先週(12月23日週)の動き:米長期金利と米ドル高の中でNY金に底堅さ、国内金価格には円安プレミアム持続

先週(12月23日)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、12月25日のクリスマスの祭日を挟み、12月24日は短縮取引になるなど、いわゆるホリデーシーズンの薄商いの中、週足ベースで続落となった。週を通しての特徴は、米長期金利の指標となる10年債利回りの上昇が続いたことである。さらに主要通貨に対して米ドルが上昇、ドル指数(DXY)も年初来高値を更新するという、金市場には強い向かい風が吹く環境となった。週末12月27日のNY金は2,631.90ドルで終了。週足は前週末比13.20ドル、0.5%の続落となった。

売り戻された金ETF

前回のコラムでは、12月20日に金ETF(上昇投資信託)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア[GLD]」の残高が1日で16.66トンの増加と、1日としては2年11ヶ月ぶりの記録的な資金流入となったことを取り挙げた。同日に米2025年度つなぎ予算の期限が到来するにもかかわらず、通常取引の時間帯までに新たな予算の成立の目途が立たず、政府機関の閉鎖などが予見され、逃避資金が金ETFに流入したものだった。ただそれも、時間切れとなった21日未明に成立を見ることになった。

警戒が解けた週明け12月23日のNY金は売られることになった。「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア[GLD]」の先週(12月23日週)の残高は同日を含め4.88トン減少した。それでも12月20日に増加した分のうち10トン超は残ったことになる。

米10年債8ヶ月ぶり、DXY2年1ヶ月ぶり高水準

一方、3月14日までのつなぎ予算ではあるものの予算が成立したことで、米10年債利回りは上昇し、12月26日には一時4.651%まで上昇、週末12月27日の終値でも4.630%と8ヶ月ぶりの高水準で終了した。米ドルも上昇し、DXYは24日には終値で108.257と約2年1ヶ月ぶりの高値で終了した。

逆風の中でNY金は底堅く推移

こうした中で先週(12月23日週)のNY金のレンジは2,623.20~2,655.70ドルとなった。財政協議を波乱なく乗り切ったこと、前週末から米長期金利が上昇基調を強めていたことを受け、売り優勢の流れを読み想定レンジを2,590.00~2,645.00としていた。薄商いとはいえ、買い手掛かりより売り手掛かりが目立った中で、底堅く推移したと言える。

国内金価格には円安プレミアム

一方、国内金価格(JPX金)は引き続き米ドル/円相場が強含み(円安方向)に推移したことがサポート要因となった。大阪取引所の先物価格JPX金の週足は、続落したNY金とは対象的に反発した。週後半の12月26日には1ドル=158.10円と5ヶ月ぶりの水準まで円安が進んだことで、一時1万3500円に接近し、週末の終値は1万3451円となり、前週末比255円、1.9%の反発となった。日銀は年明け1月の会合でも利上げを見送るとの見方が強まったことが、円安が進んだ背景とされる。

JPX金の先週のレンジは1万3156~1万3496円と、こちらも下限が想定レンジ(1万2900~1万3496円)とかい離した。これはNY金が底堅く推移したことと、円安プレミアムによる。

ホリデーシーズンの米国債大量入札

先週(12月23日週)、米10年債利回りに押し上げ圧力が高まった背景には、もう一つ市場内の需給要因がある。クリスマスや年末前で市場参加者が少ない中で、先週は米財務省による国債の大量入札(新規発行)が実施され、需給要因から金利の押し上げ圧力を高めたとみられる。

12月23日は690億ドル(約11兆円、1ドル=157円)の2年債入札が実施され堅調に終了。12月24日には700億ドルの5年債入札、12月26日に440億ドルの7年債入札が実施され、いずれも引き合い(応札)は強く順調に消化された。12月24日はクリスマスの祭日前のためNY債券市場は短縮取引で午後は休場となったが、それでも700億ドルもの入札が実施された。

年末にもかかわらず駆け込み的な新規発行が続くのは、2025年1月1日に「連邦債務上限無効法案」の期限が到来することと無関係ではないだろう。翌1月2日以降、償還分(満期分)を超える新規発行ができなくなる可能性があるからだ。参加者の少ない薄商いの中での強硬発行は金利に押し上げ圧力をかけたとみられる。

悪い米金利上昇は買い要因

このところ10年物や20年、30年物といった長期債の利回りが上昇気味になっている。原因として、連邦政府の債務拡大にこの数年拍車がかかっていること、さらにトランプ次期政権による減税延長や新規減税案などから長期債のリスクプレミアムが上がっていることがある。

金市場の視点からは、一般に米長期金利の上昇は売り手掛かりにされる。しかし債務拡大に伴う発行量増加による上昇、すなわち悪い金利上昇が顕著になると、買い手掛かりに転じるとみられる。

今週(12月30日週)および来週(1月6日週)の見通し:来週(1月6日週)末にかけ米主要指標の発表、6日に次期米大統領正式決定、8日にFOMC議事要旨公開で情報発信増える見込み

年末年始のニューヨーク市場は1月1日のみ休場となり、その他は通常通りとなるが、前半を中心に薄商いとなりそうだ。

1月3日(金)の12月ISM製造業景況指数を皮切りに、1月7日(火)には12月ISM非製造業景況指数、1月10日(金)には12月米雇用統計、ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)と注目指標の発表が続く。

1月8日(水)には、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨が公開される。2025年の利下げ見通しが9月会合時から半分の2回に減少するなど、FOMCメンバー間でインフレ警戒感が再び高まっていることを思わせたが、景気見通しを含めどんな意見があったのか注目したい。

米国の政治日程では、1月3日(金)から上下両院ともに新議会がスタートする。1月6日(月)には上下両院合同委員会が開かれトランプ氏が次期米大統領として正式決定され、1月20日(月)に大統領就任式が行われる。その間にもトランプ次期大統領は公約を含む政策方針を発表するとみられ、市場が反応する可能性は高いと思われる。

年末年始から来週(1月6日週)末にかけてNY金は2,600ドル台前半、JPX金は1万3000円台前半を中心にした滞留が続くとみられる。