先週(7月7日週)の振り返り=147円半ばまで米ドル一段高

「関税ショック」以降のコアレンジを米ドル「上放れ」

先週の米ドル/円は、7月3日に発表された予想外に強かった米雇用統計の結果を受けて米金利が大きく上昇し、それに連れて一段高となった流れを引き継ぎ、147円半ばまでさらに高値を更新する展開となりました(図表1参照)。こうした中で、テクニカルに見ると新たに上値を試す流れに入ったようにも見えます。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年4月~)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル/円の週足チャートを見ると、4月のいわゆる「関税ショック」で一段安となって以降は、142~146円をコアレンジとして、それを超えたところは上下の「ヒゲ」にとどまる方向感のない展開が続いていました。先週の米ドル/円の上昇により、そんなコアレンジを上抜けた形となったわけです(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の週足チャート(2024年12月~)
出所:マネックストレーダーFX

金利差からかい離した円安=その原因は円「買われ過ぎ」の修正か

ただ、この米ドル/円の上昇は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)からはかい離したものです。日米2年債利回り差からすると、145円以上の米ドル高・円安は「行き過ぎ」でしょう(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このような金利差からかい離した円安はクロス円では、米ドル/円以上に顕著になっています。ユーロ/円は6月に入ってから一段高となり、先週は172円台まで上昇しましたが、日独金利差はその間ほぼ横ばいとなったため、金利差ではほとんど説明できない円安でしょう(図表4参照)。

【図表4】ユーロ/円と日独2年債利回り差(2025年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

上記のように金利差で説明できる範囲を超えた円安の理由として、円「買われ過ぎ」の修正が考えられるかもしれません。ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、買い越し(米ドル売り越し)が過去最高を大きく更新し、一時17万枚以上に拡大しました。しかし、7月8日時には11万枚まで縮小しました(図表5参照)。空前の円「買われ過ぎ」修正に伴う円売りが、金利差で説明できる以上の円安をもたらしている可能性も考えられるでしょう。

【図表5】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

投機円買いポジション損失拡大の懸念=円売り拡大に要注意

例年、夏休みが近付く中で一方向に大きく傾斜したポジションが整理される傾向があります。最近の場合、大きく米ドル売り・円買いに傾斜したポジションを縮小させることで米ドルの買い戻しとなっている可能性があるでしょう。

ところで、このCFTC統計の円買いポジションの損益分岐点は120日MA(移動平均線)が目安とされます。その120日MAは7月11日時点で147円ちょうどでした。それを超えて米ドル高・円安になってきたということは、円買いポジションが含み損に転落し始めた可能性を示しています(図表6参照)。

【図表6】米ドル/円と120日MA(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

CFTC統計の投機筋の円買い越しは、5月初めに記録したピークの17.9万枚から、先週は11.6万枚まで縮小したものの、2024年までの買い越しの最高は2016年に記録した7万枚であり、それを大きく上回っているという意味では、まだ「行き過ぎ」が懸念される状況に変わらないと考えられます。その意味で、円安がさらに進み、円買いポジションの損失拡大懸念が強まるようであれば、ポジションの手仕舞いに伴う円売りが一段と広がる可能性には要注意でしょう。

今週(7月14日週)の注目点=CPI、小売売上高など米経済指標発表相次ぐ

懸念されたほど米経済悪化せず株高の流れは続くか

今週はCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といったインフレ指標、また鉱工業生産や小売売上高といった景気指標など、米国の注目度の高い経済指標発表が多く予定されています。

これまでのところ、トランプ米大統領の関税政策の影響で物価上昇が再燃する一方で景気は減速するといった米経済の悪化への懸念は経済指標で確認されない状況が続いています。そうしたことが米国株高の背景とも考えられますが、その流れに変わりはないかを見極めていくことになります。

また今週は、7月20日に行われる予定の日本の参議院選挙の直前週となります。これまでのところ連立与党が参院でも過半数割れとなり、石破政権交代の可能性も高いとの見方から、それを円売り要因とする見方もありますが、そうした流れが続くか否かも注目されることになるでしょう。

今週(7月14日週)の米ドル/円予想レンジは146~150円

テクニカルには「関税ショック」以降続いてきた142~146円のコアレンジが米ドル「上放れ」となったことから、さらなる米ドルの上値を試す展開が続きそうです。「関税ショック」以降の米ドル/円は149円を超えられない展開が続いたので、それを超えられるかが最初の大きな目安になるでしょう。

一方で、クロス円を中心に金利差から大きくかい離した円安には行き過ぎの懸念もあります。株安が拡大するようなら、「行き過ぎた円安」の修正が入る可能性もあるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は146~150円で予想します。