株価上昇局面におけるPER上昇の位置づけと「良いPER上昇」

・年初来で株価が大幅に上昇し、足元は5万円台での値固めとなっている。過去の平均的なPERは14~16倍水準だが、現在は19倍超で過熱感が意識されやすい局面である。

・株価=EPS(業績)×PER(投資家の期待)と分解でき、2025年はEPSが慎重見通しの一方でPER上昇が先行して株価を押し上げている。先にPERが上振れし、その後にEPS拡大が追随してPERが平常水準へ戻り、株価水準は維持される形が「良いPER上昇」の基本パターンである。

・2012年末の政権交代期にはPERが一時21倍まで上昇し、その後EPSが拡大して株価の基礎体力が高まった前例がある。PERとEPSの関係は時計回りに推移する関係図(ウォッチ曲線)で表現でき、現在もその初期段階にあると整理できる。

直近の業績動向と今後のシナリオ

・今期のEPSは保守的な会社計画が多く、外需中心には米国の関税動向など不確実性が残る。一方で内需系を中心に緩やかな上方修正がみられ、日経平均ベースの今期EPSはマイナス6%程度の前提から徐々に改善する可能性がある。

・年末から年度末にかけて上方修正や着地の上振れが進み、来期は2桁増益が視野に入る展開が想定される。これによりEPSの右方向への拡大が進み、PERは低下方向へ戻るという「良いPER上昇」からの正常化プロセスが見込まれる。

・足元はEPSの追随を確認するステージで、5万~5万2000円近辺の往来が想定される。来期業績の確度が高まる局面から、より積極的な上値追いの地ならしが進む展開となる可能性がある。

出遅れ循環物色の着眼点とスクリーニング条件

・直近3ヶ月の上昇が鈍かった銘柄群の中から、今期・来期ともに業績が底堅い内需系を中心に着目する構図である。外部環境への感応度が相対的に低いセクターが候補となりやすい。

・スクリーニング条件は、東証プライム上場かつ時価総額1000億円以上・流動性に加え、ROE8%以上、ROA3%以上、今来期増益見込み、PER14倍以下、PBR1.3倍以下、直近3ヶ月の騰落率が低いことなど、業績の質とバリュエーションの両立を重視する内容である。

・過去3ヶ月間で騰落率が低い順に8銘柄をスクリーニングした。抽出結果は複数の内需系に分散し、不動産、陸運など多様な業種が含まれた。高バリュエーションの市場全体観に対し、相対的に割安で業績の下支えが期待できる出遅れ領域の循環物色が想定される。