現在のファンダメンタルズ:米中貿易摩擦激化と日本の政局が2大材料

先週(10月13日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円:  149.374円~152.612円   150.599円
・ユーロ/米ドル:1.15422ドル~1.17279ドル 1.16528ドル
・ユーロ/円:  174.819円~176.913円   175.493円

先週(10月13日週)の米ドル/円:日米双方の材料で米ドル安と円高に

先週(10月13日週)の米ドル/円は、日米双方の材料で円高が進む1週間となりました。10月13日は東京市場が休場でしたが、自公連立解消と前週末の米中貿易摩擦激化の影響は続かず、株式市場、為替市場ともリスクオフの巻き返しで株高と米ドル高の1日となりました。しかし、為替市場はその後10月17日の欧州市場まで一貫して、円高が進みました。

10月14日は改めて米中貿易摩擦への懸念が広がり、株安と円高の動きから始まりました。NY市場以降は摩擦懸念がやや後退したことから株式市場は急反騰しましたが、為替市場では米ドルの上値が重く前日の上げを帳消しにしての引け。10月15日には日米財務相会談で為替についての話も出たとの報道から米ドル売り(円買い)が進み、東京後場には前週末安値を割り込み、着実に戻り高値が下がる流れとなりました。

また10月16日には日米財務相会談後の加藤財務相の発言として最近の円安への振れを懸念する発言が出たこと、田村日銀審議委員が追加利上げに言及したことも重なり、高値安値とも切り下げる流れが続きました。さらに新たな材料としてNY市場では米地銀の不正融資問題に端を発する米銀の信用不安が出てきました。米10年債利回りは4月以来の3.96%台へと下げ、米ドル/円も150円の大台に近づいての引けとなりました。

そして10月17日には東京市場でNYダウ先物が週間安値をつける動きとともに、内田日銀副総裁による「物価見通しが実現していくならば利上げを継続していく」との発言も加わり、欧州市場序盤には149.374円の安値をつけました。その後自民と維新の連立に向け話が進んだこと、米株が大きく反発したことから150円台半ばでの週末クローズとなりました。

振り返ると、米ドルの材料としては米中貿易摩擦と米地銀の信用不安、日本円の材料としては今週の首班指名に向けての高市自民の動き、加藤財務相の円安懸念、複数日銀関係者のタカ派発言が挙げられます。比較的短期的な材料が多い中で、長期的には日米金利差縮小が今後も大きなテーマとなり米ドル/円の上値を抑えやすくなるであろうという印象の1週間になりました。10月21日にも高市首相の誕生となりそうですが、為替市場ではこうした背景があることから以前ほど高市トレードによる円安期待は無くなってきているとみられます。

先週(10月13日週)のユーロ/米ドル:フランス政局が落ち着きユーロ買い戻し

先週(10月13日週)のユーロ/米ドルは、基本的に米ドルの動きとしては米ドル/円と同様の流れを続けていましたが、10月14日に再指名された仏ルコルニュ首相が野党に歩み寄り、年金制度改革を2027年まで停止すると発表。これを受け社会党が不信任決議に賛成しないと表明したことから、フランスの政局がようやく落ち着きを取り戻したことからユーロ売りの動きも収まりました。

その後週末までは米中貿易摩擦と米地銀信用不安による米ドル売りの流れがユーロ買いとなり、10月17日には1.17279ドルまで買い戻された後に1.16ドル台半ばに押して引けています。

またユーロ/円は10月6日週にユーロ/円としては史上最高値、ユーロ/円の前のドイツマルクを換算したレートを使えば1990年以来の高値をつけた後は、ユーロ/米ドルよりも米ドル/円での米ドル売りの動きの方が大きかったことから着実に高値安値とも切り下げ、10月17日には174.819円まで調整が入り175円台半ばでの引けとなりました。

米ドル/円チャート(週足)、上昇チャンネル内での動きも153円台は当面の高値

長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

【図表1】米ドル/円(週足)
出所:マネックストレーダーFX
【週足チャートの見方】
長期トレンドは20週移動平均線と週足終値との位置関係で判断します。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。

週足チャート(図表1)では、引き続き黄色いライン(長期)で示されるほぼ上昇チャンネル(ウェッジ)の中での動きとなっています。前週高値で上側ラインをトライしきれず先週(10月13日週))は前週(10月6日週)のレンジ内での取引となったこと、また前述の通り日米財務相会談で急速な円安を懸念する共通認識ができていそうなことを考えると当面は153円台で高値を見たという考えで良いかと思います。

短期的には日足チャートを見ていきましょう。

米ドル/円チャート(日足)、10月14日のデッド・クロス状態が続く

短期的な判断は日足で行います。

【図表2】米ドル/円(日足)
出所:マネックストレーダーFX
【日足チャートの見方】
短期売買シグナルは5日終値移動平均線(青)と5日始値移動平均線(赤)のゴールデン・クロス(GC)、デッド・クロス(DC)で判断します。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
短期上昇トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の上で推移し、短期下降トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の下で推移します。通常の2本の移動平均線で言えば、終値が短期線の役割、始値が長期線の役割を果たしていると考えるとわかりやすいでしょう。
※マネックストレーダーFXでは、移動平均線の設定画面で始値を選択することができます。

先週(10月13日週)の米ドル/円は、高市トレードによる円安の動きが153円台で高値をつけ、その調整がいったん149円台前半で終わったかもしれないと思わせるような週になりました。しかし、テクニカルには10月14日にデッド・クロス(DC)となり、その流れが現在も続いています(図表2)。

10月21日の首班指名で高市総理が誕生したとしても、それ以上に米中貿易摩擦や米地銀信用不安問題があり、長期的には日米金利差縮小による米ドル安が続きやすいことを考えると当面は戻り売り、保守的シナリオでは次のゴールデン・クロス(GC)後のデッド・クロスで米ドル/円の売りというスタンスになるでしょう。

先週は直近安値と高値の半値押しを割り込んだところで反転上昇しましたが、61.8%押し149.143円(緑のターゲット)は今後下値の目処とされやすい水準といえます。

ユーロ/米ドルは2週連続で移動平均下抜け

ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。

【図表3】ユーロ/米ドル(週足) 長期トレンド=下降トレンドへ転換
出所:マネックストレーダーFX

週足チャート(図表3)は上昇ウェッジ(黄色のライン)を下抜けより短期の青の上昇ウェッジの中での動きに変化してきました。

それ以上に重要なことは先週(10月13日週)の終値が20週移動平均線を下回ったことで2週連続の下抜けとなり下降トレンドへの転換が確定したことです。短期的には上下出てくると思いますが、今後2週連続で移動平均線を上回るまではテクニカルにはユーロ/米ドルは下降トレンド継続としてみていくことになります。

【図表4】ユーロ/米ドル(日足) 短期トレンド=10月15日にゴールデン・クロス
出所:マネックストレーダーFX

日足チャート(図表4)では青の上昇ウェッジと直近高値と安値とのフィボナッチ・リトレースメントを表示してあります。半値戻しをトライしたところで反転下落となりましたので、2本の移動平均線がデッド・クロスとなるのを待って、長期トレンドに沿ったユーロ売りのエントリーを考えるのが良さそうです。現状は米ドル安の動きからユーロ高となっていますので、若干時間はかかるかもしれません。

ユーロ/円は史上最高値からの調整中

ユーロ/円です。

【図表5】ユーロ/円(週足) 長期トレンド=ユーロ買い
出所:マネックストレーダーFX

ユーロ/円は前週に1999年1月のユーロ導入(貨幣の流通は2002年1月)後の新高値をつけてからの調整が続いています。それでも長期上昇チャンネル(黄色)の中で中期上昇ウェッジ(青)の中で現在も上昇トレンドが続いていることに変化はありません(図表5)。ただ、ユーロ/米ドルの長期トレンドが下降トレンドに転じたため、ユーロ/円はしばらく高値もみあいとなる可能性が高いと思われます。

【図表6】ユーロ/円(日足) 短期トレンド=10月14日にデッド・クロス
出所:マネックストレーダーFX

日足チャート(図表6)では週足チャートの中期上昇ウェッジを示してありますが、直近安値と高値とのフィボナッチ・リトレースメント(緑)を見るとほぼ半値押しの水準で下げ止まったことが確認できます。また10月14日にデッド・クロスとなりましたが、本日10月20日にもゴールデン・クロスに転じる可能性があります。

現状、米ドル/円、ユーロ/米ドルともに米ドル安の動きとなっていますので、それぞれの強弱によって買いに転じるとすると10月21日の衆議院での首班指名に向け米ドル/円が底堅い展開を見せるという流れが想像できます。ただ、米ドル/円自体が現状は大きく円安には動きにくいと見ていますので、ユーロ/円も更なる高値更新という動きには繋がりにくいかと思います。

それでは今週も良いトレードを!