2025年の日経平均株価の上げ幅は、11月10日時点で1万1017円と過去最大となっています。これまでの最高記録は、1989年の資産バブル期に記録された8,756円でした。直近では株価の上昇ペースが非常に速く、市場では過熱感への警戒も強まっています。

業績との比較で株価がどの程度買われているかを示すPER(株価収益率)は、日経平均ベースで19.11倍まで上昇しました。月末ベースでさかのぼるとPERが19倍を超えたのは、コロナ禍からの景気回復期待が高まっていた2021年4月(20倍)以来です。

今の株価上昇は、将来の業績拡大への期待が先行している面が大きく、今後の株価がさらに上昇トレンドへ移るためには、企業業績の拡大に対する確信が一段と高まることが重要になります。

市場では日経平均全体のPER水準だけでなく、個別銘柄の選別においてもPERが意識されています。個別企業が高いPERを許容されるかどうかは、将来の業績成長への期待次第です。つまり、PERと将来成長の二つの軸が投資判断において重要な要素となります。今回は、その二つを統合的に見る指標であるPEGレシオ(Price Earnings Growth Ratio)に注目します。

PERと成長率を結ぶ新たな視点「PEGレシオ」の考え方

PEGレシオは、PER(倍)を成長率(%)で割って求めます。たとえばPERが20倍で、成長率が20%の企業であれば、20(倍)÷20(%)=1となります。そして値が低い方が割安で魅力的な銘柄となります。

PERは株価を1株当たり利益(EPS)で割ったものです。PERが20倍ということは、企業の利益の20倍の水準まで株価が買われていることを意味します。現在、日経平均のPERが約19倍ですので、それより高い20倍の企業は市場平均と比べて一見割高といえます。しかし、もしその企業の利益が将来20%成長する見通しであれば、将来のEPSを基準にした場合には割高とは限りません。利益の伸びが大きい企業では、短期的にPERが高く見えても、成長を考慮すると適正水準に収まる場合があるのです。

こうした点を補正するために、PERを成長率で割るPEGレシオが有効な指標として用いられます。経験的には、PEGレシオが1倍を下回ると割安と判断されることが多いです。

PEGレシオを算出するためには、PERと成長率という二つの要素が必要です。PERには今期の予想PERを使うのが良いでしょう。実績PERを使う方法もありますが、将来成長を織り込むという点で、予想PERを採用する方が適しています。一方の成長率には、来期予想の営業利益増益率を用います。こちらは可能であれば、遠い将来までの成長を示す指標が良いので、来期予想の増益率が妥当でしょう。

PEGレシオが示す投資効果は?

実際にPEGレシオがどの程度投資に有効かを検証しました。

金融業を除くTOPIX(東証株価指数)の構成銘柄のうち、PEGレシオが小さい、つまり魅力的とみなされる上位20%の銘柄を抽出しました。なお、来期増益率がマイナスの銘柄は計算する際の分母が負になりPEGレシオがマイナスとなり、指標として意味を失うため除外しています。

こうして選定した銘柄群に均等に投資した場合のパフォーマンスを算出したところ、結果は図表1の青線グラフの通りです。青線は累積リターンを示しており、右肩上がりの形状から、PEGレシオの小さい銘柄群が継続的に高い収益を上げてきた傾向が確認できます。

また、赤線グラフは、その銘柄群のリターンから対象銘柄全体の平均リターンを差し引いた「超過パフォーマンス(累積)」を示しています。これも右肩上がりで推移しており、PEGレシオの魅力的な銘柄群が市場全体を上回る成果を上げてきたことが分かります。

【図表1】PEGレシオが低い(魅力的な銘柄)の株価パフォーマンス
注1:データ期間は2021年12月から2025年10月、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX構成銘柄、但し「金融業(銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」と「その他金融業」を除く。また、来期営業増益率がマイナスの企業も除外する
注3:今期と来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いている
注4:毎月末時点でPEGレシオが低い(魅力的な)方から20%に該当する銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出して絶対パフォーマンスは2021年12月以降を累積している。超過パフォーマンスは対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2021年12以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

銘柄スクリーニング結果:参考銘柄13選

そこで、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を筆者が利用し、こうした条件に合致する銘柄を抽出しました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、流動性を考慮して東証プライム市場に上場し、時価総額1,000億円以上の銘柄に限定しています。また、業績面で一定の健全性を確保するため、実績ROEが8.00%以上、かつ実績ROAが3.00%以上で、今期と来期の営業増益率が3.0%以上という条件も加えています。

さらに、今期予想増益率(営業利益)が5%以上、来期予想増益率(営業利益)が10%以上の銘柄に絞り込みました。PERがある程度高い水準となっていても、来期にかけて増益率が高い銘柄に絞ってPEGレシオで評価するためです。

これらの条件に基づきExcel上でPEGレシオを算出し、1未満の値を示す13銘柄を抽出しました。これらの結果は図表2に示してあります。投資の参考にしてみてください。

【図表2】スクリーニング結果(Excel出力での表示変換)
[基礎条件]
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:800億円~
[詳細条件]
[指標]予想PER (会社予想):0.1倍~、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):10.0%~・3人以上、[指標]実績ROE:8.00%~、[指標]実績ROA:3.00%~ さらに「PEGレシオ」をExcelで算出して、魅力的な方から値が「1」未満の銘柄を出力
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2025年11月10日時点)を用いてマネックス証券作成

銘柄スクリーニング方法を解説

ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが、ご自身のタイミングや最新データで図表2のスクリーニングを行いたい場合の具体的なスクリーニング入力項目を示しました(図表3)。詳細条件の設定中の「予想PER(会社予想)」は、後の処理で必要な指標なので本来は表示のみで条件入力は不要ですが、会社予想の値が取得できないケースでデータが欠損となるため、便宜的に「0.1倍以上」を入力しています。

【図表3】スクリーニングの条件設定画面(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2025年11月10日時点)

この結果、図表4のような銘柄一覧が画面に出力されます。これらの出力銘柄のPEGレシオ計算する必要があります。そこで右上の「CSVダウンロード(図表4の〇印)」から銘柄リストを取得して、Excelで処理します。ここで注意点があります。後に、Excel処理のために行う「csvダウンロード」は200銘柄までの制限があります。そこで対象銘柄数が200銘柄以内であることを確認します。仮に、200銘柄を超えていたら、1000億円で設定している時価総額の最低基準を少し増やして、対象銘柄を200銘柄までに抑えるようにしてください。

【図表4】スクリーニング表示結果(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2025年11月10日時点)

図表5は図表4でダウンロードして取得したcsvファイルをExcelで開いた画面です。

まず、L列に「G列/I列」という数式を入力します。これが「PEGレシオ」です。
「/」は割り算という意味です。
そして、そのL列の「PEGレシオ」で昇順(小さい順)にソート(並べ替え)します。
上位銘柄がPEGレシオから注目される銘柄です。

【図表5】Excel画面サンプル
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウターの結果を使ってマネックス証券作成