時間をかけてまとまった資産を築くためには、インデックスファンド(またはバランスファンド)を通じて株式などへの長期・積立・分散投資の実践が大切です。
しかし、ただ将来資産が増えていればいいというわけではありません。資産形成している間も、資産を上手く取り崩して人生をより良くするために使うことが重要です。「使いつつ増やす」ことを考えると、定期的に起こる暴落への耐性を高めておくのがベターです。
今回は、「インデックスファンド+金(ゴールド)」を一緒に考えたいと思います。
資産形成に「株」は欠かせないが、債券や金を組み合わせておくのがベター
マーケットに暴落はつきものです。株式市場に目を向ければ、2020年以降だけでも、2020年2月の「コロナショック」、2022年2月の「ウクライナショック」、2024年8月の「日本版ブラックマンデー」、2025年4月の「トランプショック」と、実に4回も大きな下落局面がありました。
図表1は、1920年代から2010年代までの100年間を10年ごとに区分して、4つの資産クラスの実質リターンを示しています。他の資産と比べて最もパフォーマンスがよかった資産に黄色のハイライト、最もパフォーマンスが悪かった資産にグレーのハイライトをしています。
株はパフォーマンスが概ね好調な資産ですが、1930年~1939年、2000年~2009年は他の資産と比べて最もパフォーマンスが悪かった資産となっています。債券や金が最もパフォーマンスがよかった時期があることもわかりますね。
資産形成に株は欠かせませんが、お金を使うこと(資産の取り崩し)を意識すると、債券や金など複数の資産を組み合わせておくのがベターです。
株式市場が暴落している時に、金価格は上昇する傾向にある
資産全体の値下がりリスクを抑えるためには、ポートフォリオに金を組み込んでおくのが一つの手です。米国株価の推移を米国株価指数「S&P500」で、金価格の推移を金価格の値動きに連動するETF(上場投資信託)の「SPDRゴールド・シェア」[GLD]で確認してみましょう。図表2は、2007年1月3日時点を「100」として指数化したS&P500とSPDRゴールド・シェアの推移をまとめたものです。
金価格も、株式市場に大きなショックが起こると一時的に下落しますが、すぐに上昇に転じていることもわかります。その理由は、投資家がリスク回避のために、株を売って金への投資を増やすからです。
赤丸で囲ったところが、「リーマンショック後」「コロナショック後」「トランプショック後」の動きです。株式市場が下落している時期や伸び悩んでいる時期に、金価格は上昇する傾向にあることが見て取れます。足元では、株のパフォーマンスを上回っているのも注目です。
グラフの灰色の線は、S&P500とGLDを50%ずつ組みいれた場合の値動きです。大きな値下がりのリスクを抑えながらも、着実に資産を増やせていることがわかります。
金は暴落に強く、中長期で上昇していく3つの理由
金価格は短期的に下がることもありますが、中長期的には上昇していくでしょう。それにはいくつかの要因があります。
「地政学リスク」を回避するため
大きな理由は「地政学リスク回避」です。金は昔から、地政学的な問題(政治・戦争・天災)や世界経済を揺るがすような事態が発生したときの資産の逃避先となっています。そのため、「有事の金」と呼ばれています。
World Gold Councilのデータによると、世界各国の中央銀行は分散投資の一環として、地政学リスクに対するヘッジとして、2010年から2025年まで、16年連続で金を購入しています。
2022年~2024年は毎年合計1000トン超、2025年は850トン超の金が購入されています。それに合わせて金価格も上昇していますね。2022年といえば、ロシアがウクライナに侵攻を始めた年です。
今後も世界の不確実性が高い状態が続くならば、中央銀行が金を購入する状態が続き、金価格は上昇していくものと考えられます。
「実物資産」「原材料」としての需要があるため
金は宝飾品やアクセサリーによく使われています。オリンピックなどスポーツの大会で優勝すれば「金メダル」がもらえますよね。金の価値は昔も今も世界各国で認められていて、世界中でその価値がゼロになることは考えにくい「実物資産」として扱われています。
また、「原材料」としての需要も高く、電子機器部品(スマホ・PCの基板)、医療機器(ステント・体外診断キット)、美容(フェイスパック)、航空宇宙(宇宙服ヘルメット)など、その加工性、電気伝導性、希少性から幅広い分野で活用されています。
金価格は需要と供給の関係で変わります。金の埋蔵量には明確な上限は存在しませんが、現在の確認埋蔵量は約5万~6万4000トンと推定されています。供給量が一定であれば、需要が増えていくにつれ自ずと価格は上昇します。
「インフレ」「円安」だから
インフレは、お金の価値が下がることを意味します。しかし、金の価格はインフレに応じて上がる傾向があります。
また、金価格は為替レートも関係します。世界では金は米ドル建てで取引されていますが、日本国内の金価格はそのときの為替レートで円換算して「1グラム=○円」と公表されています。2022年1月頃まで1ドル=115円ほどだった為替レートは、ウクライナショックを機に円安が進行。その後、日米の金利差拡大などを背景に円安が進展し、本稿執筆時点の2026年2月18日は1ドル=153円となっています。
今後の為替動向ですが、米国金利は利下げ局面、円金利は利上げ局面で日米金利差は縮小していくため、円高圧力はあるものの、円安傾向は続く見通しです。
円安要因:デジタル赤字の拡大
円安となる理由の一つは、デジタル赤字の拡大です。日本が海外のデジタルサービス(クラウド、動画配信、アプリ、広告など)に支払う金額が、海外から受け取るデジタル関連の収入を上回り、収支が赤字になる状態を指します。デジタル赤字の拡大が、円安の加速要因になっています。
円安要因:米中の対立
もう一つは、地政学リスクでもある「米中の対立」です。以前は、日本円は逃避資産として人気があり、地政学リスクが高まると「円高」になっていました。「遠くの戦争は日本円の買い」だったわけです。しかし米中対立では、日本は最も近い位置にいます。日本の国力が下がっているという側面もありますが、日本円は今や安全資産ではなくなってしまったのです。
米中対立に伴い日本円が回避されているので、円安が進展している状況です。米中の覇権争いは今後も続いていくため、円安傾向は続いていく可能性が高いでしょう。
金を加えた資産配分戦略例「日本版パーマネントポートフォリオ」
金を加えた資産配分戦略例には、以前の記事でも紹介したことがある「日本版パーマネントポートフォリオ」があります。
パーマネントポートフォリオは、保有し続けるだけで資産を安定的に増やしていくことを目指す資産配分の考え方。「パーマネント」とは「半永久的な、長持ちする」といった意味です。
まず、資産全体を無リスク資産(現預金・個人向け国債)とリスク資産(株・米国債・金など値動きのある資産)に分けます。このときの配分割合を決める方法として、「120の法則」を活用するのが有効です。「120の法則」は、無リスク資産とリスク資産の割合を「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」に対応させる考え方です。
たとえば、自分の年齢が40歳であれば、無リスク資産とリスク資産の割合は「40:80」にします。資産が720万円あるなら、無リスク資産は240万円、リスク資産は480万円となります。無リスク資産は最低生活費6ヶ月分を確保しておくのが大切です。
リスク資産は「世界株」「米国利付債」「金」の3つの資産に均等配分します。わかりやすさを重視して均等配分にしているので、リスク許容度が高いならば株の比率を高めてもOKです。
金に投資する方法は、「金地金(きんじがね)」や「金貨」などの現物で購入する方法、毎月一定額ずつ金の現物を購入する「純金積立」、金に投資する「投資信託」や「ETF(上場投資信託)」を購入する方法などがあります。
金への投資の選択肢:「純金積立」「金投資信託」「金ETF」
純金積立は1,000円と少額からスタートできますし、積み立てで購入することで価格変動のリスクを抑えることができます。金を投資対象とする投資信託(金投資信託)と金ETFは、金価格への連動を目指して運用される金融商品です。保有中にコストはかかりますが、実物の金に投資するよりは手数料を抑えられます。また、たくさん利益が出た場合でも、税率20.315%の分離課税となります。NISA口座で投資をした場合は、利益に対する税金はかかりません。
資産形成のメインはあくまでもインデックスファンド(またはバランスファンド)を通じて株式などに積立投資をすることです。直近の金のパフォーマンスが目立つので、金の配分を増やしたい欲に駆られるでしょうが、あくまでも資産の一部として保有するのがベターです。本稿が投資行動の参考になれば幸いです。
