先週(11月17日週)の動き:ビックテック銘柄と連動性強めたNY金、FRB12月利下げ観測の強弱で上下動、流れを変えたウィリアムズ発言、国内金価格は円安サポート利かず反落
NY金、米国株と連動性高める欧米主導の上昇
先週(11月17日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は4,050ドルを挟み上下30ドルをコアレンジとしてほぼ4,000~4,100ドルのレンジ内での動きとなった。
9月に入り上昇が加速し、10月中旬にかけて過熱した相場は、その後下旬にかけて急落し調整局面入りすることになった。一連の価格展開を主導したのは米系を中心とする欧米投資マネーだが、大きな特徴として米先端半導体大手エヌビディア[NVDA]をはじめ米株式市場で人気が集中しているビックテック銘柄の買いとともに、NY金や金ETF(上場投資信託)を同時に買い進むという手法を取っていることだった。米株式市場ではマグニフィセント7と呼ばれる一群の銘柄が集中買いされ、バリュエーションの高さに対する警戒感も強く、急反落を警戒する投資家がヘッジ目的でNY金の買いポジションを積み増す動きが指摘されてきた。
つまりNY金と米株の連動性がここにきて目立っている。それゆえ11月17日更新の当欄にて、注目材料として11月20日に予定されていたエヌビディアの決算に注目とした。
言うまでもなくその結果に対する市場の評価が、米株の方向性に影響を与え、ひいてはNY金へ影響が及んだと考えられる。
ビッグテック銘柄につれ安したNY金
実際に先週(11月17日週)はそうした連動性が顕著に出た週だった。米株市場ではこれまで大手のAI(人工知能)関連会社による巨額設備投資の計画とその資金調達の発表が続いてきた。その一方で、巨額設備投資に対する収益化への疑念も根強く、それが該当銘柄のバリュエーションの高さへの警戒感を強めさせている。
週初からハイテク株比率が多いナスダック総合株価指数の下げが目立ち、ビッグテック銘柄の大きめの下げの際には、NY金に利益確定やポジション(持ち高)整理とみられる売りが膨らむタイミングがあった。
FRB12月利下げ観測の後退
さらに先週(11月17日週)、米株市場とNY金がともに手掛かり材料として注目したのは、12月のFRB(米連邦準備理事会)の政策方針だった。12月9~10日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)の利下げ観測の強弱の振れが米株式とともにNY金にも上下動をもたらした。
10月28~29日開催のFOMC以降、毎週多くのFRB高官の講演など発言機会が続き、12月の利下げに対するそれぞれの見方が報じられた。総じて2%の目標に対し3%程度で高止まりしているインフレへの警戒感が強調された。実施すれば3会合連続となる12月の利下げには慎重意見が多く、利下げ観測の後退は米株とともにNY金の売り手掛かりとされた。
さらに過去最長の記録を振り替えた米政府機関の閉鎖の影響から、政策決定に欠かせない米労働市場と米インフレ関連のデータの発表が延期され、12月FOMCに間に合わないことも、今回は判断保留の様子見との見方から利下げ観測の後退につながった。
折しも11月19日にFRBが公表した10月FOMCの議事要旨では、多くの当局者が「年内は政策金利の据え置きが適切である可能性が高い」との意見を示していた。また、「幾人かの」当局者が10月会合で利下げに反対の立場を示したと記した。そのため、流れとしては、NY金の4,000ドル割れも想定できた。
市場の空気を変えたウィリアムズ発言
そうした市場の空気を一変させたのが11月21日に伝わったニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁の発言内容だった。この日、ウィリアムズ総裁はチリ中央銀行のイベントで講演し、現行政策は足元で「緩やかに引き締め的」との見方を示し、FRBはインフレ目標をリスクにさらすことなく「近い将来」に利下げを実施できると発言した。ニューヨーク地区連銀総裁はFOMCの副議長を務め、常に投票権を持っている立場でもある。そのため同総裁の発言を受け12月の利下げ観測が高まることになった。
11月17日更新の当欄にて、「ウィリアムズ総裁の講演は今週3回予定されているが、特に11月20日(木)の9月米雇用統計発表後となる11月21日(金)の講演での発言に注目したい」としていた。同総裁はジャネット・イエレン前FRB議長の後任としてサンフランシスコ地区連銀の総裁に就任し、その後ニューヨーク地区連銀総裁に転じた経緯がある人物である。パウエル現議長とも近い人物でもあることから、足元でFRB内の意見の割れが伝えられる中で要注目と記載したのである。
ウィリアムズ総裁の発言により市場に安心感が広がり、11月21日の米国株は主要3指数ともに反発し、一時4,018.1ドルまで売られていたNY金は下げ幅を縮小し、4,101.0ドルまで買われたものの4,079.5ドルで終了した。週足は前週末比14.7ドル(0.36%)安で3週間ぶりに反落した。レンジは3,997.4~4,134.3ドルで、値幅は136.9ドルと前週(11月10日週)の245.8ドルから約100ドル縮小した。
大型補正予算案を受け円安進むも国内金価格反落
一方、国内金価格は、時差の関係でウィリアムズ総裁の発言内容が伝わる前の時点で週末11月21日の取引を終了した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の終値は2万719円で前週末比501円(2.36%)安の反落となった。
先週(11月17日週)の米ドル/円相場は、高市政権が大型補正予算案を閣議決定したことを受け、財政懸念から円安が進行した。一時157.90円と2025年1月以来の安値を付けるなど、前週末11月14日では1.8円程度水準を切り下げた。しかし、NY金の下げをカバーするまでには至らなかった。
レンジは2万257~2万1253円で反落したものの値幅は996円と前週(11月10日週)の1634円からは縮小した。
今週(11月24日週)の動き:FRB高官が金融政策に関する公的発言を控えるブラックアウト入り、11月25日(火)の米小売売上高、消費者信頼感指数、11月26日(水)ベージュブックに注目
米政府機関の閉鎖が終了し徐々に通常ペースに戻りつつあるものの、政府管轄の経済指標の発表の遅れが続いている。11月24日、米商務省は7-9月(第3四半期)の米国内総生産(GDP)速報値の発表を見送ることを明らかにした。9月の個人所得・消費支出(PCE)の統計は、米東部時間12月5日午前10時に公表される予定となった。
11月25日、9月生産者物価指数(PPI)、9月小売売上高の発表
一方で今週は11月25日(火)に9月の生産者物価指数(PPI)と同小売売上高の発表が予定されている。米インフレ圧力と個人消費の動向を確認する上で注目となる。さらに同じ日、11月のコンファレンスボードの消費者信頼感指数の発表がある。低所得層を中心に信頼感指数の落ち込みが目立っており、消費の先行きを見通す上で特に注目したい。
11月26日、地区連銀経済報告(ベージュブック)発表
また11月26日(水)には12月FOMCの基礎資料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)が発表される。雇用や経済活動の弱さを示す内容になる可能性が指摘されており、仮にそうなると利下げ観測の高まりにつながりやすい。今週(11月24日週)発表のデータの最大注目事項となる。
なお、11月29日(土)からFRB高官が金融政策に関する公的発言を控えるブラックアウト期間に入る。講演予定などは少ないもののメディアインタビューなどを通した発言には要注目となる。
NY金、JPX金の想定レンジ
こうした中でNY金については、11月24日の安値4,036.4ドルを下値にベージュブックの内容を受けた上昇を読み、4,035~4,200ドルを想定する。一方、JPX金は引き続き割高に買われる傾向を加味し2万570~2万1500円を想定している。
