60歳より前に会社を辞めたら、企業型DCはどこに移したらいいの?
最近は転職や独立などで、60歳になる前に会社をやめるケースも増えています。では、企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入していて、60歳前に退職する場合はどうすればよいでしょうか。退職しても60歳よりも前にお金を引き出せないため、資産を移して運用し続ける必要があります。図表1に資産の移換先をまとめました。
転職先に企業型DCがある場合
まず、転職先の会社に企業型DCが導入されている場合です。この場合は、転職先の企業型DCにこれまで運用してきた資産を移すことができます。資産は移換の際に一部現金化され、転職先の企業型DCへ移すことになります。その場合は、転職先の会社の担当部署に確認すると、必要な手続きを案内してもらえます。
転職先に企業型DCがない場合
①転職先のDB(確定給付企業年金)に移す
転職先の企業に確定給付企業年金があり、確定拠出年金の積立金を受け入れることが規約に認められていれば、転職先の確定給付企業年金に積立金を移すことも可能です。稀なケースではありますが、確認してみる価値はあります。
②iDeCoに移換する
企業型DCで運用してきた資産を移換する方法です。具体的には、運営管理機関をひとつ選んで口座を開設しますが、その際「個人別管理資産移換依頼書」を提出する必要があります。
iDeCoには、加入者として移換した資産に加えて引き続く掛金を払っていく方法と、指図者として新たな掛金は払わず、これまで積み上げてきた資産だけを運用する方法があります。収入があるうちは、加入者として年金資産を積み上げたいところです。掛金は全額「所得控除」されるため、課税所得が下がり、その年の所得税と翌年の住民税が軽減される効果もあります。
「企業型DCで利用していた運営管理機関と同じところを選ばなくてはならない」「同じ運営管理機関を選べば、そのまま商品を移せる」と誤解している人も多いのですが、いずれも誤りです。同じ運営管理機関を選んでも、企業型と個人型では取り扱う商品やサービスは異なりますし、移換する際には現金化されます。
加えて、企業型DCでは会社が負担してくれていた口座管理手数料も、iDeCoでは自分が負担することになります。口座管理手数料や商品ラインアップを確認した上で、運営管理機関をしっかり選択しましょう。
③通算企業年金に移す
通算企業年金とは、企業年金連合会が退職者等向けに運用する年金の一つです。退職などでこれまで加入していた企業年金を脱退した場合などに、それまで蓄えられた年金原資を企業年金連合会に移すと、事務経費を差し引いた後、移換時の年齢に応じた予定利率(0.25%~1.25%)で運用されます。自分で運用する必要はありません。
原則、65歳から受け取り、一生涯年金を受け取ることができます。80歳までの保証期間付がついているので、その間に死亡した場合には死亡一時金を受け取ることもできます。
ただ、資金を追加で入れることはできません。例えば、今自分が50代後半であり、これからiDeCoに移換しても新たな掛金を払って運用する予定がない、あるいは終身で受け取りたいという場合には選択肢となります。ただし、事務経費などがかかるため、企業年金連合会の「年金試算シミュレーション」などを活用し、受取額を試算した上で検討したほうがよいでしょう。
放置されている資産は3000億円以上!
このような選択肢があるのですが、6ヶ月以内にどうするかを決めて、企業型DCの資産を移換する必要があります。その期間内に移換する手続きをとらずに放置すると、運用してきた資産は国民年金基金連合会に移されてしまいます。これを「自動移換」といいます。
2025年3月末時点で、自動移換者は約138万人、資産額は約3360億円で、どちらも10年前の3倍近くまで増えているそうです。企業型DCで運用してきた資産を移さずに、放置している人がこれだけいるのはビックリですね。
「自動移換」はデメリットばかり、必ず移換の手続きを!
自動移換にはさまざまなデメリットがあります。
1.現金化されるため運用できない
まず、自動移換されると資産は現金化され、運用ができなくなるため、資産を増やすことができません。
2.手数料がかかり続け、資産が目減りする
その上、自動移換の際には4,348円(特定運営管理機関※1に3,300円、国民年金基金連合会に1,048円)の手数料がかかり、自動移換4ヶ月目以降から毎月52円(2026年4月からは毎月98円)の管理手数料が資産から差し引かれるため、手数料分だけどんどん資産が減っていきます。
※1:自動移換となった場合、持分である資産は国民年金基金連合会に移換される。自動移換対象者の記録を管理する業務等を行う運営管理機関のことを特定運営管理機関という。日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー(JIS&T)が担う
3.加入者等期間にカウントされない
また、自動移換の状態にある期間は、確定拠出年金の加入者等期間としてカウントされないため、受取開始の時期が60歳よりも遅くなる可能性があります。
4.資産が引き出せない
さらに、国民年金基金連合会に自動移換された状態では、最終的に資産を引き出すことができません。給付に際しては、結局、iDeCoなどの口座に資産を移換する必要があります。その際にも手数料がかかります。
制度改正により、2018年5月以降は自動移換の対象者がiDeCoの加入者(または企業型DCの加入者)になっていることが確認された場合には、本人からの申し出がなくても、資産をその口座に移してくれるようになりました。しかし、離職や転職などで企業型DCの加入者でなくなった場合、自分でiDeCo口座などを開設していないと資産を移すことはできず、自動移換されてしまう点は変わりません。将来、積み上げてきた年金資産を受け取るためにも、必ず6ヶ月以内に移換の手続きを行いましょう。
NISA口座を開設して投資をすることも大事ですが、勤務先の退職給付制度を確認し、離職や転職の際には、企業型DCの資産を確実に移換して、運用し続ける意識を持つことも、とても大切です。
