先週(11月10日週)の動き:FRBの12月利下げ観測の振れでNY金、国内金価格ともに値幅拡大、利下げ慎重発言目立つFRB高官発言

先週(11月10日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、やや上下動の大きな週となった。12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ継続観測の強弱感の揺れに反応する形で上下200ドルを超える値動きとなった。

FRB12月利下げ観測の高まりで米国株とNY金上昇

米国議会下院にて11月12日に2026年度のつなぎ予算が可決され、所定の手続きを経て成立した。週初からその見通しに沿って米連邦政府機関の閉鎖解除を好感し、中断されていた主要経済指標の発表再開によりFRB(米連邦準備制度理事会)の政策判断もしやすくなることを期待し、米株式市場ではダウ30種平均が週前半には連日で最高値を更新していた。一方で、AI関連のビッグテック株を中心に売りが続くなど業種別の温度差も目立っていた。しかし前提となっていたのは、複数の民間部門がそれまでに発表していた米労働市場のデータの減速を手掛かりにした、FRBによる12月の利下げ継続見通しだった。

NY金もこの流れに乗り12月利下げ期待から株式市場との連動性を強め、週初めから買いが先行する流れとなった。米政府機関の閉鎖解除が決まった11月12日の終値4,213.6ドルは、約3週間ぶりの高値水準だった。その勢いを維持する形で翌11月13日のNY時間外のアジア時間午前には一時4,250.0ドルまで買われ、10月20日の過去最高値(4398.0ドル)に対する戻り高値を更新した。

FRB高官の利下げ慎重発言重なり、NY金上げ幅失う

ただし、その騰勢も11月13日のNYの時間帯に至るまでには一巡し、NY時間には一転売り優勢に転じた。先週(11月10日週)は政府関連のデータ発表がない中で、多くのFRB高官の発言機会があり、11月13日には12月利下げに対し慎重な見通しがいくつか伝えられたことが要因とみられる。

この日、クリーブランド地区連銀のハマック総裁は労働市場に懸念を示しながらも、インフレを一段と抑制するために政策金利を据え置くべきだとの考えを表明。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはないと述べた。

セントルイス地区連銀のムサレム総裁はインフレ率が当局目標の2%を上回る現状では、追加利下げには慎重に臨むべきだとの見解を示した。

一方、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、前回の10月の会合での利下げを支持しなかったと述べ、次回12月会合で取るべき対応については判断を保留しているとした。

さらにサンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁は12月に利下げを実施すべきかを判断するには、時期尚早だと語った。会合までに多くの経済指標の発表があり、「柔軟な姿勢を保っている」と強調した。

低下する12月利下げ確率

こうした中で11月14日のNY金はNY午前の早い時間帯に売りが加速し、大幅続落した。NYコメックスの通常取引は前日比100.30ドル安の4,094.20ドルで終了した。

この日もFRB高官の利下げ慎重発言が伝わった。カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁やダラス地区連銀のローガン総裁が、12月のFOMCでの利下げに反対する姿勢を示したことを受けたものだった。金融市場では12月利下げの織り込みが急速に後退している。短期金利先物から算定される、12月の利下げ確率(フェドウォッチ)は10月初めの約90%から11月10日週の初めには60%強に、週末11月14日には40%台まで低下している。利下げ観測の後退とともにNY金は売り優勢となった。

それでも先週(11月10日週)のNY金の週足は前週末(11月7日)比84.40ドル(2.10%)上昇で2週続伸した。レンジは4,004.2~4,250.0ドルで値幅は245.8ドルとなった。値幅は前週(11月3日週)の107.4ドルから2倍以上に広がった。

JPX金、4週ぶりに反発

NY金の振れ幅拡大を受ける形で国内金価格の値動きも大きくなった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の11月14日の終値は2万1220円となり週足は前週末(11月7日)比1133円(5.64%)高で4週ぶりに反発した。

米ドル/円相場が一時155円台に入り、2025年2月以来の高値(円安)となるなど週を通して上下はあれ、終値では154円台にとどまり、かつ円安方向となったことから週足の上昇幅、率ともに拡大した。NY金の高値となった4,250.0ドルの際は、2万1580円まで買われた。一方、11月14日のNY金大幅続落を映した11月14日のJPX金夜間取引では一時2万405円まで水準を切り下げている。

なお先週(11月10日週)のレンジは、1万9946~2万1580円で値幅は1634円と、NY金と同様に前週(11月3日週)748円から2倍以上に広がった。

今週(11月17日週)の動き:米主要経済指標の発表再開、ミシガン大学消費者信頼感指数、エヌビディア決算やFRB高官発言に注目、NY金4,000~4,150ドル、JPX金1万9900~2万1000円を想定

9月の米雇用統計

今週(11月17日週)は米政府機関の閉鎖が解除されたことで、まずは集計が進んでいたとみられる9月の米雇用統計が11月20日(木)に発表予定となっている。足元では民間の労働統計が弱含みの結果になっているが、9月のデータではあるものの12月のFRBの政策判断を占う上で要注目となる。

ミシガン大学消費者信頼感指数、エヌビディア決算に注目

経済指標では政府閉鎖の影響を受けない11月20日(木)の11月フィラデルフィア地区連銀製造業景況指数、11月21日(金)の11月S&PグローバルPMI速報値、11月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値が要注目となる。

ミシガン大学消費者信頼感指数は、速報値の落ち込みが市場の手掛かり材料となった経緯がある。さらに市場関連では11月19日(水)の半導体大手エヌビディア[NVDA]の決算発表はNY金を見る上でも目が離せない。このところビッグテック銘柄とNY金が連動性を高めており、株式市場に広く影響を与える銘柄はNY金にも影響を及ぼしそうだ。

NY地区連銀ウィリアムズ総裁の発言、10月のFOMC議事要旨に注目

さらに今週(11月17日週)も多数のFRB高官の発言機会が予定されている。12月の利下げ見通しを探るうえで市場の関心度は高い。NY地区連銀のウィリアムズ総裁の講演は今週3回予定されているが、特に11月20日(木)の9月米雇用統計発表後となる11月21日(金)の講演での発言に注目したい。他には11月20日のシカゴ地区連銀グールズビー総裁(2025年投票権あり)、11月21日(金)のダラス地区連銀ローガン総裁(2026年投票権あり)の発言内容に注目したい。また11月19日(水)には10月のFOMC議事要旨が公開される。

こうした中でNY金は4,000~4,150ドル、JPX金は1万9900~2万1000円を想定している。