ファンド)からまとまった買いが入るとの期待も高まりやすく、実際の選定結果が公表される10月第5営業日の10月7日頃までは、こうした追加候補銘柄が引き続き注目されやすいと考えられます。
「採用期待」から「実際の買い需要」へ、発表後に物色先はどう変わる?
しかし、実際の採用銘柄が公表されれば、「どの銘柄が入るのか」という不確実性はなくなります。それまで採用期待で買われてきた銘柄については、採用そのものが株価に織り込まれていくことも考えられます。そこで、次の注目点になるのが、「採用されるか」から「実際にどれだけの買い需要が発生するか」への変化です。
図表3で示した「買い需要のインパクト」が大きい銘柄は、これまでの株価パフォーマンスでは追加候補全体ほど目立っていません。しかし、普段の売買規模に比べてTOPIX連動資金(ファンド)からの買い需要が大きいと推計される銘柄ほど、実際の移行が近づくにつれて、その需給インパクトが意識されやすくなる可能性があります。つまり、10月7日頃の発表までは「採用されそうな銘柄」、発表後は「採用によって大きな買い需要が見込まれる銘柄」へと、物色の焦点が徐々に移っていく可能性があります。
移行完了は約2年後、8段階の切り替えで「需給インパクト」は中長期のテーマへ
そして、その次の重要な日程が10月30日です。この日から次期TOPIXへの実際の移行が始まります。ただし、10月30日に現在のTOPIXから次期TOPIXへ一度に切り替わるわけではありません。2026年10月から2028年7月まで、3ヶ月ごとに8回に分けて段階的に移行していきます。イメージとしては、2年近くの時間をかけて、現在のTOPIXから次期TOPIXへ少しずつ近づけていくというものです。
そのため、TOPIX見直しに伴う需給への関心も、10月末だけで終わるものではないと考えられます。特に図表3で取り上げたような、普段の売買規模に比べて買い需要のインパクトが大きい銘柄については、10月末だけの短期的な材料ではなく、次期TOPIXへの移行が進むなかで、中期的に需給面から注目していきたいところです。
