11月中旬にかけて、3月期決算企業の第2四半期決算発表が本格化します。この時期は、企業が示す今期の業績見通しがどのように修正されるのか、そして企業を分析する側のアナリストによる業績予想がどう変わるのかに注目が集まるシーズンです。
会社が公表する業績見通しは今期に限られますが、アナリストは来期以降の予想も行うため、投資家は来期の業績見通しがどのように見直されるのかについても情報を得ることができます。
本稿では、銘柄選択を行ううえで、今期と来期の業績予想の修正とどのように向き合うべきかを、実際のパフォーマンス検証の結果を用いて解説します。
利益予想変化率と今期・来期とも上方修正された銘柄のパフォーマンス
業績予想の修正を投資指標として数量化したものが「利益予想変化率」です。これはアナリストの最新予想が前回予想に比べてどの程度上方修正または下方修正されたのかを変化率で示した指標です。
利益予想変化率の値がプラスであれば上方修正が行われたことを示すもので、数値が大きくなるほどその修正幅も大きいという意味になります。利益予想変化率は「アナリスト予想リビジョン」と言われて、投資実務で銘柄選別に広く用いられるもので、大幅の上方修正(利益予想変化率が大幅にプラス)であった銘柄ほど、株価も上昇しやすい傾向が期待されます。
そこで実際に今期と来期の利益予想変化率を組み合わせて銘柄選びを行うと、どの程度のパフォーマンスが得られるのでしょうか。過去データを用いて検証しました。
利益予想変化率に用いる利益指標は営業利益としています。これは、10月29日付の本連載のレポート「業績予想変化率や成長率での銘柄選別には、どの利益を使うのが最良な方法か?」で示したように、営業利益を用いた場合が他の利益指標に比べて最も高い銘柄選択効果を持つためです。
分析対象銘柄は、金融業を除くTOPIX構成銘柄のうち、営業利益の予想が取得できる企業としました。毎月末の時点で得られる情報のみを用います。そして今期と来期の営業利益予想がともに上方修正されている銘柄に等金額ずつ投資した場合の翌月の株価パフォーマンスを累積し、その推移を示したものが図表1の青線です。
累積リターンが右肩上がりとなっていることから、今期と来期の双方で利益予想変化率がプラス(上方修正)の銘柄に投資する戦略は、時間の経過とともに収益が積み上がる傾向にあることが分かります。
注2:母数は金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除くTOPIX構成銘柄。ただし、営業利益が開示されない銘柄など情報が取得できない銘柄は除く
注3:今期と来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いている
注4:毎月末時点で今期と来期の営業利益予想変化率の情報をもとに銘柄を分類する。そして、それぞれのグループの銘柄群に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出。さらに、対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2023年10月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
一方で、今期・来期ともに利益予想変化率がマイナス(下方修正)された銘柄では結果は逆で、図表1の赤線のように累積リターンは右肩下がりとなっています。また、どちらか一方のみが予想変化率がプラス(上方修正)された場合もパフォーマンスは振るいません。
今期は下方修正で来期が上方修正された銘柄(紫線)や、今期は上方修正でも来期が下方修正された銘柄(ピンク線)はいずれもパフォーマンスが低い結果となりました。つまり、利益予想変化率は今期だけでなく、来期も揃ってプラス(上方修正)であることが重要と言えます。
さらに強い銘柄は?「来期の利益予想変化率が今期を上回る」銘柄に注目
さらに投資効果を高めるには、今期と来期の両方において利益予想変化率がプラス(上方修正)という条件に加えて、来期の利益予想変化率が今期を上回っていること、すなわち利益予想のモメンタムが来期に向かって強まっている銘柄を選ぶことです。実際に、今期・来期それぞれの利益予想変化率がプラス(上方修正)銘柄の中から、来期の変化率が今期の変化率よりも大きい銘柄に絞り込んで検証した結果が図表2の太い紺線です。
図表1の青線と同じものが図表2の青線(条件を加える前)ですが、この青線よりも安定して高い累積超過リターンとなりました。このことから、「来期の利益予想変化率が今期より大きい」という条件を加えることで、銘柄選択効果がさらに高まることが確認されます。
注2:母数は金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除くTOPIX構成銘柄。ただし、営業利益が開示されない銘柄など情報が取得できない銘柄は除く
注3:今期と来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いている
注4:毎月末時点で今期と来期の営業利益予想変化率の情報をもとに銘柄を分類する。そして、それぞれのグループの銘柄群に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出。さらに、対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2023年10月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
銘柄スクリーニング結果:参考銘柄17選
そこで、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を筆者が利用し、こうした条件に合致する銘柄を抽出しました。
対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、流動性を考慮して東証プライム市場に上場し、時価総額1,000億円以上の銘柄に限定しています。また、業績面で一定の健全性を確保するため、実績ROEが8.00%以上、かつ実績ROAが3.00%以上で、今期と来期の営業増益率が3.0%以上という条件も加えています。
これらの条件で選んだ母数となる銘柄のうちで、今期予想変化率(営業利益)と来期予想変化率(営業利益)が1%以上(プラスとしての最低単位とする) の銘柄に絞り込みました。
そして、Excel上で「来期の営業利益予想変化率が今期の変化率を1%を超えて上回っている」銘柄を抽出した結果、図表3にある17銘柄が該当しました。投資の参考にしてみてください。
市場:東証プライム、時価総額:1,000億円~、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く
[詳細条件]
[指標]実績ROE:8.00%~、[指標]実績ROA:3.00%~、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、[今期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3ヶ月前・1.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3ヶ月前・1.0%~・3人以上 さらに「来期の予想変化率が今期より1%より大きい」をExcelで処理
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2025年10月31日時点)を用いてマネックス証券作成
銘柄スクリーニング方法について
最新データを用いて、図表3のスクリーニングを行う場合の具体的な入力項目を(図表4)に示しました。
図表6は取得したcsvファイルをExcelで開いた画面です。
まず、M列に「L列-K列」という数式を入力します。これが「来期の予想変化率が今期予想変化率を上回る大きさ」です。
そして、Excelのメニュー「データ」→「フィルター」→「数値フィルター(カスタム オートフィルター)」→「指定の値より大きい」で「1(より大きい)」を選択します。
結果が参考銘柄リストです。
