先週(11月24日週)の動き:NY金12月利下げを織り込み約5週間ぶりの高値、FRB次期議長人事を巡る観測、JPX金も6週間ぶり高値水準
先週(11月24日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、FRB(米連邦準備制度理事会)による12月利下げ観測の高まりを背景に週末にかけて水準を切り上げた。11月27日が感謝祭の祝日になる関係で4営業日となったが、4営業日すべて上昇で取引を終えた。ちょうど11月26日に2025年12月物から2026年2月物に取引の中心となる限月(Active Month)が変更され、その間の金利相当分がプレミアムとして2月物の価格に加味されることも、押し上げ要因となった。感謝祭の祝日と週末に挟まれた11月28日のNY金の終値は、薄商いの中で前日比52.6ドル水準を切り上げ4,254.9ドルで終了した。終値ベースで10月20日以来約5週間ぶりの高値水準となる。
週足は前週末比175.40ドル(4.30%)の上昇で反発した。レンジは4,036.4~4,263.1ドルで値幅は226.7ドルと前週の136.9ドルから90ドルほど拡大した。後述するように12月利下げを織り込み、10月21日の急落後の調整局面をほぼ終えることになったとみられる。なお11月の月足は前月末比258.40ドル(6.47%)高で4ヶ月続伸となった。
FRB有力高官の利下げ支持発言続く
前々週末11月21日に伝わったニューヨーク地区連銀ウィリアムズ総裁による12月利下げ予測発言(「近い将来」に利下げを実施できる)で押し上げられた利下げ観測は、週明け11月24日の複数のFRB有力高官による発言でさらに高まった。
FRBのウォラー理事は、11月24日の米FOXビジネスで「労働市場は軟調で、弱まり続けている一方で、インフレは緩和すると予想されている」と発言。さらに「こうした状況から12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げを決定するのは適切」との考えを示した。ウォラー理事は米トランプ大統領が次期FRB議長として候補者に挙げている人物で、発言に対する市場の注目度も高い。
さらに同日11月24日の午後遅い時間帯には、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁によるインタビュー記事が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された。同氏は雇用市場の悪化懸念を背景に12月FOMCでの利下げを支持。急速な労働市場の悪化はインフレ再燃よりも起こりやすく対応も難しいとして、労働市場についてFRBが後手に回るリスクを懸念していると表明した。なお同氏は11月13日にダブリンで開かれたイベントで12月FOMCで利下げすべきか判断するには時期尚早だとしていたが、一転し利下げ支持を表明。FRB執行部に近い人物と目されており、発言には一定の影響力がある。
この2名のFRB高官の発言を受け、11月24日のNY金は一時4,138.2ドルまで買われ、時間外取引は4,133.50ドルで終了していた。
次のFRB議長に米ハセット国家経済会議(NEC)委員長
さらに11月25日には、次期FRB議長候補者を巡る報道にNY金は反応した。この日、米ブルームバーグ通信が、選考が大詰めを迎えているとされる次期議長候補として、ハセット国家経済会議(NEC)委員長が最有力候補に浮上していると報じた。ハセット氏は5人に絞られているとされる候補者の中で、もっともトランプ米大統領に対する忠誠心が強いとされている人物で、緩和策に積極的に乗り出すとみられている。11月20日に遅れて発表された9月の米雇用統計の結果(前月比雇用者数が予想を大きく上回る増加)を受けて、データは利下げすべきであることを示しているとして、自身がFRB議長なら「今まさに利下げしているだろう」(FOXニュース)と述べていた。
仮に指名となれば、トランプ米大統領としては、自身の思惑に沿い、かつ信頼を寄せる腹心を独立機関であるFRBに送り込むことになる。ベッセント米財務長官によると最終的な候補者の指名は、12月クリスマス前にトランプ米大統領により発表されるという。果たしてこの人事が市場に好意をもって迎えられるか否かがポイントになる。
金市場のみならず株式市場を含めFRBの政策は利下げ方向であることを織り込み、週末と月末が重なった11月28日の取引は上昇で終了した。NY金については、前述したが5週間ぶりの高値となる4,254.9ドルで終了した。
NY金の上昇を映しJPX金も6週間ぶりの高水準
週初め11月24日が祝日で4営業日となった国内市場の金価格も、NY金の上昇を映す形で週足は反発した。11月27日の大阪取引所の金先物価格(JPX金)の終値は、2万1448円となった。終値ベースで過去最高値(2万2030円)を記録した10月17日以来6週間ぶりの高値水準となる。週足は前週末比729円(3.52%)高の反発となった。レンジは2万250~2万1458円で値幅は881円で前々週の996円から縮小した。
高市政権は11月28日に2025年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の歳出は18.3兆円で、財源の過半を国債の増発でまかなうとする内容となっている。長期金利の上昇と円安が懸念されるが、先週(11月24日週)は米国サイドで利下げ観測が高まったことで、米ドル/円相場は156円台前半をコアレンジとして横ばいとなり、国内金価格には中立的だった。市場では157円を超える円安方向の動きに、為替介入への警戒感も高まっている。
今週(12月1日週)の動き:9月のコアPCEデフレーター、12月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)に注目、NY金4,240~4,350ドル、JPX金は2万1200~2万1900円を想定
12月9~10日にFOMCを控えFRB高官は政策関連の発言を控えるブラックアウト期間に入っていることから、今週(12月1日週)は米国関連の指標とそれらを補完する民間経済指標に関心が集まることになる。ただし、FOMCでの討議の参考資料となる米雇用統計(12月16日)も消費者物価指数(CPI、12月18日)の発表もFOMCの後になる。そうした中で11月26日から12月5日に再延期された9月の個人消費支出(PCE)コア価格指数(コアPCEデフレーター)は要注目となる。それでも9月分であり割り引く必要がありそうだ。
判断材料となるデータ不足を補うために民間データを利用する。月初ということもあり複数の発表が控えている。まず12月1日(月)11月ISM製造業景況指数、12月3日(水)同ISM非製造業景況指数、さらに同日の11月ADP全米雇用報告、12月5日(金)12月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)がある。ちょうどホリデーシーズン入りでブラックフライデー、ブラックマンデーと個人消費の動向に関心が向けられるタイミングでもある。実際に米個人消費は予想外とも言える堅調さを維持しており、利下げ判断にも影響を与える可能性もありそうだ。中でも12月の速報値ということでミシガン大の数値に注目している。
こうした中でNY金は4,240~4,350ドル、JPX金は一定の円高を考慮し2万1200~2万1900円を想定している。
