「遊び」から広がったインターネットと即商用化されたAI
人工知能(AI)は社会のいたるところに変革を迫っています。AI革命とも呼ばれる現在の非連続的な変化を30年前に起こったインターネットの出現になぞらえることもできますが、変化のスピードはその時とは比較になりません。
インターネットは普及の初期段階は「遊び」がメインで広まりました。パソコンの処理速度は今とは比べようがないほど遅く、通信回線への接続料も高いため、ネットで顔写真や住所など個人データをやりとりすることなどとても考えられませんでした。
しかし、それらの欠点が時間とともに改善され、今ではインターネット上での買い物はごく日常的に行われます。銀行の口座開設や公共機関での手続きも、日常生活上のほとんどすべてがネット上で完結します。
それに対して、AIの普及は2022年11月にオープンAIが生成AI「ChatGPT」をリリースした当初からすぐに商用化が考えられるようになりました。インターネットの時とはこの点で大きく異なります。
AIと言えども、当初は間違った答えが返ってくることも多かったのですが、日々膨大なデータが蓄積されて学習効果が急速に高まっています。回答速度も格段に速くなり、2026年の大学入試共通テストではほとんどすべての科目でAIが満点を採るまでに進化しました。
AIの高性能化は今後も加速度的に進みます。それらが社会のすみずみまで普及してゆくとどのような未来が待っているのでしょうか。
AIがもたらす世界の変化、消費は「体験・健康・時間価値中心」へ移行か?
当のAIに尋ねてみると「意思決定、知識、労働の質」の3点で世界が大きく変わることを示しています。
マーケティングの領域で「意思決定」の部分を見ていくと、あと2-3年もすると、AIは人間の「拡張ツール」として人々の意思決定にかなり入り込んでゆきます。
人々の消費の現場における意思決定は、これまでのような「調べて、比べて、それから買う」というプロセスが薄れ、代わってAIが人間の代理人となって、消費者の代わりに最適な商品を検索し提案することになるでしょう。
ある人が急に健康的な生活に目覚め、「家族用に健康的な夕食を考えて」とAIに問いかけるとします。するとAIは冷蔵庫の中身をすぐに確認して、家族ひとりひとりの過去の購買履歴を参照し、近所のスーパーの価格をいくつも照会して、最適なレシピと購入リストを作成、それをそのままネット経由で発注する、という手順につながります。
そうなると企業のマーケティング部門は「人々の心」に訴える広告を打つのではなく、「AIの推薦アルゴリズム」にどう採用されるかが主戦場になります。
ブランドや効用をアピールするよりも、AIに評価される製品データ(栄養成分やレビューの信頼度、価格の透明性など)を開示することの方が、企業経営にとってより重要な作業となってきます。
店舗の側も「AIにフレンドリーな商品情報」を整備するようになり、AIに選ばれやすい商品設計を目指します。消費者の方では購買の半自動化が進み、購買時間が劇的に短縮されます。買い物に行く回数が減るため、運動不足はデータとして残り、それが次の購買の重要な要素となります。
食品メーカーは商品を売るために知恵を絞る方向から、健康管理に特化したAIと連携するような栄養プログラムを提供する存在へと変わります。そのような社会では商品を中心とした消費から脱却し「体験・健康・時間価値中心」へと移行していきます。
消費者はモノではなく「生活そのものの最適化」を買う存在へと次第に変化してゆきます。もうすでに、その兆候は至るところで見られる光景となっています。今回は、体験重視型の企業を取り上げます。
体験重視型の関連3銘柄
トライアルホールディングス(141A)
九州を中心にディスカウントストア「TRIAL」を展開。全国300店のうちの4割が九州にあるが2025年11月より小型店「TRIAL GO」を東京で展開。西友を買収し大都市圏を強化中。テクノロジー志向を前面に打ち出し、小売現場に最新テクノロジーを積極的に導入して、同業他社のテック化も支援する。店舗自体が広告メディアと化するリテールメディア事業にも首都圏から段階的に取り組む。未来の小売業態を先取り。
丸井グループ(8252)
「駅のそばのマルイ」として、80年代のDCブランドで一世を風靡。今もまた「モノを売らない小売店」として新たなトレンドを創っている。収益の多くはカードを中心とした金融事業。百貨店型のテナント方式から、店舗スペースを不動産のように貸し出して賃料収入を得る方式へと転換して効果を上げている。早くからフィンテックに取り組み、移ろいやすい流行をAIの活用により確実にヒットにつなげている。
すかいらーくホールディングス(3197)
ファミレスの最大手であり、現在の主力は「ガスト」。中華のバーミヤンや和食の夢庵も展開する。外食ビジネスの3大コスト要素である人件費、食材費、廃棄ロスはAIの導入で効率化させることが可能。廃棄ロスと食材費は需要予測AIが、人件費はシフトの最適化による効果が大きい。同社はすでにホールで活躍する配膳ロボットを導入済みで店舗オペレーションの効率化でも一歩進んでいる。
