有事下の価格変動とボラティリティの現状
・原油のローソク足は上下のヒゲが大きく方向感に乏しい。過去の原油高は地政学リスクとして市場への直接的影響が相対的に小さい局面が多かった。しかし、1970年代や1990年のリセッション期は当時の景気局面や米国が産油国化する前で、戦争様式の違い(サイバー・ドローン活用など)もあり、現在とは前提が異なる。
・VIX指数は一時30にタッチしつつも、現状では過去の有事ほどの「爪痕」には至っていない。一方で日経平均ボラティリティ指数はコロナ期を上回る水準を一度示し、日本のエネルギー輸入依存度の高さが米国との違いとして変動の大きさに表れている。
・海峡閉鎖や物流停滞リスクを背景に、相場の変動幅や継続期間がさらに拡大する余地がある。米国だけでなく日本の特性も踏まえ、想定レンジは広がる余地がある。
平時への移行を見据えたインフレ・金利・景気の見取り図
・5年先5年期待インフレでは米欧の乖離が発生。エネルギー輸入国のユーロ圏は上昇する一方、米国は原油高下でも低下傾向で、影響を一時的とみる見方が優勢。米雇用統計は減速を示したが、天候といった一時要因や週次失業保険の落ち着きもあり、総合的な判断が必要な局面である。
・米国における設備投資は対米投資の拡大や政策支援(One Big Beautiful Bill Act=米国予算法案)を背景に堅調で、景況感の押し上げに寄与している。一方で、ISMの価格指数上昇や非鉄金属高、軍事費の増加、サプライチェーン再編・脱グローバル化の流れから、インフレ懸念は根強い可能性がある。
・米10年金利は低下基調をみせる局面がある一方、先行きの利下げ回数期待は縮小し、長短金利の動きにずれが生じた。景気の大幅失速が想定しづらい環境では、金利は下がりにくく高めの安定局面が続きやすい反面、急騰もしにくい。
米国の株式市場の物色トレンドと今後の相場動向
・S&P500を上回る銘柄の割合は2023年~2025年の過去3年間は低く、一部大型銘柄の牽引が続いていた。この状況はITバブル前夜以来である。2000年はITバブルが崩れて他の銘柄が相対的に浮上した。ただし今回はファンダメンタルズが良好で、他セクターへの循環物色も芽生えていた。
・低金利・低成長下のグロース一極から、半導体売上はサイクルの成熟局面に差しかかっている。金利高止まりと適度な成長の環境では、配当・利回りやキャッシュフローを意識したシクリカル・バリューに資金が向きやすい地合いがうかがえる。
・ただ、バリュー銘柄は業績の伸びが相対的に限定的で、指数リターンはこれまでの大幅上昇からより控えめに刻む展開に移行する可能性がある。名柄選別の重要性が高まり、物色の変化に留意が必要である。
