「中東有事」でも対豪ドルでは米ドル売り
代表的な投機筋のポジション・データであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、2月末のイラン攻撃前に比べて対米ドルで買い越しが増えた通貨がいくつかあった。その1つが豪ドル。豪ドルは2月24日時点で対米ドルの買い越しが5.2万枚だったが、3月10日時点では5.4万枚と小幅に拡大した(図表1参照)。
実は3月3日時点では、6.7万枚とより大きく買い越し拡大となっていた。それが10日にかけて買い越し縮小となったのは、トランプ米大統領の「イラン戦争は短期で終了する」との発言を受けて原油価格が一時的に急反落した影響があったのではないか。いずれにしても、2月末のイラン攻撃前に比べて対米ドルで豪ドル買い越しが増えたということは、米ドルから見ると対豪ドルで売り越しが拡大、つまりイラン攻撃という中東有事の中で米ドル売り拡大となっていた。
資源国通貨に対しては米ドル売り=テーマは「有事」ではない?
同じことがカナダドルについても言えそうだ。投機筋のカナダドル・ポジションは、2月24日時点で米ドルに対して2.7万枚の買い越しだったが、3月10日時点では3.6万枚に拡大した(図表2参照)。つまり米ドル側から見ると、イラン攻撃を前後して対カナダドルでは売り越しが拡大、「中東有事での米ドル売り」となっていたわけだ。
豪ドル、カナダドルは代表的な資源国通貨で、その資源国通貨に対してはイラン攻撃という中東有事発生後もむしろ「有事の米ドル売り」となっており、少なくともこれまでCFTC統計の投機筋のポジション・データで確認した限りでは「有事の米ドル買い」とはなっていなかったのはなぜか。
それは、イラン攻撃を前後した為替市場の動きについて中東有事をテーマとすることが間違っていることを示しているのではないか。中東有事の中でも、主要な資源国通貨に対しては米ドル買いにならなかったのは、今回のイラン攻撃以降のより適切なテーマが、ホルムズ海峡封鎖に象徴される原油やガスなどエネルギー、資源の供給リスクであることを示しているということではないか。
円、ユーロに対しては米ドル買い拡大=テーマは資源供給リスク
一方で、イラン攻撃を前後して米ドルに対して買い越しが大きく縮小したのはユーロ。投機筋のユーロ買い越しは、2月24日時点では15.6万枚だったが、3月10日時点では10.5万枚まで縮小した(図表3参照)。米ドルの側から見ると、対ユーロで売り越しが大きく縮小、つまり米ドル買いが拡大したことになる。
似たような動きだったのが、投機筋の円ポジション。2月24日時点では対米ドルで1.1万枚の買い越しだったが、3月10日時点では4.1万枚の売り越しとなった(図表4参照)。米ドル側からみると、対円で売り越しから買い越しに転換、それが拡大したということだ。では、これは「有事の米ドル買い」ということになるだろうか。
円もユーロも原油やガスの供給リスクに弱いことが知られている。その意味ではイラン攻撃以降、対米ドルで円やユーロ売りが拡大したのはエネルギー供給リスクへの反応でもおかしくなかっただろう。むしろ、すでに見てきた資源国通貨に対する米ドル売りと合わせて考えると、イラン攻撃前後の為替市場のメイン・テーマは、中東有事よりエネルギー供給リスクがやはり適切なのではないか。
