2025年12月の振り返り=円安一時157円台へ拡大、ただ介入警戒で一段落

日銀利上げでも円安拡大=日本の財政リスク懸念の円売りが影響か

2025年12月の米ドル/円は、方向感の乏しい小動きが続いていましたが、12月19日の日銀金融政策発表後に大きく上昇し、高市政権誕生後の米ドル高・円安のピークである157.8円に迫る展開となりました。ただ片山財務相などの円安けん制発言を受けて円安値更新には至らず、その後は156円台中心に上値の重い展開となりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年10月~)
出所:マネックストレーダーFX

日銀が利上げしたことから、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は縮小しました。その意味では、日米金融政策発表後の米ドル高・円安は、日米金利差から大きくかい離したものでした(図表2参照)。では日銀利上げにもかかわらず、円安が拡大したのはなぜだったのでしょうか。

【図表2】米ドル/円と日米金利差(2025年11月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日銀の利上げにもかかわらず円安が拡大した動きは、日本の長期金利上昇に連動したように見えました(図表3参照)。日本の長期金利、10年債利回りは、高市政権が過去最大規模の来年度予算案を決定する中で、財政赤字拡大への懸念から2%の大台を大きく超える上昇に向かいました。以上のことから、日銀の利上げでも円高へ反応せず、むしろ円安拡大へ向かったのは、日本の財政リスクを受けた円売りの影響が大きかった可能性があったのでしょう。

【図表3】米ドル/円と日本の長期金利(2025年11月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

片山大臣「断固たる」と発言=2024年までの「ルール」ならまだ介入なし

ただこうした円安も、上述のように片山財務相の円安けん制などをおもなきっかけに一段落となりました。とくに片山財務相があるインタビューの中で、「断固たる措置」といった、これまでの場合なら為替市場への介入を決めたことを示唆する表現を使ったことで米ドル売り・円買い介入への警戒感が高まった可能性はあったようです。では、日本の通貨当局は本当に円安阻止への介入をすでに決めたのでしょうか。

通貨当局は2022年と2024年に米ドル売り・円買い介入を行いましたが、それは、米ドル/円が過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2割以上と大きく上回った局面でした。これに対して足下の米ドル/円の5年MAは137円程度なので、158円でもそれを15%上回るに過ぎない計算です(図表4参照)。

【図表4】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

このように、5年MAとの関係で見る限り、これまで米ドル売り・円買い介入を開始した水準までにはまだ至ってはいません。その意味では、「断固たる」といった発言はあったものの、これまでに当局が介入再開を決めた可能性はやはり低いのではないでしょうか。

2024年までの投機円売り主導と異なる=拙速な円買い介入なら「失敗」の危険も

もしこれまでと介入の判断基準が変わり、早期に介入が実現したらどうなるのでしょうか。ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションなどを参考にすると、2022、2024年の円安阻止介入局面は投機円売り主導だったのに対し、今回はその点が大きく異なっている可能性があります(図表5参照)。

【図表5】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

短期売買を行う投機筋の円売り主導の場合、介入によりある程度円高へ戻すことに成功すれば、投機筋が円買い戻しに転じることで円安阻止、是正に成功する可能性が出てきます。

CFTC統計などを参考にする限り、今回の円安はそうした投機筋の円売り主導のものではないのであれば、投機筋には円売り余力がまだ十分あることから、円買い介入も市場の円売りに吸収され、失敗に終わる危険もあるでしょう。

2026年1月の注目点=円、米ドルともに「暴落」リスクあり

円安止まる条件は日本の財政懸念払しょく=来年度予算案には批判的見方

ここまでの円安が、金利差の変化に反応せず、日本の財政リスクを懸念した長期金利上昇、債券価格下落を受けたものであるなら、円安が止まる条件の1つは、そんな財政リスクへの懸念を払しょくすることになるでしょう。ただし、上述のように、高市政権が決めた来年度予算案に対しては、「責任の視点欠く過去最大の予算案」(2025年12月27日付け日経新聞社説)という具合に批判的見方が多く、懸念の払しょくには至っていないようです。その意味では、円安はまだこの1月も続く可能性があるでしょう。

2024年までの円安は、結果的には当局による円買い介入で終わるところとなりました。ただ今回の場合、その点もこれまでとは異なる可能性があります。金利引き上げや円買い介入の円安阻止効果が懐疑的な状況が続く中では、何かの拍子に円安が「ノーコントロール」に陥る危険性も警戒する必要があるのではないでしょうか。

トランプ関税の最高裁判決に注目=1月の米ドル/円は150~160円で波乱含み

一方で、米ドル安の拡大により結果として円安が止まり、円高に転換する可能性はあるかもしれません。トランプ関税に対する米最高裁判決はこの1月上旬にも出るとの見方もあります。トランプ関税が「違憲」となることをきっかけに、米国からの資金の大逆流が起こる場合などが円高転換シナリオの1つでしょう。

NYダウに対するナスダック総合指数の相対株価は、2000年のITバブル以上のナスダック割高となりました(図表6参照)。これはAIや一部テック株への資金流入がITバブル以上に過剰なものになっていることを示しているでしょう。こうした資金の流れが、上述の最高裁判決などをきっかけに逆流した場合、円安を上回る米ドル安が起こる可能性もやはり注目されるのではないでしょうか。

【図表6】NYダウに対するナスダック総合指数の相対株価(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

以上を踏まえると、1月の米ドル/円はある意味では円、米ドルともに「暴落」のリスクを秘めた状況にあるように感じられます。このため、1月の米ドル/円は150~160円で上下ともに波乱含みの展開を想定したいと思います。

今週(1月5日週)の米ドル/円の予想レンジは155~160円

今週は、12月米雇用統計など注目度の高い米経済指標発表が予定されていますが、中でもとくに失業率に注目したいと思います。11月失業率は4.6%へ急悪化したものの、米政府機能一部停止、「シャットダウン」明け間もなく、数字に歪みが生じている可能性もあるとの受け止め方になったようです。そうした見方が正しいか、そうではなく12月失業率も4.6%となった場合は1月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げの可能性が高まるでしょう。

すでに述べたように、1月は円、米ドルともに「暴落」リスクを秘めていると見られることから、今週も何かの拍子に大きく動く可能性はあるでしょう。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は155~160円で予想します。