先週(3月9日週)の振り返り=2024年7月以来の水準まで米ドル高・円安広がる
原油供給リスクに弱い円売り、「世界一の産油国」の米ドル買い
先週(3月9日週)の米ドル/円は上昇傾向が続き、この間の高値を更新し160円の大台に迫る展開となりました(図表1参照)。イランによるホルムズ海峡封鎖が続く中、原油価格の上昇が続き、エネルギー供給リスクに弱い円が売られる一方で、「世界一の産油国」米国の米ドルが買われる流れが継続したということでしょう。
こうした中で米ドル/円は2024年7月以来の高値まで上昇しました。いよいよ約38年ぶりの高値であった2024年7月の161円台も視界に入るところとなりました(図表2参照)。ではこの米ドル高・円安はどこまで続くのでしょうか。
米ドル高・円安を正当化してきた要因には、じつは一段落してもおかしくない兆しが見えてきました。ただし、2024年7月の米ドル高値、円安値が視界に入り、また今週(3月16日週)は日米の金融政策発表や日米首脳会談など注目材料も多いことから上下に大きく振れる可能性はあるでしょう。
米追加利下げ見通しほぼ消滅=利上げへ転換を織り込むさらなる金利上昇は疑問
ここまでの米ドル高・円安は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大に沿ったものでした(図表3参照)。そしてこの金利差拡大は、おもに原油価格上昇などによるインフレ再燃への懸念を受けた米追加利下げ見通しの修正に伴う米金利上昇が主導したものでした。
米金融政策を反映する米2年債利回りは、政策金利であるFFレート誘導目標の上限に当たる3.75%程度まで上昇しました(図表4参照)。つまり、当面の追加利下げ見通しがほぼ消えたわけです。その上、さらに米2年債利回りが上昇するなら、一転して利上げを織り込むことを意味しますが、それはさすがにまだ不明確ではないでしょうか。
2000年以降で最高の原油価格「上がり過ぎ」=原油高一段落も近いか
ここまでの米ドル高・円安は、原油価格の高騰が手掛かりになっていた面もあったでしょう(図表5参照)。その意味では、原油価格上昇が続く中では米ドル高・円安の流れが変わるのも簡単ではなさそうです。
ただし、この原油価格上昇も短期的にはさすがに「行き過ぎ」懸念がかなり強くなってきたようです。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の90日MA(移動平均線)かい離率は先週(3月9日週)50%以上に拡大し、2022年のロシアによるウクライナ侵攻局面での記録を上回り、2000年以降では最高となりました(図表6参照)。
言い換えると、2000年以降で短期的「上がり過ぎ」懸念が最も強くなった局面であり、そろそろ原油価格上昇が一段落することも想定されるでしょう。
以上のように、イラン情勢を受けた米金利上昇や原油価格上昇といった米ドル高・円安を正当化してきた要因のいくつかは、さすがに一服してもおかしくない状況になってきたようです。ただし、2024年7月の米ドル高・円安の記録も視界に入ってきたことから、理屈抜きでさらに米ドル高・円安を試す可能性はあるでしょう。
今週(3月16日週)の注目点=日米の金融政策発表、日米首脳会談など
投機筋の米ドル売り越しが急縮小=米ドル買いは買い戻しが基本
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、売り越しが2月17日時点で21万枚まで拡大していましたが、3月10日時点では6万枚まで縮小しました(図表7参照)。
過去の実績からすると、20万枚以上の売り越しは「行き過ぎ」懸念の強いものだったと言えそうです(図表8参照)。その意味では、最近の米ドル買いは、2月末に米国等によるイラン攻撃が行われる前の米ドル「売られ過ぎ」の反動の可能性が高いでしょう。別の言い方をすると、あくまで米ドルの買い戻しに過ぎなかったでしょうから、手掛かりがあればさらに米ドル買いが広がる余地はありそうです。
日米首脳会談での円安の扱いに注目=今週(3月16日週)の米ドル/円は157~162円で予想
今週(3月16日週)は、日本、米国、ユーロ圏など中央銀行による金融政策発表が相次いで予定されています。また、3月17日に予定されている豪州の金融政策発表では利上げが予想されています。経験的に、日銀の金融政策発表は円売り仕掛けの手掛かりとなり、大きく変動するきっかけになることが多かっただけに、今回も要注意でしょう。
また今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではメンバーの経済見通し「ドット・チャート」が公表されることから、イラン情勢を受けて金融政策見通しがどのように変化しているかに注目が集まりそうです。
そして3月19日には日米首脳会談が予定されています。基本的に貿易相手国の通貨安を好まないトランプ米大統領、そして1月下旬には円安けん制で米通貨当局が「レートチェック」に動いたということもあるので、最近の米ドル高・円安についてどのように取り上げられるかも注目されるところでしょう。
2024年7月の米ドル高・円安が視界に入る中で、今週(3月16日週)は注目イベントも多いことから、何かの拍子に円安、円高ともに大きく振れる可能性も十分ありそうです。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は157~162円で予想します。
